厚生労働省労働局長登録教習機関
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移動式クレーンに限らず、特定機械は製造から使用、廃止に至るまで厳重に管理されています。
この場合の管理とは、「機械が正常に安全に機能するか」についてです。
特定機械は、全て何らかの検査を受けなければなりません。
移動式クレーンは、吊り荷重3t以上のものについて、特定機械としての検査が必要になります。
私の会社では5t吊りの移動式クレーンを所有しています。
使用する立場なので、製造等に関する検査を受けません。
機械を購入前に、製造検査や使用検査は、メーカーや販売会社等で実施しています。
受ける検査は、検査証の有効期間延期のための、性能検査というものです。
これも実際には、メンテを委託している修理業者にあずけて、受検してもらっているので、直接受けたことはないのですけども、定期的に受けて、検査結果は見ています。
特定機械の、検査については、安衛法に規定されています。
【安衛法】
(使用等の制限) 第40条 前条第1項又は第2項の検査証(以下「検査証」という。)を受けていない 特定機械等(第38条第3項の規定により部分の変更又は再使用に係る検査を 受けなければならない特定機械等で、前条第3項の裏書を受けて いないものを含む。)は、使用してはならない。 2 検査証を受けた特定機械等は、検査証とともにするのでなければ、 |
この規定は、ボイラーやクレーンなど8種の特定機械について、適用されます。
全て同じ検査を受けなければならないわけではありません。
例えば、ボイラーや第一種圧力容器であれば、製造時には構造検査や溶接検査、使用検査を受け、設置時には、落成検査を受けなければなりません。
しかし、クレーンは製造検査はありません。設置時に落成検査を受けなければなりません。
機械ごとに、何の検査を受けなければならないかは、細かく指定されているのです。
移動式クレーンは、次の検査を必要とします。
1. 製造検査
2. 使用検査
3. 変更検査
4. 使用再開検査
5. 性能検査
1と2は、メーカーや機械の輸入業者などで受けます。検査実施機関は、都道府県労働局です。
3~5は、使用者が受けます。検査実施機関は、所轄労働基準監督署です。
各検査について、詳細は別の機会に譲るといて、今回は5の性能検査について、まとめていきたいと思います。
性能検査は、検査証の有効期間の延長のために受検しなければなりません。
当然ですが、検査の有効期間が過ぎると、使用できなくなりますし、有効期間切れで使用していたら罰則対象になります。
車検切れで運転したら、罰せられるのと同様です。
車検のように検査時期は巡ってきますので、使用者としては馴染み深い検査であるとも言えますね。
さて、移動式クレーンの性能検査については、クレーン則に規定されています。
【クレーン則】
第4節 性能検査 (性能検査) 第81条 移動式クレーンに係る性能検査においては、移動式クレーンの各部分の 構造及び機能について点検を行なうほか、荷重試験を行なうものとする。 2 第76条第4項の規定は、前項の荷重試験について準用する。 |
(性能検査の申請等) 第82条 移動式クレーンに係る性能検査(法第53条の3において準用する。 法第53条の2第1項の規定により労働基準監督署長が行うものに限る。)を 受けようとする者は、移動式クレーン性能検査申請書(様式第11号)を 所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。 |
(性能検査を受ける場合の措置) 第83条 第56条の規定(同条第1項第2号中安定度試験に関する部分を除く。)は、 前条の移動式クレーンに係る性能検査を受ける場合について準用する。 この場合において、第56条第2項中「所轄都道府県労働局長」と あるのは、「所轄労働基準監督署長」と読み替えるものとする。 |
(検査証の有効期間の更新) 第84条 登録性能検査機関は、移動式クレーンに係る性能検査に合格した 移動式クレーンについて、移動式クレーン検査証の有効期間を 更新するものとする。この場合において、性能検査の結果により 2年未満又は2年を超え3年以内の期間を定めて有効期間を 更新することができる。 |
(労働基準監督署長が性能検査の業務を行う場合における規定の適用) 第84条の2 法第53条の3において準用する法第53条の2第1項の 規定により労働基準監督署長が移動式クレーンに係る 性能検査の業務の全部又は一部を自ら行う場合における 前条の規定の適用については、同条中「登録性能検査機関」と あるのは「所轄労働基準監督署長又は登録性能検査機関」とする。 |
