厚生労働省労働局長登録教習機関
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事故や病気の原因となる可能性が高い作業や機械の使用を行う場合、事前に労働基準監督署等に届出行わなければなりません。
事前に届出を行うことによって、緊張と使用責任が生じるとともに、労働基準監督署としても、チェックするべきことが明確になります。
これは安衛法第88条に規定されています。
第1項については、まとめておりますので、こちらをご覧ください。
今回はその残り、2項から5項までまとめたいと思います。
【安衛法】
2項では、危険で人体に有害な機械の設置や移転を行う場合にも準用、つまり適用するとあります。
1項と同じ条件ですので、届出は使用開始する前の30日前までになります。
どのようなものが危険で有害な機械なのか。
「厚生労働省令で定めるもの」とされていますね。
これは、安衛則第88条と第89条に規定されていますので、見てみましょう。
【安衛則】
まず、これらの条文には明記されていないのですが、必ず設置届を出し、検査を受けなければならない機械があります。
これらの機械は「特定機械」と呼ばれ、安衛法で、製造時、設置時、使用開始時、変更時、定期など常に検査を受けなければならないものなのです。
特定機械は、次のとおりです。
1.ボイラー(小型ボイラーを除く)
2.第一種圧力容器
3.クレーン(吊り荷重3t以上)
4.移動式クレーン(吊り荷重3t以上)
5.デリック(吊り荷重2トン以上)
6.エレベーター(積載荷重1トン以上)
7.建設用リフト(積載荷重0.25t以上。ガイドレールの高さが18m以上)
8.ゴンドラ
以上、8機械です。
全てが同じ検査を受けるわけではないのですが、いずれも所轄労働基準監督署または都道府県労働局に届出を行い、検査を受けなければなりません。
そのため、これらの機械については、届出を行わければなりません。
さて、条文に戻ると、届出が必要とされる機械または作業については、安衛則別表第7のもののようです。
別表第7については、法第88条第1項で、申請する際にはあれこれ添付資料が必要な機械等ということで、紹介しましたね。
別表第7については、こちらです。
安衛則別表第7
とてもたくさんの機械や作業がありますね。
ところで、安衛則第89条では、一定の期間以下の仮設物については、届出は不要ですとと書いていますね。
法第88条第1項でも、免除規定がありましたが、第2項でも免除があります。
ちょっと混乱してしまいそうですが、こちらはこちらでまとめてみます。
機械・構造物 | 設置期間 |
機械集材装置、運材索道、架設通路、足場 | 組立てから解体までの期間が60日未満のもの |
それ以外の機械・仮設物 | 組立てから解体までの期間が6ヶ月未満のもの |
型枠支保工 | 必ず届出る |
型枠支保工のみ、届出要件を満たしたものを1日でも設置する場合は、届出る必要があります。
機械集材装置と運材索道、仮設通路、足場は、組立から解体まで60日未満の場合は、届出不要になります。
その他の機械は、組立から解体まで6ヶ月未満の場合は、届出が不要になります。
頭が混乱してきそうですが、法第88条第2項について、まとめてみたいと思います。
機械・構造物 | 届出不要となる機械 |
【特定機械】
1.ボイラー(小型ボイラーを除く) 2.第一種圧力容器 3.クレーン(吊り上げ荷重3t以上のもの) 4.移動式クレーン(吊り上げ荷重3t以上のものの変更) 5.デリック(吊り上げ荷重2トン以上のもの) 6.エレベータ(積載荷重1トン以上のもの) 7.建設用リフト(積載荷重0.25t以上でガイドレールの高さが18m以上のもの) 8.ゴンドラ |
必ず届出 |
【別表第7の機械】 1.動力プレス (機械プレスでクランク軸等の偏心機構を有するもの 及び液圧プレスに限る。) 2.金属その他の鉱物の溶解炉 (容量が1トン以上のものに限る。) 3.化学設備 4.乾燥設備 5.アセチレン溶接装置(移動式のものを除く。) 6.ガス集合溶接装置(移動式のものを除く。) 7.軌道装置 8.有機溶剤等設備 9.鉛設備等 10.四アルキル鉛設備等 11.特定化学設備等 12.放射線装置室等 13.事務所換気装置等 14.粉じん作業設備等 |
