厚生労働省労働局長登録教習機関
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土止め支保工は掘削作業時に、土壁の崩壊、土砂崩れを防ぐためのものです。
土止め支保工によって、土壁の前に、もう1つ壁を作れば、穴の底に土が崩れ落ちてくることはありません。
しかし土止め支保工を組み立てている時、または解体している時は、土壁が剥き出しだったり、十分な支えがないため、無防備な状態とも言えます。
一般に土止め支保工は、一定の深さまで掘削してから、組立を行います。
組立作業中、穴の底の作業者は、土砂崩れの危険にさらされて仕事を行うわけです。
事実、土止め支保工の組立解体作業中に、土砂崩れに巻き込まれて事故にあったという事例も、毎年何件か起こっています。
掘削してから、土止めが完成するまでの間の事故をなくすにはどうしたらよいのか。
その解決策の1つが、土止め先行工法というものです。
先行工法というからには、何かに先立って行う工事です。
何の前に行うのかというと、これは掘削作業の前ですね。
正確には、掘削し、穴の中で作業者が立ち入る前という意味です。
土止め先行工法は、掘削作業と土止め支保工を平行して行い、作業員が穴の底で作業する前に、土砂崩れのリスクを軽減するための工法なのです。
土止め先行工法は、上下水道管工事などの小規模な明かり掘りの工事で、事故が多発していることを背景に、推進されてきました。
平成14年3月29日に基安発第0329003号として「上下水道等工事における土砂崩壊災害防止対策の推進について」というものが通達されます。
これは、上下水道工事の土砂崩れを防止するために、土止め支保工をしっかり行いましょうという通達でした。
しかし、翌年の平成15年にこの通達は廃止されます。
なぜなら、平成15年に新たに土止め先行工法のガイドライン策定についてのが通達されたからです。
ほぼ平成14年の通達内容を網羅していることもあり、重複するので、以前のものは廃止されたのでした。。
今回は、土止め先行工法の通達を紹介します。
内容の前に、1つお断りがあります。
以下に、通達内容を紹介しますが、ほぼ安衛則の掘削作業、土止め支保工に関する内容と同じですので、個々の内容を詳しく解説しません。
また、この通達内容では、土止め先行工法とはどんなものなのか、いまいち要領を得ない所もあります。
そのため、通達全文の後に、厚生労働省の土止め先行工法のガイドラインまとめにリンクを張っております。
このページには、数ページのPDFファイルがありますので、このPDFファイルをダウンロードなどして、ご覧ください。
こちらには、土止め先行工法の種類や作業手順なども紹介しています。
通達文については、ざっと流して、種類ややり方についても少し触れてみたいと思います。
それでは、土止め先行工法に関するガイドラインです。
平成15年12月17日 基安発第1217001号
土止め先行工法に関するガイドラインの策定について
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部長 土止め先行工法に関するガイドラインの策定について 土止め先行工法に関するガイドラインについては、平成15年12月17日付け 記 標記ガイドラインは、平成14年3月29日付け基安発第0329003号 |
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長 土止め先行工法に関するガイドラインの策定について 小規模な溝掘削を伴う上水道、下水道、電気通信施設、ガス供給施設等の これらの土砂崩壊による災害は、土止め支保工が未設置の溝内作業中 このため、土止め支保工の設置等法令に定められた事項の遵守に加え、 厚生労働省では、上下水道等工事における土砂崩壊災害を防止するための ついては、関係事業者等に対し、関係法令の遵守をさらに徹底させ、 なお、別添2のとおり、関係団体に対し、本ガイドラインの周知徹底等を 参考1:上下水道工事における死亡災害発生状況 参考2:土砂崩壊災害による土止め支保工の状態別死亡災害発生状況(上下水道工事) 土砂崩壊災害による土止め支保工の状態別死亡災害発生状況(上下水道工事) (単位:人)
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別添1
土止め先行工法に関するガイドライン
