崩壊・倒壊○事故事例アーカイブ

静岡県函南町 下水工事現場で壁が崩壊

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東京渋谷で土砂崩れの事故について記事を書いていたところ、もう1つ倒壊崩壊事故が起こりました。

この事故は、11月27日に静岡県の函南町で発生しました。
渋谷での事故の3日後ですので、とても近い日付での発生だと言えます。

発生場所は、渋谷のように道路工事ではないのですが、発生状況などは、近いのではないかと思います。

続けざまに起こった、倒壊崩壊事故です。
これから年度末まで、休む暇もないほどの繁忙期になる所も多いと思います。
忙しくなると、どうしても安全対策が後回しになり、事故が起こりやすくなります。

忙しい時期でも、事故防止対策を怠ると事故につながるのですから、この連続した事故を事例として、災害防止に役立てばと思い、紹介したいと思います。

静岡県函南町 壁が崩壊、2人死傷 下水工事現場で下敷き
(平成26年11月27日)

11月27日午前11時40分ごろ、函南町柏谷の下水道工事現場でコンクリート壁が崩壊し、作業員の2人が下敷きとなった。2人はその後救出されたが、1名は搬送先の病院で死亡した。もう1名は治療を受けている。

三島署や町によると、事故当時2人を含め4人で下水道管の埋設工事を行っていた。地上から深さ1メートルほど掘削した地点で管を設置する準備をしていたところ、隣接する民家の高さ約2メートルのコンクリート壁が突然倒れてきたという。

工事は町から受注した町内の建設業者が9月26日から来年2月27日までの契約で施工していた。佐口則保副町長は「亡くなられた方には心からご冥福をお祈りいたします」とした上で、工事を中断させ、安全対策を万全にした後に地域住民による確認を経てから再開する考えを示した。

静岡新聞

この事故の型は「倒壊・崩壊」で、起因物は「構築物(コンクリート壁)」です。

掘削作業中に、隣接する民家の外壁が倒れてきた事故です。

事故現場の写真を見てみると、地面は土なので、道路なのではなく、民地につながる部分に下水道管を埋設していたのではと推測されます。

下水道管は、道路の下に浄化センターまでつながる本管が埋設させれています。
この本管には50メートル置きくらいで、監視用のマンホールがあります。
道路を走っていると、マンホールの蓋があるのはよく見かけますね。
マンホールは電気や水道用のものもあるので、全て下水用というわけではありませんが、大体マンホールの下には下水が走っていると考えてよいと思います。

各家庭や施設の下水は、この本管に接続します。
家でトイレの水は本管に流入し、あとは流れ流れて浄化センターまで行くのです。

水道管やガス管、下水道管は、地上を這わすことは、ほぼありません。
川を超える場合は、橋に下や横を露出で配管されますが、それ以外だと、よほどの事情がない限り、地中に埋設されます。

大きな理由は人が容易に触れないようにすることや、石などがぶつかって破損しないようにする、また環境の変化に影響を受けないようにすることなどでしょう。

確かに下水道管は、汚水が流れているパイプなので、なるべく人目につかないようにというのも、人情でしょう。

さて、今回の工事では、そんな下水道管を地下に設置し、埋め戻す工事の最中に発生しました。

事故の状況から、民家庭を囲うコンクリート製の外壁のすぐ側を掘っていたようです。

コンクリート壁などは、地上に見えているところだけではありません。
地中にも倒れないように根入れされています。
コンクリート壁の両側を土で支えられているからこそ、倒れないのです。
もし片側でも土の支えがなくなると、コンクリート壁は、不安定になります。
これがどんな状態かは、何となく想像できますよね?

少しバランスを崩すと、自重に耐えられず、容易に倒れ落ちてしまう状態でした。

どれほどの幅で、掘削していたかなどの詳細はわかりません。
しかしコンクリート壁のすぐ側を掘っているにも関わらず、倒壊防止対策をとっていなかったことが、この事故の直接原因になりました。

さて、これらを踏まえて原因の推測してみたいと思います。

1.コンクリート壁の側を掘削するのに、倒壊防止対策を行っていなかった。
2.倒壊防止の作業計画がなかった。または作業員に通知されていなかった。
3.作業主任者が必要な措置をとっていなかった。
4.現場の危険性ついての安全教育やKYが行われていなかった。

この事故現場では4人の作業員が仕事をしていたということなので、それほど大規模な工事ではなかったように推測されます。
中小企業の少人数での現場作業は、とかく作業が優先され、安全対策などは後回しにされがちです。
なぜなら1つ1つの作業に時間をかけると人手や機械のコストがかかります。
また作業者もすぐに次の仕事が控えているので、早く仕事を終わらせていきたいという事情もあります。

掘削工事での倒壊対策としては、土止め支保工が一般的です。
この事故でも、コンクリート壁の面を支える措置をとっていたら、崩れ落ちることはなかったのかもしれません。

施工計画では、倒壊対策について記入していたかもしれません。
しかしながら、現場では実施されていなかったようです。

下水道管の埋設は、1メートルも深くにならないので、地山の掘削作業主任者は不要ですが、このケースでは、土止め支保工の作業主任者を配置し、直接作業指揮をとらせたほうよかったのではないでしょうか。

これらから、対策を検討すると次のとおりです。

1.コンクリート壁の倒壊を防止する計画を立て、適切に支える措置をとる。
2.作業員に、安全対策を行うよう徹底する。
3.土止め支保工作業主任者を選任し、直接指揮させる。
4.現場での危険性について安全教育を行い、作業前のTBMやKYで意識させる。

掘削作業では、倒壊事故はいつでも起こる可能性があります。
倒壊するものは、土の壁だけでなく、今回のように隣接する構造物ということもあります。

穴の底で作業を行っている時に、土壁や構造物が倒れてきたら、逃げる場所はありません。
ただ押しつぶされるだけになってしまうのです。

ほんの短い時間だから、土止めしなくてもいいだろうというのは、作業を早く進めたい時の人情だと思います。
しかし、その短時間でも倒壊することがあるのが、事故なのです。

事故は、残念ながら人情も事情を理解してくれません。
事故を起こす状況が整えば、容赦なく襲ってきます。

建設業の多くは、年末から年度末にかけて多忙を極めると思います。
毎日あらゆる現場で仕事をすることになるでしょう。
効率的に仕事を進めていきたいから、安全対策はカットしたいでしょうが、そんな時に事故は起こります。

事故が起これば、工事はストップします。
死傷事故ともなると、入札参加資格が停止されてしまうこともあります。
事業者にとっては、死活問題になります。

作業者の事故は、作業者自身はもとより、会社にとっても致命傷になりかねません。
安全対策は、作業者を守るのは当然ですが、大きく捉えると、会社も守るものなのです。

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