厚生労働省労働局長登録教習機関
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荷役運搬機械や荷役運搬作業は、建設業や製造業ほどではないものの、少なくはありません。
安衛則などで、規定し、減少しているとはいえ、事故が絶えることはありません。
荷役作業での事故を減少させるため、昭和50年に荷役や運搬機械の安全対策についてのガイドラインが通知されました。
今回は、このガイドラインをまとめてみたいと思います。
しかしながら、安衛則で荷役運搬機械、荷役作業についての条文とは、ほぼ同じです。
この通知は、労働基準監督署長による通知であり、基発というものです。
昭50年4月10日 基発第218号
荷役、運搬機械の安全対策について
最近における労働災害は、全体として減少の傾向をたどっているが、 その中においてコンベヤ、フォークリフト、ショベルローダ、 移動式クレーン、ダンプトラックその他の荷役運搬機械 (以下「荷役・運搬機械」という)によるものは、 依然として減少をみていない状況にある。このような 現状にかんがみ、これら荷役・運搬機械を使用する作業に おける安全確保については、この際総合的な対策を推進する必要がある。 ついては、荷役・運搬機械を構内で使用する事業場に対する 記 第1 共通事項 1)作業指揮系統の確立 荷役・運搬機械を使用する作業は、従事労働者が他の作業の 2)荷役・運搬機械の点検整備 荷役・運搬機械については、次に掲げるところにより、自主点検を (1)後記第2の個別事項の点検事項について自主点検基準を定め、 (2)自主点検の結果、異常を認めた場合は、直ちに、補修 (3)定期自主点検についての結果及び補修措置の状況については、 3)安全作業の確保 荷役・運搬機械を使用する作業における災害は、作業実施計画の不備、 (1)作業実施計画及び作業標準の作成と周知徹底 イ 荷役・運搬機械の設置又は使用をする場所の広さ、地形、 ロ 荷役・運搬機械を使用する作業ごとに作業標準を作成させ、 (2)過負荷の禁止及び主たる用途以外の使用制限 イ 荷役・運搬機械の構造上等から定められている能力を超えて ロ 荷役・運搬機械ごとに定められている主たる用途以外の (3)構内制限速度の遵守 自走式の荷役・運搬機械を使用する作業を行うときは、 (4)転回、転落の防止 自走式の荷役・運搬機械を使用する作業を行うときは、 (5)乗車席以外への乗車禁止 自走式の荷役・運搬機械を使用する作業を行うときは、 (6)荷崩れの防止等 自走式の荷役・運搬機械に荷を積載する場合には、 (7)危険箇所への立入禁止 走行中若しくは作業中の荷役・運搬機械又はそれらの荷に (8)逸走の防止 自走式の荷役・運搬機械の運転者が、運転位置を離れる場合は、 (9)保護具の着用 関係労働者に、保護帽、安全靴等の保護具を着用させること。 第2 個別事項 1)コンベヤ (1)構造要件 イ 傾斜コンベヤ又は垂直コンベヤには、停電、電圧降下等に ロ 連続した一団のコンベヤには、連続したロープ式 ハ 運転の開始及び停止を関係労働者に予告できる ニ 作業場又は通路上に設けてあるコンベヤには、荷の落下に ホ コンベヤの上方を横断する通路には、高さ90cm以上の (2)点検事項 イ 作業開始前に、次の事項について点検を行わせること。 (イ) 起動・停止装置の機能 ロ 1月を超えない期間ごとに1回、定期に、次の事項について (イ) 傾斜コンベヤ又は垂直コンベヤの安全装置の異常の有無 2)フォークリフト (1)構造要件 運転者が座って運転する方式のフォークリフトの運転席には、 (2)作業方法 ロ 傾斜面の下り走行をする場合は、エンジンブレーキを ハ 走行中、急旋回をさせないこと。 ニ 荷を積載して走行するときは、必ずマストを ホ 荷を積載して、こう配が急な傾斜面を走行するときは、 3)前輪駆動方式のショベルローダその他これに類する機械 (1)構造要件 ロ 方向指示器を備えさせること。 ハ 後写鏡を備えさせること。 ニ 速度計を備えさせること。 ホ 荷の落下により運転者に危険を及ぼすおそれの ヘ ブーム、アーム等で、運転者席の側方を上下し、 ト 運転者席は、リフトレバーが身体に接触するおそれのある (2)点検事項 イ 作業開始前に、次の事項について点検を行わせること。 (イ) 制動装置及びクラッチの機能 ロ 1月を超えない期間ごとに1回、定期に、次の事項に (イ) 制動装置、クラッチ、かじ取装置及び作業装置の異常の有無 (3)作業方法 イ ブーム、アーム等を上げ、その下で修理、点検等の作業を ロ バケット、フオーク等又はこれらにより支持されている (4)その他 4)移動式クレーン (1)構造要件 イ かじ取装置及び走行装置は、安全な走行を確保 ロ 走行を制動し、及び停止の状態を保持するため、 ハ 運転者席は、振動等により運転者が安易に転落しない ニ 運転者席は、運転に必要な視野があり、かつ、 ホ 前照燈を備えさせること。 