第1 目的 本ガイドラインは、労働安全衛生関係法令と相まって、土止め先行工法による 第2 適用対象 本ガイドラインは、管きょの敷設等のために小規模な溝掘削作業を伴う 第3 用語の定義 本ガイドラインで使用する主要な用語の定義は、労働安全衛生関係法令に 1)上下水道等工事 上水道、下水道、電気通信施設、ガス供給施設等の建設工事をいう。 2)小規模な溝掘削作業 掘削深さが概ね1.5メートル以上4メートル以下で、掘削幅がおおむね 3)溝内作業 管きょの敷設、測量、点検、締固め等溝内に立ち入って行う 4) 土止め支保工等 土止め支保工に加え、矢板工法による腹おこしや切りばり等の 5)土止め先行工法 上下水道等工事において、溝掘削作業及び溝内作業を行うに当たって、 6)土止め支保工等の組立て又は解体の作業 土止め支保工の切りばり又は腹おこしの取付け又は取りはずしの作業に 7)土砂崩壊災害 地山の崩壊又は土石の落下による労働災害をいう。 第4 事業者等の責務 上下水道等工事を行う事業者は、労働安全衛生関係法令を遵守するとともに、 上下水道等工事に従事する労働者は、労働安全衛生関係法令に 第5 講ずべき内容 1)土止め先行工法に係る施工計画の策定 事業者は、小規模な溝掘削作業を伴う上下水道等工事を行う場合は、 (1) 事前調査 ア 地山の調査 溝掘削を行う作業箇所及びその周辺の地山等に関する次の事項に (ア)形状、地質及び地層の状態 (イ)き裂、含水、湧水及び凍結・凍上の有無及び状態 (ウ)埋設物等の有無及び状態 (エ)高温のガス及び蒸気の有無及び状態 イ 周囲の調査 作業箇所周辺の道路、建築物、架空電線等溝掘削及び土止め支保工等の ウ 計画への適応 (2)以下の計画の作成に当たっては、ア及びイの調査結果に (2) 土止め計画 ア 土止め支保工等の選定 本ガイドラインの「別紙」を参考にして、(1)の事前調査の結果に イ 構造 土止め支保工等は、地山の形状、地質、地層、き裂、降水に ウ 設計 土止め支保工等の設計に当たっては、土止め支保工等に作用する土圧、 エ 部材等の確保 土止め支保工等の構造に応じた使用部材の種類と量を確認するとともに、 オ 機械の使用 土止め支保工等の組立て又は解体の作業に移動式クレーン、 カ 埋設物等の防護 埋設物等について防護し、又は移設を行う等の必要がある場合は、 キ 組立図 土止め支保工等の各部材の配置、寸法及び材質並びに取付けの時期 ク 点検 土止め支保工等の点検及び補修に関して、その方法、時期等を なお、点検項目は次の事項を含むものとすること。 (ア)部材の損傷、変形、変位及び脱落の有無及び状態 (イ)切りばりの緊圧の度合 (ウ)部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態 (3) 作業計画 ア 溝掘削作業 (1)の事前調査結果及び(2)により選定した土止め支保工等の工法に (ア)溝掘削を行うための機械の種類、能力及び必要台数 (イ)(ア)の機械の搬出入経路、設置場所及び運行経路の詳細 (ウ)機械掘削と同時に手掘りを行う場合のそれぞれの作業範囲と (エ)(ア)の機械の運転中に立入禁止措置等を行う場合の方法 (オ)溝掘削作業と土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び イ 土止め支保工等の組立て又は解体の作業 (2)の土止め計画に基づいた土止め支保工等の組立て又は解体の作業と ウ 溝内作業 溝内作業について、次の事項を明らかにした作業計画を作成すること。 (ア)溝内作業の種類及び内容 (イ)溝内作業の種類ごとに労働者が溝内に立ち入る時期及び作業位置 (ウ)溝内作業の種類ごとに使用する機械の種類、能力及び必要台数 (エ)(ウ)の機械の搬出入経路、設置場所及び運行経路の詳細 (オ)(ウ)の機械の運転中に立入禁止措置等を行う場合の方法 (カ)溝内作業と溝掘削作業及び土止め支保工等の組立て又は解体の (4) 仮設備計画 溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業に ア 安全に昇降するための設備 イ 溝内への墜落を防止するための設備 ウ 作業箇所へ通ずるための通路 エ 路面を覆工するための設備 オ 分電盤、配線等電源を確保するための設備 カ その他必要な仮設備 (5) 安全衛生管理計画 溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び ア 安全衛生管理体制 イ 安全衛生教育 ウ 安全衛生点検及び安全衛生活動 (6) 工程表 溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び ア 各作業の順序、開始時期及び終了時期 イ 各作業間の関連 ウ 安全衛生管理に関する工程 2)土止め先行工法に係る施工計画の実施及び変更 事業者は、1で策定した土止め先行工法に係る施工計画に基づき、 また、同施工計画を変更する必要が生じた場合は、事前に関係者と 第6 土止め先行工法の実施に係る留意事項 1)土止め支保工等の組立て又は解体の作業における留意事項 事業者は、土止め先行工法による土止め支保工等の組立て又は解体の (1) 部材 土止め支保工等の部材は、適切に経年管理されたものを使用し、 (2) 組立て ア 組立図による組立て 土止め支保工等は、第5の1の(2)のキの組立図により組み立てること。 イ 部材の取付け 切りばり、腹おこし等の部材は、脱落を防止するため、矢板等に ウ 矢板の設置 矢板は、掘削深さ、土圧、降水による地表面からの水の流入、湧水、 エ 腹おこしの設置 腹おこしは、矢板に作用する土圧、作業性等を考慮して、 オ 切りばりの設置 切りばりは、矢板及び腹おこしに作用する土圧、作業性等を考慮して、 (3) 解体 ア 切りばり及び腹おこしの取りはずし 切りばり及び腹おこしを取りはずすときは、それらが取り付けられている イ 矢板の引き抜き 矢板を引き抜くときは、埋め戻しが完了した高さだけ引き抜くこと。 (4) 作業全般 ア 土止め支保工作業主任者の選任 土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行うときは、 イ 溝内への立入禁止 土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行うときは、土砂崩壊災害を ウ 関係労働者以外の立入禁止措置 土止め支保工等の組立て又は解体の作業を行う箇所には、 エ 点検 土止め支保工等を組み立てたときは、第5の1の(2)のクで 2)溝掘削作業及び溝内作業における留意事項 事業者は、溝掘削作業又は溝内作業を行うときは、第5の1の(3)により作成した (1) 溝掘削作業 ア 地山の掘削作業主任者の選任 溝掘削作業を行うときは、地山の掘削作業主任者を選任し、その者に イ 手堀り作業 (ア)手堀り作業の開始 床均し、コーナー部の掘削等溝内での手堀り作業は、土止め支保工等を (イ)つり綱等の使用 材料、器具等を上げ、又は下ろすときは、つり綱、つり袋等を労働者に (ウ)昇降設備 昇降するときは、第5の1の(4)により作成した仮設備計画に基づいて設置した ウ 地山の点検 溝掘削作業を行うときは、作業を開始する前及び作業を終了した後に、 (ア)溝の肩の曲がり及び動き (イ)溝の背後地盤のき裂の発生及び広がり (ウ)岩地盤の新たなき裂の発生及び音の発生 (エ)掘削側面の膨らみ及びせり出し (オ)掘削底面の隆起及び溝の背後地盤の沈下 (カ)掘削底面への水と砂の湧き出し (キ)湧水量の増加及び湧水の濁り変化 (ク)オーバーハング状態の発生 エ 埋設物等 埋設物等又はコンクリートブロック塀等の建設物に近接する場所での オ 保護帽 溝掘削作業に従事する労働者に保護帽を着用させること。 カ 照明 溝掘削作業を行う場所について、照明施設を設置する等により必要な キ 排水 溝掘削作業を行う場所に湧水がある場合は、集水のための釜場を設け、 (2) 溝内作業 ア 溝内作業の開始 溝内作業は、土止め支保工等を設けた後でなければ行っては イ つり綱等の使用 材料、器具等を上げ、又は下ろすときは、つり綱、つり袋等を労働者に ウ 保護帽 溝内作業に従事する労働者に保護帽を着用させること。 エ 昇降設備 昇降するときは、第5の1の(4)により作成した仮設備計画に基づいて 3)機械の使用における留意事項 事業者は、溝掘削作業、土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び (1) 合図 移動式クレーン、車両系建設機械等を使用するときは、一定の合図を定め、 (2) 立入禁止措置 移動式クレーンの旋回範囲内及び車両系建設機械等と接触するおそれのある (3) 矢板等の引き抜き 移動式クレーンを使用して、矢板等を引き抜く場合は、矢板等の引き抜き抵抗を (4) 矢板等の打込み ドラグ・ショベルを使用して、矢板等を打ち込む場合は、バケットによる押し込みで (5) 主たる用途以外の使用の制限 土止め支保工等の組立て又は解体の作業及び溝内作業において、 |
