厚生労働省労働局長登録教習機関
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荷物を運ぶ機械として、倉庫などで活躍するフォークリフトや、港湾で活躍するストラドルキャリアーなどを紹介してきましたが、荷物を運ぶ車両タイプの機械には、様々な種類があります。
中でも、日常的に最も目にする機会が多いものといえば、貨物自動車でしょう。
いわゆるトラックのことです。
トラックは自動車のように運転席とタイヤなどの走行部がありますが、荷台があります。
荷台部には、コンテナになっているものから、荷台に囲いの板がある平ボディタイプなど、運ぶものに応じた造りになっています。
陸上流通において、市街地から長距離まで、トラックはなければ、何もできません。
道路のある場所は、どこへでも荷物を運び、届けることができます。
そのようなトラック、貨物自動車は、車両として道路交通法で、細かく規定されていますが、それと同時に安衛法上でも、貨物自動車という荷役運搬機械に含まれます。
今回は、荷役運搬機械としての貨物自動車の条文を見ていきます。
貨物自動車については、安衛法に規定されています。
【安衛則】
(使用の制限) 第151条の66 事業者は、貨物自動車については、最大積載量その他の能力を 超えて使用してはならない。 |
(不適格な繊維ロープの使用禁止) 第151条の68 事業者は、次の各号のいずれかに該当する繊維ロープを 貨物自動車の荷掛けに使用してはならない。 1)ストランドが切断しているもの 2)著しい損傷又は腐食があるもの |
(繊維ロープの点検) 第151条の69 事業者は、繊維ロープを貨物自動車の荷掛けに使用するときは、 その日の使用を開始する前に、当該繊維ロープを点検し、異常を 認めたときは、直ちに取り替えなければならない。 |
(中抜きの禁止) 第151条の71 事業者は、貨物自動車から荷を卸す作業を行うときは、当該作業に 従事する労働者に中抜きをさせてはならない。 2 前項の作業に従事する労働者は、中抜きをしてはならない。 |
(荷台への乗車制限) 第151条の72 事業者は、荷台にあおりのない貨物自動車を走行させるときは、 当該荷台に労働者を乗車させてはならない。 2 労働者は、前項の場合において同項の荷台に |
(点検) 第151条の75 事業者は、貨物自動車を用いて作業を行うときは、その日の作業を 開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。 1)制動装置及び操縦装置の機能 2)荷役装置及び油圧装置の機能 3)車輪の異常の有無 4)前照灯、尾灯、方向指示器及び警音器の機能 |
(補修等) 第151条の76 事業者は、前条の点検を行った場合において、異常を認めたときは、 直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。 |
貨物自動車は、路上を走ることが前提となっているため、そのための装備が必要になります。
フォークリフト等と同様に、前照灯や尾灯程度が必要ですが、それ以外にもブレーキなどの制御系、視界を遮らない窓ガラス、タイヤ、方向指示器、ミラー、速度計が必要になります。
速度計については、時速20キロ以下でしか走行しない場合は除くとあります。
これはナンバープレートを取得しないで、路上に出ず、工場や倉庫のある敷地内のみで運用する場合です。
構内運搬車と同じような扱いの場合ですね。
これらの装備は、安衛法上で必要なものです。
道路交通法などでは、もっと詳細に規定があります。
販売されるときには、これらの条件は満たしているはずですので、ライトの球切れなどに注意する他、改造しないようにする必要があります。
荷物を載せるのですが、過積載は禁止です。
荷台には、最大積載量が書かれているので、守りましょう。
過積載で道路を走ると、道交法でも罰せられます。
貨物自動車には、10トン以上積載できるものがあります。
それだけ大きなものを載せられるとなると、車体も大きくなり、タイヤ径も大きくなります。
必然的に荷台も簡単に登れないほど高い位置になっていきます。
5トン以上積載できる貨物自動車の積み降ろしでは、安全に荷台まで昇り降りできる昇降設備を使わなければなりません。
昇降設備は、荷物の積み下ろしだけでなく、荷物のロープやシート掛けで、荷台に登る場合にも使用しなければなりません。
荷台がコンテナタイプの貨物自動車であれば、走行中積み荷が落下することはありませんが、周りに囲いだけ合って、屋根がないものでは、ただ載せているだけだと荷物が落下してしまいます。
そのため、ロープで荷物を固定します。
もしこのロープが、かなり繊維がほぐれて千切れる寸前のものなどであれば、固定の役割を果たしませんね。
ロープはしっかりと十分な強さを持ったものを使用しなければなりません。
ロープも繰り返し使うと、劣化してくるものです。
ロープ掛けを行う前には、傷や切れているところがないことを確認しましょう。
荷物の中には、1つで大きく重い固まりもあります。
中には1つの塊なのに、100キロ以上のものも少なくありません。
機械や鉄製の部品などでは、人の手では持てないものも多いです。
1つの荷で重量が100キロを超えるものを積み降ろしする場合は、作業指揮者を指名し、その者の指揮で作業を行います。
作業指揮者は、作業手順を定めるとともに、ロープや吊具の部品点検、作業員が保護帽などを着用しているかを確認します。
即時的な、作業主任者という感じです。