ヘ 方向支持器を備えさせること。 ト 警報装置を備えさせること。 チ 尾燈、制動燈及び後退燈を備えさせること。 リ 後写鏡及び当該移動式クレーンの直前にある障害物を ヌ 速度計を備えさせること。 (2)点検事項 イ 作業開始前に、次の事項について点検を行わせること。 (イ) かじ取装置の機能 ロ 1月を超えない期間ごとに1回、定期にイの(イ)~(ヘ)に (3)作業方法 イ 傾斜地又は軟弱な地盤の場所では、十分な広さ及び強度を ロ 2台の移動式クレーンを使用して共づりをすることは、 ハ 横引き、斜めづりはさせないこと。 ニ 旋回は、低速で行わせること。 ホ 強風のときは、作業を中止すること。 ヘ 荷をつって走行することは、原則として禁止させること。 ト ジブを伸ばした状態での走行は、旋回装置等を確実に チ 荷役作業中又は駐車中は、必ず駐車用ブレーキを リ 走行中は、急激にハンドルをきる等乱暴な運転をさせないこと。 5)ダンプトラック及び普通トラック (1)構造要件 イ かじ取装置及び走行装置は、安全な走行を確保できるものと ロ 走行を制限し、及び停止の状態を保持するため、 ハ 乗者席は、動揺、衝撃等により乗車している者が容易に ニ 運転者席は、運転に必要な視野があり、かつ、前面に ホ タイヤは、亀裂、コード層の露出等著しい損傷のないもの ヘ 最大積載荷重を表示させること。 ト 方向支持器を備えさせること。 チ 警報装置を備えさせること。 リ 前照燈及び尾燈を備えさせること。 ヌ 後写鏡及び当該トラックの直前にある障害物を確認できる ル 速度計を備えさせること。 (2)点検事項 イ 作業開始前に、次の事項について点検を行わせること。 (イ) かじ取装置の機能 ロ 1月を超えない期間ごとに1回、定期にイの(イ)~(ヘ)に (3)その他 イ 普通トラックで大型のもののとびら又は側板の開閉を行うに ロ 運転は、構内を運行する場合であっても、道路交通法に基づく 6)プラットホームトラック等 (1) 構造要件 イ 走行を制動し、及び停止の状態を保持させるため有効な ロ 警報装置を備えさせること。 ハ 他の車両を連結し、けん引する方式のものは、 ニ 前照燈及び後照燈を備えさせること。 (2)点検事項 イ 作業開始前に、次の事項について点検を行わせること。 (イ) かじ取装置の機能 ロ 1月を超えない期間ごとに1回、定期に次の事項について (イ) かじ取装置の異常の有無 第3 その他の留意事項 1)リース業者から荷役・運搬機械の貸与を受けた場合で、その操作を 2)構造要件に係る改善指導にあたっては、でき得る限り速やかに 3)災害の発生状況、監督指導の結果等に基づき、必要に応じ、業種別、 |
まずは、荷役作業に共通する内容がまとめられています。
その後、個別の機械の注意点がまとめられています。
最初は、作業共通に関してです。
荷役運搬機械の作業では、作業指揮者を指名し、指揮させるとあります。
共通事項では、まず作業指揮者を定め、指揮系統を明確にし、作業相互の連絡調整を行うようにとしています。
荷役作業は、必要に応じて、荷物を運ぶことが多く、それぞれの作業者は、全体を把握できていません。
そのため、予想していないのにフォークリフトが突入してきて、事故になるということも少なくありません。
また高所に荷物を積み上げる場合、1人で作業していると、無茶なこともやっても、咎められることはありません。
誰かが全体を把握する必要があるのです。
そのための作業指揮者の配置です。
ただフォークリフトで運ぶだけなのに、作業指揮者というと、大げさな感じもします。
しかし、全体を把握し、個々の作業員の動きを見て、調整するためにも、指揮者が仕切るのはたいせつなのことだといえます。
逆に言うと、誰も全体を見ていない状態だからこそ、事故が多かったのかもしれません。
荷役運搬機械については、定期自主点検を行わなければなりません。
1年以内に1回行うものと、1ヶ月以内に行うものがあります。
また、作業前にも点検を行う必要があります。
点検結果は、きちんと記録し、3年間は保管します。
点検の中でも、フォークリフトと不整地運搬車は、特別になります。
どちらも、特定自主検査として、有資格者による検査が必要になります。
整備会社等に委託することが多いですが、必ず有資格者に検査してもらいましょう。
フォークリフトは1年ごとですが、不整地運搬車は2年ごとになり、一緒のサイクルではありませんので、混同しないようしましょう。
安全に作業を行うにあたっては、作業方法の注意が必要です。
まずは、作業計画、手順を定め、それに従って作業させることです。
ただ荷物を運ぶだけなのに、作業計画など大げさなと思ってしまいます。
