厚生労働省労働局長登録教習機関
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建設業では、移動式クレーンなどの重量物の吊り荷作業、ショベルカーなどの建設機械、またくい打ち機などの基礎用機械を使用する機械がほとんどと言えます。
日常的に使用する機械であれば、会社で機械を所有するほうが、費用対効果は高いです。
しかし、急に大きなショベルカーが必要になることもありますし、請け負っている工事によっては、自社の機械だけでは、数量も能力も足りないということもよくあることです。
そのような場合は、どうするか。
レンタルしますよね。
普段車を使わないので、自家用車がなくとも、遠くに旅行に行く時などレンタカーを利用しますよね。
それと同じように、機械も必要なときだけ借りるというのがあります。
そのような需要があるから、建設機械のレンタル屋さんもたくさんあります。
今回は、機械を貸す、借りる場合についてです。
機械を貸す人、レンタル業者などは、「機械等貸与者」と言います。
機械を借りた人は、「貸与を受けた者」と言います。
移動式クレーンやショベルカーなどは、整備を不良だったり、使い方が適切でなければ、大きな事故になってしまいます。
そのため、貸与者も貸与を受けた者も、しっかりとした措置をとらなければならないのです。
貸与者や貸与を受けた者が、講じなければならない措置については、安衛法第33条に規定されています。
【安衛法】
機械貸与者、貸与を受けた者、そして操作する者について、それぞれ必要な措置をとらなければならないとあります。
なぜ、それぞれが必要な措置をとらなければならないのか。
目的は労災を防ぐ、事故を防ぐためです。
確かに、誰か1人が不適切な状態であれば、事故は起こる可能性が高くなります。 1つの機械に関わる全ての人が、万全を期すことによって、安全な作業が進行されるのです。
とはいえ、一概に機械といっても、色々と種類がありますよね。
数十トンもの荷物を吊る能力を持った移動式クレーンや、一掻きで1トンもの土を掘るショベルカーもあれば、軽トラックや電動工具を借りることもあります。
機械と名が付けば、ありとあらゆる物が、様々な措置を行う対象かというと、そうではありません。
一定以上の能力、種類などにより制限があります。
それが、「政令で定めるもの」という意味です。
措置を必要とする機械の種類について、定めているのは安衛令第10条です。
【安衛令】
大きく4種類です。
1.吊上げ荷重能力が0.5トン以上の移動式クレーン
2.別表第7の建設機械
3.不整地運搬車
4.作業床の高さが2メートル以上の高所作業車
0.5トン以上の移動式クレーンとは、3トン以上の特定機械に含まれるものの他、厚生労働大臣の定めた安全規格を備えたものになります。
別表第7の機械一覧は、こちらをご覧ください。
整地・積込、掘削機械、基礎、締固め、コンクリート打設、解体など、土木建築工事に関わるあらゆる機械と言えますね。
不整地運搬車とは、舗装路以外の場所、河川敷や土の地面で、掘削土などを運ぶ車両です。
足元がタイヤのものもあれば、クローラー(キャタピラ)になっているものもあります。
土木工事で、掘削作業では、掘る→積み込む→運ぶがセットと言えます。この運ぶ機械です。
不整地運搬車
高所作業車とは、長いアームの先にゴンドラが付いた車です。
ゴンドラに人が乗り、電柱の上や建物の壁の上部で部品を取り付けたり、電気配線をしたりする工事で使用します。
電柱工事などでよく使うので、目にする機会はあるかもしれませんね。
高所作業車
特定機械は移動式クレーンのみですが、他の機械も全て厚生労働大臣の定めた安全規格を備えなければなりません。
また、この一覧に掲げられた全ての機械は、有資格作業となります。
特別教育や技能講習、場合によっては免許が必要なのです。
主に建設業で使用することが多いですが、他の業種でも使用することもあります。
むしろ他業種の方が、自社所有の機械がないので、レンタルすることがあるのではないでしょうか。
では、貸与者、貸与を受けたもの、操作者が、実施しなければならないことを見ていきます。
個々の規定については、安衛則にあります。
【安衛則】
第2章 機械等貸与者等に関する特別規制
(機械等貸与者) |
(機械等を操作する者の義務) 第668条 前条の機械等を操作する者は、機械等の貸与を受けた者から同条第2号に 掲げる事項について通知を受けたときは、当該事項を守らなければならない。 |
第665条は、貸与者の定義ですね。
要するに、機械を貸し、対価を得る人のことを貸与者ということです。
この貸与者が、機械をレンタルに出す時には、必要な措置をとらなければなりません。
どのような措置かというと、次のとおりです。 貸す前に点検を行い、異常箇所があれば対応する。
貸し出す際には、機械の能力や注意事項についてを書面にして、貸与を受ける者に渡す。
口頭で伝えるのはだめです。
整備して、機械特性を伝える。これが貸与者の責務になります。
きちんと使える状態にして、渡すことです。
ただし3項では、貸与の際の例外もあるとしています。
機械を購入したい人が、買う前にちょっと見せて欲しいから、貸してくれという場合に、貸与する時には、この措置は不要です。
機械を現場などで使用する場合の措置ということです。
さて、貸与を受けた者も、あれこれやらなくてはなりません。
ただし、1つ条件があります。
それが機械を使用するのが、貸与を受けた者と異なる場合。
つまり元請け業者が機械を借りたが、実際に使用するのは、下請け業者という場合です。
貸与を受けた者の作業員が使う場合は、不要ということです。
機械を使用するにあたって、次のことを行います。 実際に乗り込む作業員が有資格者かを確認します。
作業内容や、指揮系統、連絡合図の方法、運行経路や制限速度などを、きちんと伝える。
これは機械を使用する上では必須事項ですね。
つまり、正しく運用するために必要な事項の確認を行うことです。
先ほど貸与者から書面でもらった事項の内、注意事項なども伝えたほうがいいですね。
とはいえ、書面で渡すことは義務付けられていません。
さて、実際に使用する人についてですが、これは指示されたことは守らなければならないということです。
移動式クレーンであれば、定格荷重以上のものを吊ってはいけません。
ショベルカー等を制限速度を無視して、スピードを出してはいけません。
事故は作業時に起こるのですから、適切に使用することが、事故防止のために最も大切なことです。
機械による事故を防ぐためには、機械に関わる全ての人が、事故防止に努めなければなりません。
1つの機械を貸し出し、使用するという、ごく当たり前の日常作業の中でも、注意しなければならないものはあるのです。
大切なことは、機械作業にはリスクがあることを理解すること。
そして、必要なことをしっかりと行うことです。
まとめ。
【安衛法】
第33条 機械等貸与者は機械等の貸与を受けた事業者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。 |
【安衛令】
第10条 法第33条で定める、機械貸与者が措置をとらなければならない機械一覧。 |
【安衛則】
第665条 機械等貸与者は、対価を得て機械を貸すものを言う。 |
第666条 機械等貸与者は機械等の貸与を受けた事業者に、事前の点検整備、必要事項を書面で交付等の必要な措置を講じなければならない。 |
第667条 機械等貸与者から機械等の貸与を受けた者で、使用するのが自社でない場合は、必要な措置を講じなければならない。 |
第668条 直接貸与を受けた会社以外のもので、機械等を操作する者は、機械等の貸与を受けた者から必要事項の通知を受けたときは、当該事項を守らなければならない。 |