厚生労働省労働局長登録教習機関
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震災や台風、豪雨などにより災害が起こった後には、地元や近隣の建設業者は多忙を極めます。
主には復旧事業に予算が組まれ、被害を受けた場所を元通りに直す事業、災害に強くするために整備する事業などが行われます。
水害があった河川では、堤防を広げたり、川床を削り水深を深くする工事が行われたりしますし、土砂崩れがあった崖なのでは、山肌をコンクリートで固めたりするのです。
災害復旧事業は、数多く発注されます。
1つの事業者が複数の工事を受け持つこともあります。
元請け、下請けを合わせて、会社が抱えられるキャパシティを越えた仕事を抱える事業者も少なくないでしょう。
そうなると限られた人数で、仕事をこなしていかなければなりません。
当然一人あたりの負担は多くなります。
このような人手不足が深刻な問題になってくるのです。
人手不足を解消しようと、新しく人を雇っても知識や経験が不足しています。
それなのに、十分に教育する時間もない。
災害復旧工事では、このような背景もあってか、労災事故が多くなる傾向があります。
このような災害復旧工事での労災事故は、時として深刻な大事故を引き起こしてしまいます。
平成25年11月には、秋田県でそのような災害復旧工事の最中に、5人もの方が亡くなる事故がありました。
由利本荘土砂崩れ事故 5人全員死亡確認 残る2人遺体で発見
(2013年11月27日)
11月21日の午後3時20分ころ、秋田県由利本荘市矢島町元町能千坊の市道猿倉花館線の災害防除工事現場で土砂崩れが発生し、男女ら5人が生き埋め状態となりました。
一部報道では、現場は秋田県由利本荘市鳥海町猿倉で、生き埋めになったのは3人だという情報もありますが、正しくは秋田県由利本荘市矢島町元町能千坊で5人が生き埋めのようです。 秋田県由利本荘市にあるホテルによると「由利本荘市は朝から雨が降っていて、朝方はみぞれが降った」ということで、土砂崩れの原因は雨により地盤がゆるんだものと思われます。 土砂崩れ現場は通称「観光道路」と呼ばれる市道で、去年発生した土砂災害で通行止めになっていたといいます。 山科建設はその土砂を取り除く工事をしており、作業員らがその作業を行なっているところに土砂が高さ70メートル・幅40メートルにわたり崩れました。 秋田県警や消防が救出活動を行いましたが、11/25までに5人とも遺体となり発見されました。 |
河北新報
この事故の型は「崩壊」で、起因物は「地山、岩石」です。
先日、この事故から1年が経過し、由利本荘市では慰霊祭を行われました。
一度に5人もの方が亡くなる事故は、とてつもなく大きな事故だと言えます。
事故後の現場映像を見てみても、道路の下の斜面が、かなりの広範囲に渡ってえぐれてしまっています。
この事故は、「鳥海グリーンライン」という観光道路で、一年前に土砂崩れが起こったために、復旧する工事の最中に起こりました。
災害土砂崩れが起こってすぐではないので、道路下の法面をしっかり締固め、崩れないようにする工事を行っていたようです。
災害当日は、雨が降っていました。
雨が降る中で、ショベルカーで土を掻き上げ、全員で土を固めたりする作業を行っていたようでした。
しかしおそらく雨で緩んでいたと思われる斜面はが、作業している最中に、轟音とともに崩れ落ち、ショベルカーもろとも5人を飲み込んでしまいました。
とても痛ましい事故といえます。
事故原因は、追求されているのですが、発注図には地すべりを想定する記載はなかったようです。
事故を起こした業者も、観測用の杭を打ち、地盤変化を確認していようです。
災害当日の朝もチェックしたものの、異常は見られなかったとのことです。
まさに想定していなかった土砂崩れだったといえます。
通常、作業前には、作業場周辺の地盤が緩んでいないかをチェックします。
もしかすると観測くいには見られない変化や前兆があったのかもしれません。
もともと土砂崩れしていたのですから、少しの雨でも、緩みが生じやすかった状態ではなかったのかと推測されます。
さて、それらを踏まえて、事故の原因を推測したいと思います。
1.土砂崩れで緩んでいた地盤に、雨が浸透し、非常に崩れやすい状態だった。
2.作業前の点検は、地盤の変化以外の、亀裂などが見落とされていた。
3.雨を浸透させない養生が不十分だった。
点検項目がどれだけあったのかなどの詳細は不明ですし、確かめようもないのですが、地盤の変化はなくとも、亀裂や湧水などの前兆減少があったのではないでしょうか。
事が起こってから、あの時こんなことをしていればといっても、取り返しがつきませんが、今後の事故予防のために、検討するのは無意味ではないと思います。
土砂崩れは突然起こり、作業場所から逃げる暇もなかったでしょう。
作業員が対処することは不可能だったはずです。
発生時の対処は不可能なので、何かしらできるとしたら、事前の点検ではと思います。
点検でも限度はありますが、今後は点検方法や項目を見直すことで、同様の事故が防止できるのではと思います。
それらを踏まえて、対策を検討したいと思います。
1.点検項目を、地盤の変化以外の点も確認する。
2.作業している法面は、雨の前にシートを張るなどして、浸透しないように養生する。
作業場所は法面の真下をさけるなども頭をよぎったのですが、それは現実的ではありません。
今拾えるだけの情報からになりますが、この事故防止のためには、事前に土砂崩れを起こさないための対策が、最も有効なのではと思います。
そのためには、法面を盛土して固めている最中は、締固めも十分でないので、雨が予想される前には、しっかりブルーシートを張るなどして、雨が浸透しないようにするのは有効な対策だと思います。
とにかく、崩れるかもしれない要素を、極力少なくことです。
それでも、土砂崩れの可能性はゼロではないので、作業前の点検は入念に行う。
晴れの時はともかく、地盤が緩みそうなときは、念入りに行うのが大事ではないでしょうか。
雨がひどく降っているようならば、作業中止も、大切な判断になります。
災害復旧なのですから、もともと地盤は緩んでいたと思われます。
危うい場所での作業では、市街地などの工事よりも、しっかり点検を行うことが、作業者の生命を守るために大切なのです。
災害の後は、復旧工事で仕事が増加します。
忙しさで、にっちもさっちもいかなくなることも多いでしょうが、安全対策は脇においてはいけません。
1つ1つの安全点検や安全行為は、時間がかかりません。 点検もしっかり行っても、10分程度ではないでしょうか。 どんなに現場が忙しくても、この時間は確保してほしいと思います。 工事を工期内に終えるのは大事です。 ただし、これには事故なく、怪我なく終わらせるというのが絶対条件なのも忘れてはいけないのです。