別添2は、各団体へのガイドライン実施の依頼のため、割愛します。
通達が出されたのは、平成15年12月ですが、背景として上下水道工事での、土砂崩壊事故が少なくないことがあるようです。
通達の本文にもあるのですが、年間で30人~50人の死亡者がある状況でした。
現在は、同種の死亡者数は、わからないのですが、建設業全体でも死傷者数、死亡者数ともに減少しているので、減ってきていると思われます。
土砂崩れは、掘削作業で、土止め支保工なしで行っている場合に最も多く発生しています。
その次に多いのが、組立解体作業中の事故です。
土止め先行工法は、この組立解体作業中の事故を防止するために、業界団体などを通知し、普及を試みようとしているものです。
上下水道工事での土砂崩れを防止する目的ですが、掘削が伴う仕事であれば、他の場所でも活用できます。
具体的な方針としては、別添1に記載されています。
とはいえ、土止め先行工法とは何かという具体的な内容はありません。
施工にあたっての決まりや、留意点などのまとめになります。
内容は、安衛則の条文とほぼ同じです。
まず、用語の定義になります。
土止め支保工を行うにあたって、大切なことは事前の調査と計画です。
先行工法に限らず、掘削や土止め支保工を行うためには、地形や地質、土の含水状態、地下水が高く掘削する場所に湧水があるか、埋設物の有無などを調査しなければなりません。
土の様子は、一様ではありません。
同じ場所でも、少し掘っただけで、地質が変わることもあります。
これらを踏まえて、土止め支保工の構造や組み立て方などを計画します。
事前調査と計画を疎かにしてはいけません。
組立においては、矢板や腹起し、切ばりなどは、今後に取り付けましょう。
また組立や解体作業中には、関係者以外が立ち入ってはいけません。
先行工法であってもなくても、定期的に点検を行うのは同じです。
留意点としては、土質の状態や排水方法、照明や昇降設備など、作業時に注意点があります。
機械を使用するにあたっても、合図や作業範囲に入らないなどの注意があります。
機械使用にあたって、特に注意しなければならないのが、ショベルカーを使っての作業でしょう。
矢板など吊り込みには、ショベルカーを使うことが多いです。
これは、クレーン作業なので、主たる用途以外の使い方になります。
ショベルカーで、吊り荷作業お行うには、平坦な場所で、合図者を指名する、定格荷重以上吊らないなどの措置が必要になるので、注意しましょう。
また、1つ留意点で、禁止されていることがありますね。
ショベルカーのバケットを金づちのようにして、矢板を打ち込まないことです。
これは、矢板が変形したりするのもありますが、矢板の打ち込みが甘くなるというのもあります。
バケットは打撃することを意図していないので、力が十分に入らないというのがあるのです。
設計通りの根入れを行わないと、強度が十分になりません。
矢板の打ち込みは、バイブロハンマーやパイラーなど、専用の機械を使用するといいですね。
さて、簡単ではありますが、通達内容をまとめてみました。
かなり端折ったところもありますが、この通達は、先行工法をやりましょうということくらいです。
具体的に先行工法等は何かは書かれていません。
土止め先行工法については、こちらのガイドラインの要点に詳しく紹介されています。
土止め先行工法とは -土止め先行工法に関するガイドラインの要点-
図入りで、詳しく紹介されており、土止め先行工法とは何かというものが、イメージがつくかのではないでしょうか。
土止め先行工法とは、特に上下水道管の工事のように、溝形に掘削する場合だと、効果は抜群です。
通常の土止め支保工では、目的の深さまで掘削してから、作業者が穴の底に入り、作業を行います。
一方で、土止め先行工法では、掘削後、または途中から土止め支保工を行い、作業者が穴の底に入るのは、ある程度土止めができて、土砂崩れ対策を行ってからになります。
これだと穴底での作業時の危険度は、段違いですね。
土止め先行工法には、大きく2種類の工法があります。
1つは「軽量矢板工法」で、もう1つは、「建込み簡易土止め工法」です。
