厚生労働省労働局長登録教習機関
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荷役運搬機械が活躍する場所は、工場や倉庫、港湾だけとは、限りません。
大きなものから小さなものまで、荷物を運ぶのは、ありとあらゆる仕事で行われます。
建設業や林業、農畜産業での仕事は、路面が土でデコボコとした悪路であることも少なくありせん。
そのような場所で、土や伐木、飼料などを運ぶ時、トラックでも動けますが、場合によってはタイヤをとられて動かなくなる可能性もあります。
悪路でも平気で走り、荷物を運ぶことに特化した機械もあります。
その名も、不整地運搬車。
まさに整地されていない、悪路を走るための機械であると分かります。
不整地運搬車は、走行部分はタイヤではなく、クローラー、つまりキャタピラーです。
林業であれば、山の中の道を作業している場所から、地上まで伐木を載せて、運びます。
建設業ならば、ショベルカーなどとセットで使われることが多く、土を載せて、トラックが入れる場所まで運びます。
また雪の多い場所でも大活躍します。通常の車では走れない雪の上をスリップすることなく走り、雪を運び出していくのです。
その代わり、クローラーですので、道路上を走ることはできません。
街中で見ることはありませんが、デコボコした道でも力強く走っているのが、不整地運搬車なのです。
不整地運搬車も、フォークリフトと同様に有資格者でなければ運転できません。
こちらも、特別教育、就業制限のある業務で書いていますが、簡単にまとめると、次のとおりです。
最大積載量が1トン未満の不整地運搬車の運転 ・・・ 特別教育を修了
最大積載量が1トン以上の不整地運搬車の運転 ・・・ 技能講習を修了
この資格要件は、フォークリフトと同様です。
そして、条文の規定も、似通っていることもあります。
また荷役運搬機械のカテゴリに含まれるので、作業計画や制限速度なども適用されるので、注意しましょう。
不整地運搬車については、安衛則に規定されています。
【安衛則】
第5款 不整地運搬車
(前照灯及び尾灯) |
(使用の制限) 第151条の44 事業者は、不整地運搬車については、最大積載量その他の 能力を超えて使用してはならない。 |
(不適格な繊維ロープの使用禁止) 第151条の46 事業者は、次の各号のいずれかに該当する繊維ロープを 不整地運搬車の荷掛けに使用してはならない。 1)ストランドが切断しているもの 2)著しい損傷又は腐食があるもの |
(繊維ロープの点検) 第151条の47 事業者は、繊維ロープを不整地運搬車の荷掛けに使用するときは、 その日の使用を開始する前に、当該繊維ロープを点検し、 異常を認めたときは、直ちに取り替えなければならない。 |
(中抜きの禁止) 第151条の49 事業者は、不整地運搬車から荷を卸す作業を行うときは、 当該作業に従事する労働者に中抜きをさせてはならない。 2 前項の作業に従事する労働者は、中抜きをしてはならない。 |
(荷台への乗車制限) 第151条の50 事業者は、荷台にあおりのない不整地運搬車を走行させるときは、 当該荷台に労働者を乗車させてはならない。 2 労働者は、前項の場合において同項の荷台に乗車してはならない。 |
まず、フォークリフト等と同様に前照灯、尾灯を備えなければなりません。
そして、最大積載量以上の荷物を載せてはいけません。
トラックなどでは、過積載は道交法で禁止されていますが、道交法が及ばない場所ではありますが、不整地運搬車も過積載はやめましょう。
過積載で、デコボコ道を走ると、バランスを崩し、簡単に転倒してしまいまいます。
不整地運搬車はトラックなどと同様に、荷台があるのですが、この荷台に昇り降りすることがあります。
荷台の上で荷物を整頓したり、走行中に落ちないようにロープやシートを掛けるためです。
小さなものであれば、クローラー部を足場にして昇り降りできるのですが、大きなものになると、かなり荷台も高く、簡単に昇り降りできません。
そのため、はしごなどの昇降設備を設けなければなりません。
昇降設備を設ける必要がある機体の大きさは、車両重量が5トン以上です。
5トンもの荷を積むことができる車体は、かなり大きいので、昇り降りの時に滑って転んでしまう恐れがあります。
昇り降りの時に怪我をしないように、昇降設備は設けなければなりません。
荷台に荷物を積んだままで、デコボコ道を走行すると、スピードが出ていなくとも荷が落ちてしまう可能性があります。
走行中に荷が落下すると、周囲にいる人に危険を及ぼしかねません。