100キロもの荷が落下して、人に上に落ちてくると、怪我だけではすみません。
大事故になるのは必至です。
荷物を載せるだけなのに、大げさなと思うかもしれませんが、作業指揮者を配置して、指揮させるのは、荷物の落下を防止するために大切なことなのです。
積み荷を降ろす時、一番上のから降ろすのが手間がかかるからといって、中抜きをしてはいけません。
だるま落としなら遊びですみますが、こっちは命に関わりますので、やめましょう。
貨物自動車の荷台は、原則として荷物を運ぶための設備です。
人を乗せて走ることは想定してません。
人が乗るのは運転席です。
原則として、人は運転席に乗るのですが、例外として人を乗せて走ることもあります。
ただし、荷台にアオリないものは、例外でも乗せることはできません。
アオリとは、荷台を囲うように立っている板のことです。側板ともいいいます。
このアオリがなければ人を乗せて走ってはいけません。
さらにアオリを開いたままにせず、閉じること、運転席より高い場所には乗せないなど、走行中に人が墜落しないようにしなければなりません。
走行中に荷台に人が乗っていて墜落しないようにしなければなりませんが、荷物の積み下ろしの時も墜落しないように注意しなければなりません。
5トン以上積載できる貨物自動車に荷物を積み降ろしする場合は、ハシゴなどの昇降設備を使わなければなりません。 同時に作業者は保護帽、つまりヘルメットもかぶらなけばなリません。
作業指揮者は、作業者が保護帽をかぶっていることも監視しなければなりません。
この場合の保護帽は、墜落防止用のものを使用します。
墜落防止用は内部に発泡スチロールが張り付けられています。
この発泡スチロールは衝撃吸収ライナーというのですが、これが墜落時の衝撃を吸収してくれる役割をするのです。
衝撃吸収ライナーがあるとないとでは、墜落時に頭部にかかるダメージは、8倍くらい違います。
必ず衝撃吸収ライナー付きの保護帽をかぶりましょう。
貨物自動車も荷役運搬機械なので、点検が必要です。
しかし車両でもあるので、定期点検は車検があります。
そのため、安衛法上では定期点検については、定めていません。
作業前、乗車前に点検をしなければなりません。
長距離を走るのであれば、車両の不具合は致命的になるので、しっかり点検を行いましょう。
もし点検で不具合があれば、放置せずに修理しましょう。
作業前の点検や修理は記録を残すことは、定めれていませんが、記録を残しておくと、後々のメンテに役立ちますので、なるべく記録を残すのがいいですね。
トラックなどの貨物自動車は目にしない日はないほど、街中を高速道路を走っています。
流通の血液の役割を果たしているのですから、重要なインフラであると言ってもいいでしょう。
道路を走るので、交通事故の危険は常につきまといます。
それと同時に、荷物の積み下ろしの際の事故が非常に多いのです。
交通労働災害の内、交通事故は全体の7%です。
一方、荷役作業時の労働災害は70%も占めるのです。
もちろん、死傷事故なので、怪我も含めですが、荷物の積み下ろしの際の事故が非常に多いことが分かります。
荷役運搬機械の役目は、荷物を運ぶことですが、荷物を積んだり、降ろしたりすることも重要な仕事なのです。
普段の仕事を見なおし、事故防止に向けた取り組みを行うと、荷役運搬時の事故は、もっと減らせるはずですね。
まとめ。
【安衛則】
第151条の65 貨物自動車は、前照灯や運転制御装置など、装備が適合するものでなければ、使用してはならない。 |
第151条の66 貨物自動車については、最大積載量その他の能力を超えて使用してはならない。 |
第151条の67 事業者は、最大積載量が5トン以上の貨物自動車に荷を積む作業では、安全に昇降するための設備を設けなければならない。 |
第151条の68 不適合な繊維ロープを貨物自動車の荷掛けに使用してはならない。 |
第151条の69 繊維ロープを貨物自動車の荷掛けに使用するときは、その日の使用を開始する前に、当該繊維ロープを点検し、異常を認めたときは、直ちに取り替えなければならない。 |
第151条の70 一の荷でその重量が100キログラム以上のものを貨物自動車に積み降ろす作業では、必要な措置をとらならなければならない。 |
第151条の71 貨物自動車から荷を卸す作業を行うときは、中抜きをさせてはならない。 |
第151条の72 荷台にあおりのない貨物自動車を走行させるときは、荷台に労働者を乗車させてはならない。 |
第151条の73 荷台にあおりのある貨物自動車を走行させる場合において、労働者を乗車させるときは、必要な措置をとらなければならない。 |
第151条の74 最大積載量が5トン以上の貨物自動車に荷を積む作業を行うときは、労働者に保護帽を着用させなければならない。 |
第151条の75 貨物自動車を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、点検を行わなければならない。 |
第151条の76 点検を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。 |
トラックの荷台のサイドのあおり板が固定せずブラブラした状態で走行していたトラックのあおり板にぶつかりました、警察は荷台に荷物を積んでいない状態ではあおりを固定しなくとも荷物が落ちる危険がないので道交法違反ではないといわれました。このような千葉県警の法の運用は正しいのでしょうか?常識的にあおり板がブラブラした状態で走行していると周りの車は危険を感じ迷惑この上ないと思います。