組立てから解体までの期間が6ヶ月未満のもの |
1.機械集材装置 (原動機の定格出力が7.5kWを超えるものに限る) 2.選材索道 3.架設道路 4.足場 |
組立てから解体までの期間が60日未満のもの |
1.型わく支保工 (支柱の高さが3.5m以上のものに限る。) |
必ず届出 |
有機溶剤や鉛設備等については、詳細な条件が別表第7に規定されていますが、細かくなりすぎるので、こんな感じで。
この表を見ると、比較的短期で廃止するものについては、届出が不要だとわかりますね。
ただし、大きさや能力等で、規定されているので、実際に届出が必要かどうかは、確認してからの方がよさそうです。
さて、第1項と第2項は、工場での機械や仮設工事についての届出規定でした。
第3項と第4項は、建設業の作業についての届出になります。
第3項では、特定の作業は、厚生労働大臣に作業開始前の30日前までに届出を行うこととあります。
そして、同様の内容に成りますが、第4項では、所轄労働基準監督署長に、作業開始前の14日前までに届出を行う作業について規定されています。
それぞれ、どのような作業について、届出を行わなければならないのか。
安衛則第89条の2と第90条に規定されています。
まずは、第3項の厚生労働大臣に届出を行わなければない作業から見てきます。
ダムや橋、トンネル工事なのですが、どれもものすごく高く、長く、巨大であると分かりますね。
どれほどの大きさかというと、例えば、高さが300m以上の塔を調べてみると、日本では東京タワーとスカイツリーしかありません。
そのためこの要件を満たして、届出をされたのは、実質スカイツリーのみということです。
また堤の高さが150m以上のダムは、黒部ダムを186mを筆頭に13基のみだそうです。
最新のものとしては、岐阜県の堤高161mの徳山ダムが平成20年に完成しているようです。
最大支間500mの橋や長さが3,000m以上のトンネルであれば、もっと数が多そうですが、とんでもなく大規模で、完成した際には全国区のニュースになりそうなものを作る工事の際に、厚生労働大臣に届出を行わなければならないと分かりますね。
もっと身近で、比較的提出する機械が多そうなのが、第4項の所轄労働基準監署長に届出を行う工事です。
やや規模が大きい工事なので、対象となる工事は比較的多くなりそうです。
注意点としては、上記しておりますが、厚生労働大臣への届出と所轄労働基準監署長への届出の届出期限は異なるということです。
厚生労働大臣への届出は30日前までで、所轄労働基準監督署長への届出は14日前までです。
さて、建設工事の届出についてまとめます。
届出先 | 工事規模 | 届出期限 |
厚生労働大臣 | 1. 高さが300m以上の塔の建設の仕事
2. 堤高(基礎地盤から堤頂までの高さをいう。)が 150m以上のダムの建設の仕事(注3) 3. 最大支間500m(つり橋にあっては1000m)以上の 橋梁の建設の仕事 4. 長さが3000m以上のずい道等の建設の仕事) 5. 長さが1000m以上3000m未満のずい道等の 建設の仕事で、深さが50m以上のたて抗 (通路として使用されるものに限る。)の掘削を伴うもの 6. ゲージ圧力が0.3メガパスカル以上の圧気工法による |
作業開始の30日前まで |
所轄労働基準監督署長 | 1. 高さ31mを超える建築物又は工作物(橋梁を除く。)の建設、 改造、解体又は破壊(以下「建設等」という。)の仕事