そのため、荷をロープやシートで固定するのですが、この時使用するロープはしっかりしたものではないといけませんよね。
切れかけてたり、細くて明らかに強度不足だったりすると、固定している意味がありません。
荷物を固定するためのロープは、使う前に点検して、適切なものを使用しましょう。
荷物の積み降ろしのときには充分な注意が必要になります。
下手なやり方をしてしまうと、荷が崩れ、下敷きになってしまうこともあります。
特に重量物を扱う時は、慎重を期さなければならないのです。
そのため、1つの荷物で100キロ以上の物を積み降ろし作業を行う時は、ある種の作業プロジェクトのような体制が必要なります。
作業計画を作成し、作業指揮者を定め、不良品を取り除き、関係者以外のものが近づかないようにするのです。
荷物を固定しているロープを外し、荷を積んだり、降ろしたりするだけのことですが、とても大掛かりな作業のようですね。 それだけ重量物の取り扱いは、危険が伴うということなのです。
しっかり準備を行い、作業を行いましょう。
荷降ろしする時は、当たり前ですが、中抜してはいけません。
中抜きとは、3段荷物が積まれていたとすると、真ん中の段または一番下の段の荷物を引き抜くことです。
どうなるかは分かりますよね?
一番上の荷物が高い場所なので、上まで昇るのが面倒で、つい下の段からという気持ちが働くのかもしれませんが、このだるま落としを失敗すると、怪我ですまないかもしれません。
日常生活で、だるま落としのようなことをやると危険なので、やらないほうがいいです。
さて、軽トラックでも走行中に、荷台に人を載せて運ぶのは違法です。
これは道交法で禁止されています。
不整地運搬車も、路上走行はしませんが、軽トラックと同様に規制があります。
荷台に人を乗せて運ぶのは条件があります。
いくつかの条件をクリアすれば、人を運ぶことも認められます。
まず、荷台にアオリがなければ、人は乗ってはいけません。
アオリとは、荷台をぐるっと囲うように立っている板のことです。
このアオリがあることが、人が乗ってもよい条件になります。
そして、人と荷物が一緒に乗る場合は、走行中に荷物が動いて人に激突しないように固定しなければなりません。
あとは落下するような場所に乗ってはいけないなどの条件があります。
最大積載量が5トン以上の不整地運搬車の荷台に昇り降りするためには、昇降設備が必要でした。
これは昇り降りする際に、転落してしまわないための設備です。
これに加え、もし転落してしまった場合に備え、荷台の上で作業する場合は保護帽、つまりヘルメットを被らなければなりません。
5トン以上の大きな車体ですので、かなりの高さがあります。頭から落ちてしまうと、大怪我どころでは済まないかもしれません。
こういった万が一に備え、ヘルメットは必ず被ります。
ヘルメットは墜落・転落防止のためなので、墜落防止用のものを使用しましょう。
墜落・防止用は、内部に衝撃吸収ライナーという発泡スチロールが張られています。
落下物防止用だと、墜落した時に衝撃を吸収してくれず、脳に大ダメージになります。
ヘルメットの内部に付いているのは、たかが発泡スチロールにすぎません。
しかし、この発泡スチロールは、侮れないほどの力を持っているのです。
この発泡スチロールは、墜落時の衝撃を8分の1まで減らしてくれます。
この数値を見ると、いかに重要か分かりますね。
保護帽、ヘルメットは一度衝撃を受けてヒビが入っていたり、中の衝撃吸収ライナーがボロボロだったりすると効果がありません。
ボロボロのものは交換し、本来の機能を果たすものを使用しましょう。
ヘルメットは、ただかぶってればいい、というものではありません。
最後にあなたの身を守るものなのですから、本当に大切な保護具なのです。
少し条文が前後しますが、保護帽は、100キロ以上の荷物を降ろすときにもかぶります。
作業指揮者は、作業者が保護帽をきちんと着用していることを必ず確認しましょう。
さて、不整地運搬車も荷役運搬機械として、常に正常に動くように、定期点検が必要になります。
(定期自主検査の記録) 第151条の55 事業者は、前2条の自主検査を行ったときは、次の事項を記録し、 これを3年間保存しなければならない。 1)検査年月日 2)検査方法 3)検査箇所 4)検査の結果 5)検査を実施した者の氏名 6)検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、 |
