○安衛法と仲良くなる高所作業・足場

最も多い事故。墜落・転落事故の防止。

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全ての労働災害の中で、最も死亡者が多い事故は、墜落・転落事故です。

墜落・転落。
つまり高いところから落ちてしまうことにより、死亡したり、大怪我になったりします。

平成25年度での、墜落・転落による死亡した人は、266人にのぼります。
これは、全死亡者1,030人のうち、約26%も占めるのです。

死亡に至らなくとも、大きな怪我にあった人の人数は、約2万人。全死傷者数118,157人のうち、約17%を占め、事故原因としては、転倒に次いで多くなっています。

毎年、本当に多くの人が墜落・転落で、怪我や死亡しているのが実状なのです。

業種によらず、高所で作業することはあります。
建設業ではビルなど足場作業、製造業であれば機械の内部や建物の開口部付近作業、運送業であれば荷役作業、小売や社会福祉施設などの第三次産業でも、階段や高い場所の荷物を取ろうとして、落ちる事故が起こっているのです。

高所からの墜落したらどうなるのかは、イメージできますよね?

人の体は容易に壊れてしまいます。
頭部から落ちれば、致命的になります。
足から落ちても、骨折などしてしまいます。

そして、場合によっては、ほんの1.5メートルの高さからであっても、亡くなるというケースもあるのです。

そんなに危険なら、高所作業をなくせばいいのですが、現実的な話としてそうもいきません。

ならば、いかに墜落・転落を防止する対策が重要になるのです。
法的にも、墜落・転落対策についての条文が定められています。

規定は、安衛則に記載されています。

【安衛則】

第9章 墜落、飛来崩壊等による危険の防止

第1節 墜落等による危険の防止

(作業床の設置等)
第518条
事業者は、高さが2メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を
除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に
危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法に
より作業床を設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが
  困難なときは、防網を張り、労働者に要求性墜落制止用器具を
  使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための
  措置を講じなければならない。

第519条
   事業者は、高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等で
墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、
囲い、手すり、覆い等(以下この条において「囲い等」という。)を
設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが
  著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を
  取りはずすときは、防網を張り、労働者に要求性墜落制止用器具を
  使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための
  措置を講じなければならない。

第520条
  労働者は、第518条第2項及び前条第2項の場合において、要求性墜落制止用器具等の
使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
(要求性墜落制止用器具等の取付設備等)
第521条
事業者は、高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合に
おいて、労働者に要求性墜落制止用器具等を使用させるときは、要求性墜落制止用器具等を
安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。

2 事業者は、労働者に要求性墜落制止用器具等を使用させるときは、要求性墜落制止用器具等
  及びその取付け設備等の異常の有無について、
  随時点検しなければならない。

高い所で仕事する上で、最も大切なことは、足場を確保することです。

小学校くらいでは、平均台というがなありませんでしたか?
幅が15センチ程度の一本橋です。

平均台の上を歩くには、バランスをとらなくてはならず、左右に体が振れたりしますよね。

想像して下さい。
高さ10メートルの場所で、平均台の上で仕事するとなると、どうでしょうか?

無理というのが、大半の意見ではないでしょうか?

ところが、こと仕事においては、作業を優先する余り、このようなことが起こり得たりします。

足の置場が靴よりも小さい、グラグラする、移動すらできない場所では、体を自由に動かしたりできません。
身動きが取りづらいところなので、少し体制を崩すだけで、地上に落ちてしまうのです。

高所で仕事するには、仕事ができる環境を作らなければなりません。

それが、作業床を備えるということです。

地表や床面から2メートル以上高い場所で作業する場合は、作業床を設置しなければなりません。

作業床とは何かというと、足場のことです。
足場は縦横のパイプや手すりなどの全体の設備のことですが、作業床は歩いたり、仕事したりする場所。作業床を付けるために、足場を組むのです。

2メートル以上の高さでは、作業床が必要です。
2メートルの高さというと、男性の身長よりやや高いくらい。
何となく落ちても大怪我にならないような気もしますが、頭から落ちると致命傷になりかねません。

