○事故事例アーカイブ建設機械

高所作業車の事故事例

高所作業車は、人の手では届かないような高い場所で使うのに、とても便利な機械です。
高所作業でも長期にわたって、同じ場所で作業を行う場合は、足場を組みます。
ビルや家などの建築工事などでは、建物を外壁に沿って足場が組まれているのは、目にすることもあるのではないでしょうか。

高所作業車は、電柱で工事するなど、ほんの数時間だけ高所で作業する場合に活躍します。

しかし、長期に渡ろうと短時間であろうと、高所作業であることにはかわりません。
墜落などの危険は常につきまといます。

それだけでなく、作業床を上下させる機械特性による事故もあります。

高所作業車を、使う状況は多いので、それに比例して事故も増えてくるのです。

今回は、高所作業車の事故事例を見てみたいと思います。

参考にしたのは、厚生労働省の労働事故事例です。
労働事故事例

高所作業車を使用して、大木の枝切り作業を行っていたところ、高所作業車が後方に転倒し、被災者が地面に激突したもの

クローラ式自走式高所作業車を使用して高さ10m以上の大木の枝切り作業中の災害です。

高所作業車を設置していた場所は、地山をドラグ・シャベルにより掘削、整地して造った凸凹のある仮の通路でした。さらに傾斜もある不安定な場所でした。

不安定な場所で、警報音もなっていましたが、作業を続行したところ、高所作業車は後方に転倒しました。

点灯により、バスケットに乗っていた被災者が地面に激突し、搬送先の病院で、死亡しました。

この事故の型は「転倒」で、起因物は「高所作業車」です。

クローラー式の高所作業車とは、タイヤではなく、キャタピラー式のもので、デコボコした土の上でも、走れるものです。

この事故の一番の原因は、不安定な場所に高所作業車を設置したことになるでしょう。

高所作業車は、移動式クレーンなどと同様に、上部にアームを伸ばします。
上部にアームが伸びるのですから、重心も上がりますし、風の影響も受けやすく、不安定になります。

不安定な状態を解消するために、アウトリガーを伸ばすなどして、上体を支えるための土台をガッシリを据えます。
土台を安定させるためには、何よりも平坦で強固な地盤がなければなりません。

砂上の城などという言葉があるように、地盤がゆるい場所では、建物は崩れてしまいます。
これは短時間使用する機械でも同様なのです。

高所作業車や移動式クレーンなどの機械を使用する場合は、しっかりと安定した地盤の上でなければなりません。
不安定な場所で、上方にアームを伸ばすと、容易に倒れてしまうのです。

今回の事故は、まさに不安定な場所で作業を行ったがために、倒れた事故です。

掘削作業を行い、掘り返した土が簡単に整地されているので、デコボコの上、しっかり締め固められてもいなかったでしょう。その上、悪いことに作業している場所h、傾斜がある場所でした。
倒れる条件は十分あります。

足回りがクローラーだと、悪路も走れるので、タイヤより安定していると思われがちです。
ただ走行するだけなら、デコボコ道も平気でしょう。
しかし、高所作業を行う場合は、クローラーだから安定するということはないのです。

木を切るという、ほんのちょっとした作業だから大丈夫と思ったのかもしれませんが、事故は起こってしまたのです。

さて、これらを踏まえて、事故原因を推測したいと思います。

1.高所作業車を地盤が緩く、傾斜している不安定な場所に設置したこと。
2.転倒警報の音を無視して作業を行ったこと。
3.作業計画が定められていなかったこと。
4.無資格者に操作させていたこと。

不安定な場所で、傾きが一定以上となると、機械の転倒警報が鳴ります。
この事故でも警報は鳴っていたようですが、結果無視されていました。
おそらくですが、もうすぐ終わるから、警報が鳴っていても気にしないと考えたのかもしれません。

警報がなるには、故障でない限り、原因があります。
使用者としては、余裕を見ているのか、まだ危険ではないのに、鳴ると感じることもありますけども。

とはいえ、警報が鳴るのは、それ相応の理由があるからに他なりません。
警報に麻痺してしまうのは、危険感覚が鈍くなっているかもしれません。

これらの原因を踏まえ、対策を検討しみます。

1.高所作業車は、平坦で強固な場所に設置する。
2.警報が鳴ったら、作業を停止し、問題に対処してから、作業を再開する。
3.地盤が緩い場合は、敷き鉄板などで補強する。
4.あらかじめ作業場所の特性を調査して、その調査結果をふまえた作業計画を作成する。
5.特別教育もしくは技能講習を修了した有資格者に作業させる。

そもそも、不安定になっている場所で、木を切るという作業方法が事故を招いたともいえます。
掘り返している場所、高所作業車を使用するには整地されていない場所。
事前に調査し、作業計画を検討し、手順を決めていたならば、防げた事故かもしれません。

突発的な作業であっても、事前の作業方法の検討は大事です。
施工計画書を作成するとまではなくとも、作業員にどのような作業で、どのような手順で行い、どのような危険があり、どのように対策するのかは伝える必要はあります。