作業指揮者の指名と同じですね。
しかし、機械の走行ルート、一度に運ぶ量、荷降ろしの仕方、荷物の積み上げ方など、何も決めていないと、個々人の判断によります。
個々人の判断は、常に安全側に働くとは限りません。
むしろ、危険でも効率的な方法をとりがちです。
また、経験が少ないと、何をどうしたらいいのか判断することもできません。
作業手順の標準化は、安全作業を行う上で、重要な事なのです。
次に荷役運搬機械を使うにあたって、無理な使い方、特に制限荷重を越えて載せるということはしてはいけません。
道路での運搬では、過積載は取り締まられますが、これは道路に限らず、避けなければならないのです。
フォークリフト等で、重すぎる荷物を持つと、最悪倒れます。
フォークリフトの転倒は、運転手も周りの作業者も危険にさらします。
決められた重量までしか、載せない、運ばないことは、機械使用において大切なことです。
重量と同じく、制限速度も定めなければなりません。
工場内や倉庫内、敷地内では、限られた狭い範囲になります。
機械だけでなく、人も行き交っています。
こんな場所で、路上と同じようなスピードを出すと、交通事故の危険性は高くなります。
重い荷物を載せて、スピードを出すと、カーブでは曲がりきれず転倒したりします。
また急停止すると、荷物が放り出されたりします。
何もいいことがありません。
時速10キロ以上のスピードが出る機械では、制限速度を定め、これを必ず守らなければなりません。
荷物の運搬は、屋内に限りません。
不整地運搬車は屋外、土の上を走ります。
時にはぬかるんでいたり、法面の近くを走ったりもあります。
そのような場合、路肩近くを走っていて、法面から転落したり、同じルートばかり走って、一部だけ深く掘れ、その深みに足をとられて、転倒したりする危険もあります。
走行ルートなどは、作業計画で定め、転倒の危険がないようにしなければなりません。
荷役運搬機械は、運転席以外に乗ってはいけません。
フォークリフトのフォークの上に人を乗せて、走ったりしてはいけないのです。
転落防止措置をとれば、例外として乗ってもよいとされますが、十分に注意しなければなりません。
貨物自動車などの荷台は、アオリがなければ乗ってはいけません。
運転席以外の乗車は、元々想定されていないので、なるべく乗らないほうがいいですね。
荷物の運搬中に、積み荷が崩れてしまうと、危険ですね。
運転手自身も危険ですが、周りで作業している人にとっても危険です。
崩れそうな積み方をしないのは当然ですが、必要に応じてロープで固定するなどして、崩れないようにしなければなりません。
周囲にいる作業者は、荷が崩れる危険がある場所に、立ち入らないようにします。
荷物が崩れてくることも、接触することも防ぐために、立入禁止措置は大切です。
機械の運転席から離れる時は、逸走、つまり勝手に動き出すのを防ぐ必要があります。
そのために、ブレーキを掛け、キーも抜きましょう。
またフォークローダーなどであれば、バケットを上げたままではなく、一番下にして、最も安定した状態にしておくことが大切です。
荷役作業を行うにあたっては、保護帽などを着用させましょう。
高所で作業する場合は、安全帯(要求性墜落制止用器具)も着用させます。
以上が共通事項です。
ガイドラインは、この後は個別の機械についての措置を定めています。
こららについては、安衛則で各機械の条文に含まれているものがほとんどです。
移動式クレーンは、クレーン則でまとめられている内容と重複しています。
6)のプラットホームトラックは聞きなれませんが、これは構内運搬車のことですね。
個別の内容を再度まとめていくと、長くなるので、割愛します。
それらは個々の記事とあわせてご覧ください。
このガイドラインが通知されたのは、昭和50年です。
もう40年近く前のものですが、当時から荷役運搬機械などの事故は問題になっていました。
このガイドラインや安衛則の改定などにより、事故は減ってきましたが、依然として発生しています。
中でも荷物の積み下ろし作業時の、墜落事故は多く、交通事故よりも件数は上です。
またフォークリフトによる事故も、少なくありません。
走行時の接触、転倒、荷物の転落など。
考えうる限りの、また考えも及ばないようなものも含め、ありとあらゆる事故が発生しています。
フォークリフトは、工場や倉庫に限らず、非常に幅広く使われています。
使う母数が多ければ、事故件数も多くなるのです。
自動車運転の延長で、誰でも使えそうですが、実は注意しなければならないことがたくさんあります。
油断していると、たやすく事故になるのです。
今一度、荷物を運ぶという何気ない作業の危険性を見なおすことも大切です。
命も一緒に運んでいるのだなどと、大げさに言うのは、こっ恥ずかしいですが、荷物をただ運ぶのではなく、安全に運ぶことが、荷役作業の最たる使命なのではないでしょうか。