高いところでの作業をなくすことはできないのだから、最大限墜落の危険性を小さくすることが、大切なことなのです。

作業床を設置することが一番ですが、どうしても設けることができない時もあります。
非常に狭い場所、入り組んでいて、足場が組めないなのです。

当然ですが、作業床が設置できないなら仕事してはいけない、ということはありません。
作業床に代わる、墜落防止策を取る必要があります。

その対策が、安全帯(要求性墜落制止用器具)着用です。

安全帯とは、いわば命綱のことです。
この命綱を柱や手すりなどに掛けて、万が一足を滑らせても、落ちないようにするための保護具です。

高所作業では、安全帯は必須です。
作業床があってもつけなければなりません。

さて、墜落・転落の危険があるのは、高所ですが、これには開口部というものも含まれます。
開口部とは何かというと、建物の2階以上で、床に穴が空いている場所などです。

要するに、地面や床など、作業床以外からの落ちる危険がある場所です。

この開口部とともに、作業床や建物2階の端も、足を踏み外せば落ちる危険性がありますね。

倉庫などでは、2階に荷物を上げたり、降ろしたりするために、床に開口部が設けられていたりします。
普段は蓋がしてありますが、作業中には開けて、作業をしますね。

開口部付近での作業中に、墜落するという事故が実に多いのです。

開口部などでの墜落・転落事故を防ぐために、柵や手すり、囲いを設けなければなりません。

人が穴に入れないようにするのです。

開口部や階上の端で仕事するのがどれほど危険かというと、こんな想像をしてみてください。

マンションなどでは、ほとんどの部屋にベランダがあると思います。
ベランダの床からは、コンクリート壁が立ち上がり、壁の上には手すりがありますよね。
壁の高さは、子どもがよじ登れない程度の高さがあると思います。

もし、この壁がなかったらどうでしょう?
ベランダは吹きさらしの床しかない。

そんな場所に出れるでしょうか?
洗濯物を干せるでしょうか?

怖すぎますよね。

開口部付近での仕事というのは、いわば壁や手すりのないベランダで仕事をしているのと同じなのです。
危険性は変わりません。

しかし、仕事となると危機感が薄れてしまい、平気で近づけたりする傾向があるようです。

開口部や、作業床などの高い場所での端には、柵等を付けます。

もし柵の設置が難しい場合は、安全帯を着用させなければなりません。

作業者も、安全帯を着用するようにと指示されたら、必ず守らなければなりません。

安全帯を着けると、行動が制限されるので嫌う人も多いのですが、安全帯は、高所作業者の最後の砦です。

胴ベルト型が主流ですが、最近はハーネス型というものも推奨されています。
全て命を守るためのものなのですから、必ず着けなければなりません。

もし作業床や囲いを設置できず、安全帯を取り付けるのに適切な場所がない場合、安全帯のフックを掛ける設備を置きます。
親綱などがこれに当たりますね。

親綱とは水平方向に張った、しっかりとしたロープです。
親綱の両端は、人一人を支えるくらいは丈夫なものに結び付けなければなりません。
建物の柱などがあればよいですが、柵を立てて支柱とする場合もあります。

墜落や転落事故は、本当に多く、多くの場合大怪我になります。

頻繁に高所を行き交う仕事をしていると、高さに慣れ、油断を産んでしまいがちです。

油断しても、落ちたら死んだり、怪我をします。

身を守るためには、それなりの対応が必要なのです。

作業床を設けたり、柵や囲いを設けるのは、手間がかかります。
安全帯を着けると、仕事がしづらくなったりします。

仕事を進めるだけということなら、省けるかもしれません。

しかし、省いてしまって、もしものことがあれば、払う代償は甚大です。

墜落・転落事故は、死亡者が多い。

これは、いつ誰の身にも起こり得ることなのですから、最重点対策としたいものですね。

まとめ。
【安衛則】

第518条
高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合は、足場などの作業床を設けなければならない。
第519条
高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。
第520条
労働者は、要求性墜落制止用器具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
第521条
高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合で、労働者に要求性墜落制止用器具等を使用させるときは、要求性墜落制止用器具等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。