厚生労働省労働局長登録教習機関
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安全衛生活動としての4Sは、ありとあらゆる活動の基礎となるものです。
4Sは「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」の頭文字をとった、活動です。
もともとは、整理整頓などの4S活動をしましょうと、スローガンとして掲げられていました。
もちろん、4Sはとても大事です。
なお、4Sについて書いた記事は、こちらです。
4Sは安全と品質向上、そして思いやりの活動
作業場や身の回りを、きれいにすること、きれいな状態を維持し続けることで、安全や品質の向上を高めていくものです。
近頃、この4Sにもう1つのSを加えて、5S活動をしようということも、よく耳にします。
安全衛生計画などでは、5Sを実施しましょうと言われているようです。
4Sに加えられる、もう1つのSとは、何でしょうか?
それは「しつけ」というものです。
「しつけ」というと、親が子どもにしつけるなどを使い方をするのが多いですね。
悪いことをしたら、それは良くないことだと教えるというような意味ですね。
少々言い過ぎた表現になりますが、人間社会においてのルールを教える、正しい行いをさせるというようなニュアンスでしょうか。
ルールを教えて、守らせるというのが、しつけの意味には含まれます。
さて、安全衛生活動においての、しつけには、どのような意味が含まれるのでしょうか。
当然ですが、安全衛生活動だからといって、そんなに大きく意味が外れることはありません。
やはり、ルールを教えて、守らせることなのです。
少し、安全衛生活動ぽい表現をすると、こんな感じでしょうか。
○しつけ
ルールを守らせ、安全衛生活動を徹底させる。
ルールには、作業手順、危険行動を行わない、保護具などを着用するなどは含まれます。
またその他にも、4Sを実施するということも含まれるのです。
そして、4S活動と同じで、一度や二度行ったら、おしまいというものではありません。
ずっと続けなければ意味がありません。
昨日も行ったら、今日も行い、明日からもやり続けなければならないのです。
4Sは作業場を安全で衛生的にするという、環境に焦点を当てていましたが、しつけは作業者に焦点を当てたものです。
どんなによい環境であっても、安全であることは、最終的にはそこで働く人にかかってくるのです。
確かにその通りですよね。
新車の車であっても、スピード出しすぎ、信号無視、飲酒運転などをしていたら、事故になります。
チリひとつないくらい掃除され、荷物が整然と並べられた倉庫であっても、鬼ごっこをして走り回っていたら、転んだり、荷物にぶつかったりします。
事故の原因は、設備や道具、環境だけではないのです。
それらと同じくらい、人間の行動も事故原因となるのです。
整理、整頓、清掃、清潔は、環境の整えることで事故防止につなげます。
しつけは、人間つまり作業者の行動の正すことで、事故防止につなげようとするものなのです。
設備や環境と人。
これらを、きちんと正すことによって、事故は防げるのです。
そう考えると、5Sは仕事の基礎、大原則だと言えますね。
仕事には、安全で衛生的な活動も含まれます。
このしつけは、ルールを守らせるという意味があるので、指示して、やらせるというような上から押さえつける印象があります。どうも児童虐待やパワハラの言い訳に使われがちで、どうも悪い印象が持たれてしまいます。
この印象はある種正しいです。
作業者に100%任せてしまうと、効率を優先していく傾向があります。そのため、保護具を付けなかったり、やるべき手順を省いたりしがちになります。
自発的に、安全に注意して仕事しようというのは、案外少ないです。
そのため、事業者や職長が、しっかりと指導し、監視し、やらせるというのは大事です。
作業者は、その指示やルールについては、守らなければなりません。
とはいえ、ただ一方的ではいけません。
時として反発を生みますし、すぐに疎かになってしまいます。
事業者は、なぜルールを守らなければならないかなどの理由を説明し、理解してもらうのも大事なことなのです。
この教育も大事な安全活動ですね。
もう1つ、しつけによってルールを守るということは、自分も周りの人も危険な目に合わせないことでもあります。
それは、言うなれば、人を思いやることと言っても過言ではないでしょう。
実は、5Sは周りの人への思いやりの実践なのです。
先日、私の会社でも、カッターナイフを使ったら、刃を収納せずに放置する者がいたので、指摘しました。
こういうのは、当然ずさんで、ズボラなものですが、カッターで誰かが怪我をする可能性を考えないからでしょう。
カッターの刃を収納するのは、手間のかかることでしょうか?
そんなことはありませんよね。
時間にして1秒もかかりません。
その手間を惜しむのは、自分の都合だけといえます。
また小さな子どもがいる家庭では、そんなことするでしょうか?
決してしないはず。
子どもに対してはともかく、一緒に働く人たちに対しては、想像力と思いやりが欠けたのでしょう。
安全活動において、最も危険な行動は、身勝手、わがまま、自己都合といえます。
自己都合で、決められた手順を無視する。
一人だけ自分ルールで仕事する。
カッターなら怪我をしても、少しきるくらいですが、これがもっと大きな機械だったらどうでしょう?
丸のこ盤を使っていて、保護カバー外し、スイッチも切らずに、その場を離れたりしたら、どうでしょう?
フォークリフトを使っていて、フォークに荷を載せて、さらに一番上まで上げたまま席を離れたら、どうでしょう?
ショベルカーで、バケットを高く上げたままで、席を離れたら、どうでしょう?
そんなことする人はいないよと思うかもしれません。
しかし状況としては、カッターの刃を出したまま放置しているのと変わりありません。
もし、この行動をしたら、他の人にどんな影響があるだろうと、想像力を働かせることは、事故を防ぐ上で最も大切です。
自分の都合だけで、ルールを破ると、まわりまわって周囲に影響が出ることがあります。
直接的に危険な状況を作るだけではなく、もし後輩がいるならば、ルールを無視しても問題ないんだという意識を植え付けてしまいます。
しつけとは、事業者などが作業者にさせることだけではありません。
自分自身を正す、しっかり注意するということも重要なのです。
とても、身近な言葉にすると、5Sは思いやりの実践なのです。
思いやる相手は、周囲の人であり、自分自身です。
周りと自分自身のために、整理、整頓、清掃、清潔にする。
周りと自分自身のために、ルールを守り、安全に仕事する。
周囲の人というのは、職場の同僚や他の作業者だけを含みません。
家族も含みます。
安全に仕事をし終えて、怪我なく病気なく帰宅することは、この上ない家族への思いやりなのです。
危険になことを、あらかじめ取り除いて、危険がないように仕事し、帰宅する。
5Sが作り出すものは、この上なく貴重なものと言えます。
スローガンとして4S、5Sを掲げられているところは多いと思います。
しかし小学校の時から言われているようなスローガンでは、人の心には響きません。
当たり前すぎるからです。
「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」の5Sの意味を考え、理解した時に、意味のあるスローガンになります。
いい加減なことを行うことで、具体的に誰に危険を及ぼしてしまうのか。
周りの人の顔を思い浮かべ、見渡しましょう。
5Sは、その人たちを守るためにできる、具体的な活動なのです。