2. 最大支間50m以上の橋梁の建設等の仕事 3. 最大支間30m以上50m未満の橋梁の上部構造の建設等の仕事 (人口が集中している地域内における道路上若しくは道路に 隣接した場所又は鉄道の軌道上若しくは軌道に隣接した場所に おいて行われるものに限る) 4. ずい道等の建設等の仕事 5. 掘削の高さ又は深さが10m以上である地山の掘削 (ずい道等の掘削及び岩石の採取のための掘削を除く。 以下同じ。)の作業(掘削機械を用いる作業で、掘削面の 下方に労働者が立ち入らないものを除く。)を行う仕事 6. 圧気工法による作業を行う仕事 7. ダイオキシン類対策特別措置法施行令別表第15号に 掲げる廃棄物焼却炉(火格子面積が2m2以上 又は焼却能力が1時間当たり200kg以上のものに限る。)を 有する廃棄物の焼却設備に設置された廃棄物焼却炉、 集じん機等の設備の解体等の仕事 8. 石綿等が吹き付けられているものにおける 石綿等の除去の作業を行う仕事 9. 掘削の高さ又は深さが10m以上の土石の採取の ための掘削の作業を行う仕事 10. 抗内堀りによる土石の採取のための |
作業開始の14日前まで |
建設業以外の業種としては、土石採石業が含まれますが、大型のショベルカー等を使用することもあり、同種の仕事であるといえますね。 届出の様式は、「建設工事計画届」(様式21号)になります。 添付書類としては平面図や組立図などが指定されているので、届出が必要になった場合は、ご確認抱ください。 さて、届出が必要な工事については、有資格者が計画に参加するように決められているものがあります。
(計画の作成に参画する者の資格) 第92条の3 法第88条第5項 の厚生労働省令で定める資格を有する者は、 別表第9の上欄に掲げる工事又は仕事の区分に応じて、 同表の下欄に掲げる者とする。 |
有資格者を参画させなければならない、工事は第90条の1号から5号なので、次の工事ですね。
1)高さ31メートルを超える建築物又は工作物の建設、改造、解体又は破壊の仕事
2)最大支間50メートル以上の橋梁の建設等の仕事
2の2)最大支間30メートル以上50メートル未満の橋梁の上部構造の建設等の仕事
3)ずい道等の建設等の仕事
4)掘削の高さ又は深さが10メートル以上である地山の掘削の作業を行う仕事
5)圧気工法による作業を行う仕事
土石の採石などは不要です。
またその他は、別表第9に詳細があります。
別表第9
それらを含めて全部まとめると次のとおりです。
建築1.高さ31mを超える建築物の仕事
2.高さ300m以上の塔の工事・1級建築士
・理系大卒10年以上、高専卒10年以上、高卒15年以上の土木設計管理、施工管理の実務経験建設工事の安全衛生の実務経験3年以上
区分 | 工事 | 資格条件 | ||
土木 | 1.高さ31mを超えるダムの仕事
2.最大支間50m以上の橋梁の建設等の仕事 3.最大支間30m以上、50m未満の橋梁の上部構造の建設等の仕事 4.ずい道等の仕事 5.掘削の高さ又は深さが10m以上の地山の掘削仕事 6.圧気工法による工事 |
次のいずれか ・1級土木施工管理技士 ・技術士(建設部門) ・理系大卒10年以上、高専卒10年以上、高卒15年以上の土木設計管理、施工管理の実務経験 |
建設工事の安全衛生の実務経験3年以上 | 当該土木の設計管理又は施工管理の実務経験3年以上 |
労働安全コンサルタント(土木) | ||||
厚生労働大臣が認めるもの | ||||
労働安全コンサルタント(土木) | ||||
厚生労働大臣が認めるもの |
一定の資格もありますが、実務経験もないと計画に参画できる有資格者になれないんですね。
とてもハードルが高いのですが、規模の大きさを考えると仕方ないのかもしれません。
さて法第88条の6項以降は、労働基準監督署などの業務に関わるので、割愛します。
事前に届出なければならない機械や工事は、非常に多く、免除の条件なども含めると、複雑です。
いざ届出を行うにしても、計画書を作成したり、図面を作成したりと、添付書類も多く、非常に負担になります。
有資格者がしっかり作成する必要がある、とても大事な手続きだといえます。
なぜこんなに届出などが必要になるのか。
それは、事故が起こらないようにするために他なりません。
規模大きな工事や機械の設置に従い、事故の重篤度も大きくなります。
2mの高さから落ちるのと、50mの高さから落ちるのであれば、どちらが命を落とす確立が高いかは、一目瞭然かと思います。
50mの高さから落ちたら、確実に死にます。