(点検) 第151条の57 事業者は、不整地運搬車を用いて作業を行うときは、その日の作業を 開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。 1)制動装置及び操縦装置の機能 2)荷役装置及び油圧装置の機能 3)履帯又は車輪の異常の有無 4)前照灯、尾灯、方向指示器及び警報装置の機能 |
(補修等) 第151条の58 事業者は、第151条の53若しくは第151条の54の自主検査又は 前条の点検を行った場合において、異常を認めたときは、 直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。 |
不整地運搬車もフォークリフト等と同様に、定期的自主点検を行います。
作業前の点検、1ヶ月に1回以内の月次点検は同じですが、年次に当たる点検時期が異なります。
車両系建設機械やフォークリフト等は、1年に1回以内に点検を行いますが、不整地運搬車は、2年以内に1回点検を行います。
少し点検間隔が長いのが特徴です。
点検内容は、各条文にありますが、2年次点検が最も詳細に点検し、作業前点検が目視などを中心とした短時間でできるものとなっています。
不整地運搬車の2年次点検も、フォークリフトと同様に有資格者によって行われる特定自主検査です。
整備工場などで検査されると思いますが、万全の状態でなければ使用してはいけないという機械といえます。
さて点検した内容は、きちんと記録に残し、3年は保管しましょう。
そして点検で異常が見つかれば、速やかに修理しなければなりません。
不整地運搬車は、悪路で活躍する荷役運搬機械です。
過酷な状況で使用されるので、丈夫に作られていますが、その分慎重な使い方と、メンテが大事なのです。
倉庫などではフォークリフトがないと仕事にならないのと同様に、不整地運搬車がなければ仕事にならない場所もたくさんあります。
荷役運搬機械は、荷物を運ぶことが使命です。
荷物を運ぶ時に気をつけなければならないのが、過積載でしょう。
一度になるべく多く積みたいという気持ちも理解できるのですが、安全という観点では、避けたほうがよいでしょう。
不整地運搬車が活躍するのは、悪路の上が多いので、何度も往復は避けたい心理が働きがちです。
しかし、過積載が原因で足を取られ身動きがとれなくなったり、重心を崩して転倒したりすると元も子もありません。
しっかり計画を立てて、安全に作業したいものですね。
まとめ。
【安衛則】
第151条の43 不整地運搬車は、前照灯及び尾灯を備えなければならない。 |
第151条の44 不整地運搬車は、最大積載量その他の能力を超えて使用してはならない。 |
第151条の45 最大積載量が5トン以上の不整地運搬車に荷を積む作業などでは、安全に昇降するための設備を設けなければならない。 |
(不適格な繊維ロープの使用禁止) 第151条の46 事業者は、次の各号のいずれかに該当する繊維ロープを 不整地運搬車の荷掛けに使用してはならない。 1)ストランドが切断しているもの 2)著しい損傷又は腐食があるもの |
第151条の47 繊維ロープを不整地運搬車の荷掛けに使用するときは、その日の使用を開始する前に、当該繊維ロープを点検し、異常を認めたときは、直ちに取り替えなければならない。 |
第151条の48 一の荷でその重量が100キログラム以上のものを不整地運搬車に積み降ろす作業では、必要な措置をとらならなければならない。 |
第151条の49 不整地運搬車から荷を卸す作業を行うときは、中抜きはしてはいけない。 |
第151条の50 荷台にあおりのない不整地運搬車を走行させるときは、荷台に労働者を乗車させてはならない。 |
第151条の51 荷台にあおりのある不整地運搬車に人を乗せる場合は、必要な措置をとらならなければならない。 |
第151条の52 最大積載量が5トン以上の不整地運搬車に荷を積む作業を行う場合は、労働者に保護帽を着用させなければならない。 |
第151条の53 不整地運搬車については、2年を超えない期間ごとに1回、定期に、自主検査を行わなければならない。 |
第151条の54 不整地運搬車は、1月を超えない期間ごとに1回、定期に、自主検査を行わなければならない。 |
第151条の55 自主検査を行ったときは、記録し、3年間保存しなければならない。 |
第151条の56 不整地運搬車の2年次点検は、特定自主検査とする。 |
第151条の57 不整地運搬車を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、点検を行わなければならない。 |
第151条の58 自主検査や点検を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。 |