厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
わたし達のほぼ全ての仕事は、労働基準監督署と深い関わりがあります。
労働規約や三六協定などの、労働者の賃金や労働環境等など、各種届出ある他、時には監査や指導など、労働者を雇用することにおいて、切っても切り離せませんよね。
これらについては、労働基準法に基づき、社労士さんと相談しながらというのが多いと思います。
安全衛生についても、労働基準監督署との縁は深いものです。
労災事故があれば、捜査があります。
事業所への立入り査察もあり、不安全箇所や衛生上問題な場所については、是正指導もあります。
また、総括安全衛生管理者や安全管理者等を選任した場合は、報告が必要になりますし、必要とあれば、安全管理者の増員や解任の命令ができたりします。
そして、危険な作業等を行う場合であれば、届出を行わなければなりません。
今回は、労働基準監督署への届出が必要な仕事について、まとめてみたいと思います。
建設業や製造業等では、危険が伴うけれども、必要になる作業があります。
また使いようによっては危険を伴うけれども、必要になる機械があります。
こういった作業を行う前、または機械を設置する前に、労働基準監督署に計画を提出しなければなりません。
そして、計画についてチェックを受け、許可を受けないと着手できないのです。
建設業では、トンネル工事や圧気工法等、危険を伴い、事故が起こりやすい工事があります。
また工場でプレス機や加工機でも、大型のものになると、少し操作を誤れば、大事故になりかねません。
計画を届出を行うとなると、事業者としては、労働基準監督署の監視の目が光ることになるので、緊張感を持ち、ずさんなことはできなくなりますね。
なぜなら、いつチェックが入るか分かりませんから。
労働基準監督署としても、届出を受け、重点的にチェックする事業所などが明確になります。
全部の工事や機械について届出る必要はないのですが、忘れてしまうと大変なことになります。
また届出には期限もあるので、出し忘れると工期に影響しかねませんので、注意が必要です
さて、計画の届出については、安衛法第88条に規定されています。
【安衛法】
届出を行う業種や規模、内容などが規定されているのですが、詳細については、安衛令や安衛則に規定されているため、内容を把握するためには、あちこち参照しなければなりません。
そのため、説明にあたってもあちこち飛びますけども、なんとか分かりやすくはしていきたいと思います。
第88条は項によって、届出を行う内容が異なります。
1項と2項は建物や機械の設置についてです。主に製造業などが対象になります。
1項は一部届出が不要な場合があります。
しかし2項は特に有害で危険な機械のため、必ず届出が必要になります。
3項と4項は、建設業が対象で、危険が伴う大規模工事の届出です。
3項は届出先が厚生労働大臣で、4項は所轄労働基準監督署長です。
5項は、届出の際には、有資格者が必要ということですね。
6項は、届出を行うのは発注者または最初の受注者のみですということです。
7項、8項は労働基準監督署等の監督に係る内容です。
順次見ていきますが、6項は上記以上の説明は不要かと思いますので、割愛します。
また7項、8項は監督者のお話なので、こちらも割愛します。
1項では、「事業場の業種及び規模が政令で定めるもの」は、当該工事に係る建設物や機械を設置したり、主要構造を変更したりする場合は、労働基準監督署に届出を出さなければなりません。
届出を行うのは、仕事を開始する30日前までになります。
さて、「事業場の業種及び規模が政令で定めるもの」とは、安衛令第24条に規定されていますので、こちらを見てみたいと思います。
【安衛令】
(計画の届出をすべき業種等) 第24条 法第88条第1項の政令で定める業種及び規模の事業場は、 第19条第2号から第6号までに掲げる業種の事業場で、 電気使用設備の定格容量の合計が300キロワット以上のものとする。 2 法第88条第4項の政令で定める業種は、土石採取業とする。 |
さらに、安衛令第19条も見ないと、事業場の業種や規模がわからないので、こちらも合わせてみてみます。
第19条 1)建設業 2)製造業(ただし次に掲げるものを除く。) イ. 食料品・たばこ製造業 (うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。) ロ. 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。) ハ. 衣服その他の繊維製品製造業 二. 紙加工製造業(セロファン製造業を除く。) ホ. 新聞業、出版業、製本業及び印刷加工業 3)電気業 4)ガス業 5)自動車整備業 6)機械修理業 |
第19条の2号から6号なので、建設業は除外されます。
つまり届出が必要になる事業場をまとめると次のとおりです。
業種 | 1)製造業(ただし次に掲げるものを除く。) イ. 食料品・たばこ製造業 (うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。) ロ. 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。) ハ. 衣服その他の繊維製品製造業 二. 紙加工製造業(セロファン製造業を除く。) ホ. 新聞業、出版業、製本業及び印刷加工業 2)電気業 3)ガス業 4)自動車整備業 5)機械修理業 |
規模 | 電気使用設備の定格容量の合計が300キロワット以上 |
届出期限 | 仕事開始の30日前 |
電気の使用容量が条件になるので、製造業などの工場や加工場がある事業場が対象になるとわかりますね。
製造業では、除外対象と除外の除外がありますので、注意が必要になります。
食料品を製造する工場で500KWの電気容量を使用しても、届出る必要はありません。
しかし、食料品であっても、うまみ調味料を作っている工場だと、300KW以上の電気容量だと届出なければなりません。