これらを簡単に紹介しましょう。
軽量矢板工法とは、細長い金属の板を何枚も連続で土壁の前に建て、壁にするものです。
地山が自立していることを前提としています。
軽量矢板工法には、作業方法で2種類紹介されています。
まずは、目的の深さまで掘削してから、矢板を立てる、「建込み方式」です。
矢板を建てた後、一段目の腹起しや切ばりを取り付けます。
これは、全て地上から行います。
1段目の切ばりが取り付けられ、支えが作った段階でようやく作業者が穴の中に入り、残りの腹起しや切ばりの取り付けを行います。
もう1つの方式は、「打込み方式」です。
建込み方式と異なる点は、目的の深さまで掘り終える前に、矢板を打ち込むことです。
浅い状態で、矢板を打ち込み、一段目の腹起しや切ばりを取り付けます。
浅い状態なので、土砂崩れの心配はありませんね。
もし崩れたとしても、足元にファサと掛かる程度で押えられます。
矢板で固めた後、その後、目的の深さまで掘削していくのです。
掘り終えた時には、すでに土止め支保工はできているという方式なのです。
ただし、この方式は、かなり深くまで矢板を打ち込まなければならないので、固い地盤では困難ではあります。
逆に、建込み工法は、固い地盤に適していますね。
軽量矢板工法のメリットは、矢板は継いでいくと、いくらでも延長できるので、長区間の土止めに適していることです。
また材料も一般の土止め支保工のものを使うので、コストがある程度押えられます。
デメリットは、最終仕上げは、作業者が穴に入らなければならないので、土砂崩れの危険性がゼロではないということです。
それでも、かなり低くなっているのですけどね。
軽量矢板工法としては、この2つの方式が紹介されています。
では、もう1つの建込み簡易土止め工法です。
軽量矢板工法と違い、少し特殊な材料を使用します。
こちらも「スライドレール方式」と「縦張りプレート方式」という、2つの方式が紹介されています。
まずはスライドレール方式です。
これも目的の深さに至る前、掘削作業途中に行います。
掘削している溝を横断するように、スライドレールと呼ばれる門型の部材を建て込みます。
スライドレールには名前の通り、レールがついています。
これは土止めパネルという、壁になる部材を入れるレールです。
このレールにパネルを接続し、打ち込みます。
こうして溝の両サイドに壁を作ります。
パネルの設置が終わったら、もう一方の端部にスライドレールを取り付けます。
以上で、土止め支保工は完了です。
この後は、土止めの範囲内を掘削するとともに、スライドレールやパネルを圧入して、目的の深さまで掘っていくのです。
縦張りプレート方式も、これと似たようなものです。
異なる点は、最初からプレートと切ばりを取り付けた完成品を、打ち込むところです。
つまり組立を、地上で行っているということです。
掘削しながら、徐々に圧入する作業手順は同様です。
この工法のメリットは、作業者が穴の底で作業する必要がないので、組立解体中に土砂崩れに巻き込まれないということがあります。
デメリットは、プレートの長さ分の土止めしかできないので、長区間には適していません。
またスライドレールやプレートなど、専用の材料が必要になります。
なにより、両端に枠や切ばりがあるので、掘削しづらいというのがあります。
土の生け簀を造り、その中を掘るようなものです。
切ばりに当たるのを避けると、両端部は機械では掘りきれず、手掘りになってしまいます。
いずれの工法も、穴の底に人が入る前に、土止め支保工の行い、土砂崩れに人が巻き込まれないようにするためのものです。
当時の通達から、先行工法も普及していきます。
とはいえ、土砂崩れの事故は、なくなりません。
掘削作業時の土砂崩れでは、土止め支保工に限らず、崩壊防止対策が行われていません。
理由としては、掘ってすぐに埋め、短時間なので大丈夫だろうというのが、背景にありそうです。
残念ながら、短時間でも、崩れる時は崩れます。
事故は、そのような事情は一切、配慮してくれないのです。
土止め先行工法は、掘削作業時の土砂崩れを防ぐための1つの対策です。
作業現場の状況もあるので、これが最善ではないでしょう。
大切なことは、事故を起こさないこと。事故に巻き込まれる人を作らないことです。
建設業では掘削作業はつきものなのですから、土砂崩れの危険はいつも側にあります。
有効に使えるならば、土止め先行工法は、よい対策になりますね。