他の機械等についても同様です。
仕事そのものが、生命を落とす危険性を隣り合わせなのです。
届出は、事故を起こさない!という宣言であると言えます。
施工や設置と合わせて、安全衛生に関する計画を作成することで、労働者の危険がないような仕事方法を検討していくプロセスが大事なのかもしれません。
と、いいように書いていますが、負担であることは変わりないんですけどね。
それは重々承知の上で、なぜこれが必要なのかとポジティブに考えると、事故を起こさない宣言と、届出後は、労働基準監督署等の監視の目が光ることによる緊張感かなと思います。
紹介した機械の設置や工事等は、届出の期日があるので、締切だけはきっちり押さえておくのが重要ですね。
まとめ。
【安衛法】
第88条 事業者は、機械の設置や大規模工事にあたっては、労働基準監督署等に届出を行わなければならない。 |
【安衛則】
第88条 特に危険で有害な機械や仮設物(別表第7)を設置する場合は、作業前の30似前までに届出を行わなければならない。 |
第89条 短期の間に廃棄する機械や仮設物は、届出は不要。 |
第89条の2 大規模な工事は、厚生労働大臣に作業開始前30日前までに届出を行わなければならない。 |
第90条 一定規模以上の工事は、所轄労働基準監督署長に作業開始前14日前までに届出を行わなければならない。 |
第91条 土木工事の工事計画の届出は、必要な書類を添付すること。 |
第92条 土石採取業の工事計画の届出は、必要な書類を添付すること。 |
第92条の2 厚生労働大臣に届出を行う工事には、有資格者を参画させること。 |
第93条 所轄労働基準監督署長に届出を行う工事には、有資格者を参画させること。 |
プレス設備の設置届についてお教示下さい。
プレス設置届けの提出期日は
プレス設置の為の基礎工事実施前の30日、という事でしょうか?
実際に行われる機械本体設置(組立)の30日前でしょうか?
宜しくお願いします。
こんにちは。
プレス設備の設置届について、知り合いのコンサルタントにも聞いてみたのですが、正直解釈が微妙なところです。
条文には、「当該工事の開始の日の30日前まで」とあります。一方では、この工事は設置工事という解釈もあります。
仮に基礎工事を行ってから、本体設置を間を置かず行われるのであれば、基礎工事に先立って届出されるのがよいと思います。
しかし基礎工事を行ってから、数ヶ月など間を開けて、本体設置を行うなら、本体設置のタイミングに合わせてもよいのではないでしょうか。
なぜプレス機等が届出を必要とするかというと、使用の際に危険の可能性があるからです。その観点から考えると、本体組立・設置のタイミングに合わせたらいいのではと思います。
念のため、基礎工事に先立って、所轄の労基に確認されるとよいと思います。
私も機会を見つけて、労基に質問してみます。
届出のタイミングについて、勉強になりました。ありごうございました。
株式会社ミツルという会社から、高所作業ゴンドラなるアルミ製品が販売されています。
造園業者が手持ちのユニック車のブームに取り付けて、高所作業車の代わりにすると言うものです。
株式会社ミツルのホームページでの説明によると、クレーンでの吊り下げ搭乗設備ではないので法律には抵触しないと主張していますが、実際のところどう思われますか?もし法律に抵触するなら誇大広告ではないかとおもいます。
こんにちは。コメントありがとうございます。
ご指摘のあったページを拝見しました。これが法律に抵触するかについては、労基などで判断されると思いますので、申し訳ないのですが、私の意見は差し控えさせてください。
ただ商品紹介のページで気になったのは、「法に抵触しない」という主張は、この会社さんの見解で、労基等からお墨付きをもらっているものではないようです。
もし使用される方がいらっしゃったら、その点注意しなければなりませんね。
素朴な疑問 別表第7に定める機械は、30日前までに届け出必要という部分の「30日」は、どのような背景から定められたものなのでしょう?ご教示頂けますと幸いです。よろしくお願いいたします。