第82条にあるように、性能検査は事前に労働基準監督署長に申請を行ってから、受検します。
検査内容は、第81条などにあるように、クレーンの操作系から車体について、過負荷防止装置や巻過防止装置等の安全装置、過負荷などの警報装置など全般に及びます。
何より重要な検査が、荷重試験です。
これは、年次の自主点検でもありましたが、定格荷重通りに荷物を吊ることが、できるかの試験です。
吊り能力が劣化していたら、当然ですが、試験はパスしません。
クレーンにとって、吊り上げる機能は、肝とも言えますから、この試験はとても重要なのです。
第56条の製造検査に関する規定を準用するとのことなので、全体的にしっかり検査されますので、事前にしっかり整備して、性能検査を受けないといけませんね。
検査は、労働基準監督署または、第84条の2にあるように「登録検査機関」が行います。
さて、性能検査に合格すると、有効期間が延長された検査証が発行されます。
これで晴れて使えるようになるわけですね。
この検査証の有効期間は、性能検査によって若干幅があります。
多いのは2年未満だと思います。
しかしまだまだ新品である、またはとてもメンテ状態がよく、機能が極めて良好であるなどの条件はあるでしょうが、2年を超え、3年未満まで認められることもあります。
こればっかりは、検査結果次第なのですが、使用者としては、なるべく長い期間設定してもらうのが嬉しいですね。
そのためには日頃のメンテが重要なのですけども。
特定機械の移動式クレーンは、規制が多い機械です。
使用者にとっては、性能検査は定期的に受けなければなりませんので、重要な管理項目の1つであると言えます。
自主点検と性能検査と、点検ばっかりという気もしますが、それだけ少しの故障が重大な事故になるのだということを理解しておかなければなりません。
とはいえ、事業者としては、手間も費用もかかります。
現場で作業する人にとっては、ただ面倒で点検してる暇がない、手間が惜しいというのもあるでしょう。
また点検した結果、事故が起こらなかったというのは検証できません。
そのため、本当に点検に意味があるのか、理解しづらいのです。
しかし、ちょっとした手間を惜しみ、故障を見過ごした結果、事故で人命が失われるということになれば、どれほどの後悔があるでしょうか。
その後悔は一生続くでしょう。
ほんの数分の作業前点検の時間を惜しんだ結果、被災者は残り全ての時間を失うということも起こりえます。
これは大げさな話でもないのです。
実際にあることなのです。
事業者であれば、定期的な点検と検査を。
作業者であれば、作業前の点検を。
機械が正常に動くことを確認する。
これだけでも防げる事故は大幅に増えます。
点検や検査は、記録書類を作るためのものだけではないのです。
書類作りのためのものだと思うと、面倒くさいと思ってしまいますが、点検にはちゃんと、意味と効果はあるのですよ。
まとめ。
【安衛法】
第38条 特定機械の製造や輸入、使用にあたっては、都道府県労働局、登録製造時等検査機関、所轄労働基準監督署等の検査を受けなければならない。 |
第39条 検査に合格した特定機械等には、検査証を交付する。 |
第40条 検査証のない特定機械等は、使用や譲渡などを行ってはならない。 |
第41条 検査証には有効期間があるため、有効期間の延期には性能検査を受けなければならない。 |
【クレーン則】
第81条 移動式クレーンに係る性能検査においては、移動式クレーンの点検、 荷重試験を行なうものとする。 |
第82条 移動式クレーンに係る性能検査を受けようとする者は、移動式クレーン性能検査申請書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。 |
第83条 移動式クレーンに係る性能検査を受ける場合は、製造検査と同様の措置をとる。 なお、検査は、所轄労働基準監督署長が実施する。 |
第56条 製造検査を受ける者は、当該検査を受ける移動式クレーンについて、決められた措置をとらなけれればならない。 製造検査は、所轄都道府県労働局長が実施する。 |
第84条 移動式クレーンに係る性能検査に合格すると有効期間を更新できる。 性能検査の結果により、有効期間は2年未満又は2年を超え3年以内となる。 |
第84条の2 労働基準監督署長が移動式クレーンに係る性能検査の業務の場合、 「登録性能検査機関」とあるのは「所轄労働基準監督署長又は登録性能検査機関」と読み替える。 |