作業員も、充分に作業内容と危険等を把握することで、多くの事故を防ぐことができるのです。


さて、高所作業車の事故事例を、もう1件紹介したいと思います。

次の事例も、高所作業車ならでは事故だと思います。

もし、上昇した作業床に人を乗せたまま、走行したらの事故です。

同じく参考にしたのは、厚生労働省の労働事故事例です。
労働事故事例

高所作業車で移動中、梁とバスケットの間に挟まれる

本災害は、鉄骨家屋新築工事現場で、下屋部分の梁に墜落防止用の安全ネットを張る作業において、高所作業車のバスケット(作業床)に乗り、移動するために走行したところ、上方の梁とバスケットの間で挟まれ死亡した事故です。

災害が発生した現場は、躯体工事を着手するに当たり、外壁の下地取り付けの作業と、下屋部分の梁に墜落防止用の安全ネットを取り付ける作業を行っていました。

災害発生当日、被災者は他の作業員とともに、安全ネットの取り付け作業を行っていました。
ネットは、梁に1m間隔に取り付けてあるネットクランプに、高所作業車を用いて取り付けていきます。
被災者はは梁の下に高所作業車を入れ、バスケット内から運転操作、および取付け作業を行っていた。

この作業において取付け位置を移動するために、バスケット内で自らの操作により高所作業車のブームを下げずに約1.5m後進したところ、上方の梁とバスケットの間で挟まれました。

なお、高所作業車の走行経路の地盤には、わずかな起伏がありました。

この事故の方は「はさまれ」で、起因物は「高所作業車」です。

災害が起こった作業は、安全ネットを張る仮設工事です。
仮設計画なので、作業方法などは決められていましたが、作業時の注意点などは検討されていなかったのかもしれません。

人が乗って作業する作業床を上昇させたまま移動させたところ、作業床の囲いと梁に挟まれてしまいました。
後進していたのところなので、被災者は、梁に当たりそうだなどと、分からなかったのでしょう。
気がついた時には、もう止められる状態ではなかったと、想像されます。

被災者自身が、操作していたようなので、周りで確認する人もいませんでした。
当然、地盤が起伏していたなども、気づきようがなかったと思われます。

高所作業車は、作業中に逸走、つまり勝手に動き出すのを防止しなければなりません。
そのためにブレーキをかけ、エンジンを切るなどしてから、高所作業を行います。

この事故では、作業床で操作して、走行できるものだったのでしょう。
作業床に乗ったままで走行するのは、墜落などの危険もあります。
しかしほんの数メートル動かすのに、その都度地上に降りるのが面倒だというのも分かります。
安全を取るか、効率を取るかは難しいところですが、多くの場合は効率が取られる傾向にあるようです。

ただ、効率をとるならば、細心の注意が必要です。

特に1人で作業を行う場合は、自分自身しか周囲に注意する人はいません。
この事故では、その注意がしっかりされていなかったことが事故に繋がりました。

さて、これらを踏まえて、事故原因を推測したいと思います。

1.作業計画のないまま行われたこと。
2.地盤が若干起伏していたので、作業床が若干上がったこと。
3.高所作業車のアームを、下げずに走行したこと。
4.1人で作業しており、周辺お注意が充分でなかったこと。

作業計画や作業手順を作成する場合は、ただやり方だけを決めるのではなく、作業場の特性などをふまえ、危険のポイント、急所を盛り込むのがよいです。

作業員は、その作業計画をもとに、どこに注意すべきかなどを理解して作業すると、ある程度危険を認識して作業に当たることができます。
もちろん、作業計画などでは、書かれていない危険も潜んでいるので、作業前には自分自身で、どこが危険かをチェックするのは大切です。

これらの原因を踏まえ、対策を検討しみます。

1.作業計画を作成し、かつ作業は当該作業計画により行うこと。
2.高所作業車の作業床に乗り作業移動するときは、アームを下げて走行すること。
3.作業者は、着手前に作業方法を確認し、現場では自分の目で危険のポイントを確認すること。

仮定になりますが、被災者が梁が目の前にあるから、ぶつからないよう余裕をもって、アームを下げておこうとしていたら、はさまることはなかったかもしれません。

若干の上げ下げも手間に思ったのかもしれませんが、身の安全を守るためには、余裕が大切です。

機械の側を通る時、接触するギリギリのところを通るのではなく、この距離なら絶対接触しないというくらいの距離を保つのがいいです。
安全側に余裕を持つのは、ある種の保険です。

この事故では、背伸びしても梁に当たらないくらいの距離を保っておけば、事故には至らなかったでしょう。
そんな様子を人に見られたら、臆病だと言われるかもしれません。

安全とは、自分の命を守るのですから、臆病くらいがちょうどいいじゃないですか。
臆病で怪我をいなければ、それに越したことはありません。

高所作業車は、便利ですが、作業時のリスクもあります。
今回は割愛しましたが、何より墜落の危険があります。
その上、今回の事例のように転倒、はさまれ事故も起こりえます。

機械の特性と作業場の特性、これらを踏まえ、さらに臆病くらいの慎重さは、事故予防とともに自分や同僚の身を守ることになるのです。

コメント

  1. トップページに記載の高所作業車の写真について、製品イメージを損なうため、掲載を即中止してください。このまま掲載を続けられる場合、名誉毀損で訴訟手続きを進めます。

    1. itetama より:

      申し訳ございません。
      削除いたしました。

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