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トラック運送業で多そうな事故というと、交通事故が思い浮かぶのではないでしょうか。
確かに、トラックを運転している時に、追突したりなどの事故は少なくありません。
そして交通事故は、死傷事故になるなど、大きな事故になってしまいます。
しかし、運送業で最も多い事故は、運転中の交通事故ではないのです。
最も事故が多いのは、積み下ろしの時なのです。
平成24年のデータになりますが、全ての事故に対して、交通事故が占める割合は約7%です。
一方、荷役時、つまり荷物を載せたり、降ろしたりする際の事故は、約70%になっているのです。
荷役時の事故で、最も多いのが荷物や荷台からの墜落・落下です。
高いところで作業している時に、落ちてしまう事故です。
次いで多いのが、フォークリフト等にぶつかるなどの事故です。
その他にも、荷物を運んでいて転ぶなどの事故もありますが、荷物や車両にひかれる、はさまれるという事故も少なくありません。
とてつもなく重い荷物や車両に挟まれる事故なのですから、軽い事故では済まないです。
運が良ければ骨折、悪ければ死亡してしまうこともありえます。
荷物を載せたり、降ろしたりする作業は、車に乗っている時間に比べたら短く、補助的な仕事のように思われがちですが、実はとても危険な要素があるのです。
12月の年の瀬に、トラックにはさまれ死亡するという事故がありました。
この事故は、作業中に、近くのトラックが動き出し、はさまれてしまったのでした。
今回は、この事故について原因と対策とともに、検討してみたいと思います。
トラックに挟まれ、男性が死亡
(平成26年12月15日)
15日午前8時45分ごろ、愛知県知多市北浜町の飼料会社の社員から「2台のトラックの間に男性が挟まれている」と119番通報があった。 男性は、病院に運ばれたがまもなく死亡した。 愛知県警は、亡くなったのは所持していた運転免許証などから浜松市在住の40代の男性とみて、身元と事故原因を調べている。 知多署によると、現場は工場敷地内のサイロの近く。 |
この事故の型は「はさまれ」で、起因物は「トラック」です。
サイロに入れる飼料を運び、荷降ろし作業を行っていた時に、近くにいたトラックが動き出し、トラックとトラックの間に挟まれてしまったという事故です。
この現場には、被災者だけでなく、何台かのトラックがあり、荷降ろしをしていたものと考えられます。
被災者のトラックも大型トラックだったので、別のトラックも同程度の大きさだったのではないでしょうか。
大型トラックということですので、積載量10トン程度ですから、車体重量は相当なものだったはずです。そのようなトラックに迫られ、押しつぶされたのですから、人の体では耐えられるはずもありません。
被災者もトラックに乗ってきていましたが、この事故で問題になるのは、もう1台のトラックです。
このトラックがなぜ動き出したのか?
「エンジンを止めた状態で作業していた別の大型トラックが急に動き出した」とあるので、誰も運転席には乗っていなかったと思われます。
車両や機械が、勝手に移動することを、逸走といいます。
大型ダンプの逸走が、事故の原因のようです。
逸走した原因は、何でしょうか?
間違いなくブレーキがかかっていなかった、もしくは甘かったことがあります。
また車を止めていた場所は、少々坂道になっていたのではないでしょうか。
坂道にブレーキがかかっていない状態で車を止め、作業をしていた。
これが原因では、ないでしょうか?
これらを踏まえて、原因を推測してみます。
1.トラックのブレーキをかけていなかった。
2.タイヤの輪止めなどを置いていなかった。
3.荷役作業時の作業手順や確認事項について、周知していなかった。
4.車両の停車位置が近すぎて、逸走に気がついた時に逃げられなかった。
ブレーキなどをしっかりかけれいれば、逸走は防ぐことができます。
さらに、タイヤに輪止めをつけておくと、坂道でも、坂を下っていくことを防止することができます。
何よりも、停車時に勝手に動き出させてはいけません。
この事故を起こしたトラックの運転手は、短時間だからなのか、いつもやっていて過信していたのか、十分な停車措置をとっていませんでした。
作業に慣れてくると、少々手順を省いても大丈夫だ、という過信が生まれます。
この過信は、油断を生み、安全を疎かにして、事故に至ることもあるのです。
記事からでは、判断できませんが、もしかしたらそのような過信や油断も背景にあるのではと推測されます。
この事故の対策を検討してみます。
1.停車時にはサイドブレーキをしっかりかける。
2.タイヤに輪止めをつける。
3.荷役時の作業手順を徹底する。
4.複数のトラックなどが作業する場合は、十分に離隔をとって停車する。
5.車の前後は、立入禁止とする。
ほんの少々だけ、席を離れるのだから、サイドブレーキは必要ない、輪止めは必要ない、ということはないのです。
機械は状況を臨機応変に理解してくれません。
条件さえ整えば、いつでも制御が不能になります。
もし可能であれば、逸走してきても避けられる位置に停車すると、逃げる時間を稼げます。
また車の前後にしか、動かないので、前後の位置には入らないなど、作業時の注意をすると、より安全ですね。
とはいえ、何より大切なのは、逸走防止です。
エンジンを切るのはもちろんですが、サイドブレーキと輪止めです。
他に作業者がいるいないに関わらず、車が勝手に動き出したら、何かにぶつかるまでは止まることができません。 人身事故でなくとも、大きな被害が出てしまうのです。
どんな短時間でも、サイドブレーキと輪止め。
この習慣化が、この事例のような事故を防ぐことになるのではないでしょうか。