ただし、()の中のただし書きで、「仮設の建設物又は機械等で厚生労働省令で定めるものを除く」とあります。
この条件に当てはまるものは、安衛則第84条の2に規定されています。
【安衛則】
仮設構造物や仮設用の機械を使用する場合は、届出が不要ということです。
さて不要となる条件につていては、以下のとおりです。
機械・構造物 | 設置期間 |
・内部における機械等の原動機出力の合計が2.2KW未満の建設物 ・原動機の定格出力が1.5KW未満の機械 |
6月未満の期間で廃止するもの |
・高さ及び長さがそれぞれ10m以上の仮設通路 ・吊り足場 ・張出し足場 ・高さ10m以上の足場 |
組立てから解体までの期間が60日未満のもの |
いずれも6ヶ月または60日と期間限定なので、それ以上の期間設置する場合には、届出は必要なので、注意が必要です。
これらは工場の本施設ではなく、仮設設備なので、工場内での工事の際の措置ですね。
60日以内の足場なのですから、部分的な改造や修理等の短期間で完了する作業の場合といえます。
また3号に当てはまるものも届出が不要になります。
これは安衛則の別表6の2に含まれる業務を行わない場合のことです。
別表6の2の業務は次のとおりです。
別表第6の2
・発電、送電、変電、配電又は蓄電の業務 |
どれも危険で、一歩取扱を間違えれば、事故を起こしたり、病気になったりする業務だと分かりますね。
こういった業務を行う場合は、例外なく届出をださなければなりません。
第13条第1項第2項に掲げる業務とは、産業医を選任する必要のある業務のことです。
個々に上げると多くなるので、全ては掲載しませんが、高熱物や低温物、ずい道やじんあい等人体に有害な作業が含まれます。
ちなみに同号ヌは、深夜業を含む作業のことです。
届出が免除されるのは、事故の危険性が比較的低いものだということが分かりますね。
さて、続けて届出内容を見ていきます。
届けで内容をまとめると次のとおりです。
・事業場周囲の図面
・敷地内の建物と機械の配置図
・原材料、製品の取扱、製造作業の概要
・建設物各階の平面図、断面図、機械の配置等の書面、図面
・災害防止の方法
変更の場合は該当部のみです。
様式第20号については、こちらなどをご参考までに。
安全衛生関係主要様式
この一欄にある、「建設物・機械等設置・移転・変更届」が様式第20号になります。
第86条は安衛則別表7については、様式第20号に加えて、各必要な図面や書類を提出することとあります。
この別表7は、結構な量なので、別のページでまとめます。
安衛則 別表7
動力プレスや金属溶鉱炉等、大きな機械であると分かります。
添付しなければならない資料については、機械ごとに異なります。
個別に紹介するのは、とても大変なので、紹介だけで。
さて、安衛法第88条1項に、
「ただし、第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。」
とあります。
法第28条の2は、事業者が行う有害作業等についての調査、つまりリスクアセスメント等について規定されています。
事前にしっかりとした調査が行われており、労働基準監督署が調査内容を認定した場合は、届出不要ということです。
しかし、ただ自社でリスクアセスメント等をやっているから、届出しなくてもいいという判断をするのは性急です。
あくまでも労働基準監督署が認定した場合において免除なので、結局は届出をしているのと変わらないです。
さて、この認定については、安衛則第87条に規定されています。
(法第88条第1項ただし書の厚生労働省令で定める措置) 第87条 法第88条第1項ただし書(同条第2項において準用する場合を 含む。)の厚生労働省令で定める措置は、次に掲げる措置とする。 1)第28条の2第1項の危険性又は有害性等の調査及び 2)前号に掲げるもののほか、第24条の2の指針に |
届出が不要となるのは、事業者がリスクアセスメントまたは労働安全衛生マネジメントシステムに基づく調査を実施している場合の措置になるということです。
リスクアセスメントとは、設計などの段階で考えうる危険を洗い出し、評価配点し、優先順位をつけて、危険箇所に対応する安全衛生活動です。
ここ数年は、よく耳にする言葉だと思いますので、何となくは知っているかもしれません。
労働安全衛生マネジメントシステムとは、何かというと事業者が労働者の安全衛生を向上させるために、目標設定を行い、実施、評価していく仕組みのことです。
いわゆる品質管理するときの、Plan(計画)、Do(実施)、See(評価)、Action(改善)といおうQCサークルを安全衛生に当てはめた仕組みのことです。
この仕組を遂行するためには、入念な調査と、指針の形成、目標を立て、実施と評価、監査など全社的な取り組みが必要になります。
リスクアセスメントや労働安全衛生マネジメントシステムについては、また別の機会にまとめてみたいと思います。
つまり、事業者が主体的に安全衛生活動を行っているものを、労働基準監督署がチェックして、認定するということです。
この認定を受けた場合は、各種届出は免除となるわけです。
認定の詳細については、安衛則第87条の2から10までにまとめられています。
認定作業についての、申請や更新、取り消しなど、安全衛生マネジメントシステム等にまつわるものなので、ここでは紹介のみとしておきます。
さて、安衛法第88条1項だけで、いっぱい書くことがありました。
2項以降も、個々にボリュームがあるので、ひとまず今回はこれだけにしたいと思います。
まとめ。
【安衛法】
第88条 事業者は、機械の設置や大規模工事にあたっては、労働基準監督署等に届出を行わなければならない。 |
【安衛令】
第24条 届出を行わなければならないのは、製造業などの業種で、電気容量の合計が300KW以上の事業所。 |
【安衛則】
第84条の2 一定期間以内の一部の仮設の機械や設備は、届出は不要。 |
第85条 届出の内容についてまとめ。 |
第86条 別表7にある、特に危険、人体に有害な機械等についての届出は別にあります。 |
第87条 事業者が自発的に安全衛生活動を行い、監督署が認定した事業所では、届出は不要。 |