○安衛法と仲良くなる高所作業・足場

最も多い事故。墜落・転落事故の防止。 その2

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高い場所で仕事をしていると、落ちて怪我をする危険と隣り合わせです。

高い所で作業をするならば、作業床を設けて作業する場所を確保すること。
作業床や開口部から落ちないように、柵や囲いを設けること。
作業者には安全帯(要求性墜落制止用器具)を着用させて、万が一に備えるなどの対策があります。

しかし作業床や柵、囲いを設けても、完全に転落を防ぐことはできません。
色々な条件、例えば、自然条件なども関係してくることがあります。

また墜落や転落の危険は、高所作業時だけでもないのです。

今回は、墜落・転落事故に関しての続きです。

【安衛則】

(悪天候時の作業禁止)
第522条
事業者は、高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合に
おいて、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の
実施について危険が予想されるときは、当該作業に
労働者を従事させてはならない。
(照度の保持)
第523条
事業者は、高さ2メートル以上の箇所で作業を行なうときは、
当該作業を安全に行なうため必要な照度を保持しなければならない。

高所で作業する場合の注意です。

2メートル以上の高さで作業は、悪天候の時は禁止です。

ただでさえ、落ちる危険のある作業です。
悪条件で作業を行うと、その危険性は何倍にもなりますよね。

悪天候とは何かというと、大雨、大雪、強風などです。

これら悪天候の定義については、別途まとめているので、参考にして頂ければと思います。
悪天候時にできること

台風の時に、足場での作業を行うなんて、正気ではありませんよね。

工期や期日が迫っていたりすると、休んでられないということはあるかもしれませんが、自殺行為です。

特に高所では、風がより強く吹きます。
地上でも体が持って行かれそうになるのですから、高所だとなおさらです。

悪天候時には、高所作業は絶対禁止なのです。

さらに、しっかりと作業床などを備えていても墜落事故を起こしやすいものとして、夕方や夜間の作業があります。

足元が見えないほど暗いとなると、気づかぬ内に作業床がないところを踏んでしまうかもしれません。
また、通路に何か物が置かれていたら、それにつまづくこともありますね。

暗い時の高所作業は、非常に危険なのです。

しかし、時として夜間しか仕事ができないこともあります。
また屋外だと、一日中暗いということもあります。

そのため、高さ2メートル以上の場所で作業する場合は、十分な照度を確保しましょう。

照度の確保の仕方は、照明を点けるなどが一般的です。
作業する手元を照らすことも大事ですが、作業床全体が見える状態にするのが大事です。

特に、コーナーや端、開口部はしっかり照らします。

暗い夜道をライト無しで運転すると怖いですよね。
明かりの乏しい高所作業はいわば暗い夜道なのです。

作業するのに十分な環境を整えて、作業することが、高所作業では求められるのです。

(スレート等の屋根上の危険の防止)
第524条
事業者は、スレート、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で
作業を行なう場合において、踏み抜きにより労働者に危険を
及ぼすおそれのあるときは、幅が30センチメートル以上の歩み板を
設け、防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための
措置を講じなければならない。
(不用のたて坑等における危険の防止)
第525条
事業者は、不用のたて坑、坑井又は40度以上の斜坑には、
坑口の閉そくその他墜落による労働者の危険を防止するための
設備を設けなければならない。

2 事業者は、不用の坑道又は坑内採掘跡には、さく、囲い
  その他通行しや断の設備を設けなければならない。

(昇降するための設備の設置等)
第526条
事業者は、高さ又は深さが1.5メートルをこえる箇所で作業を
行なうときは、当該作業に従事する労働者が安全に
昇降するための設備等を設けなければならない。
ただし、安全に昇降するための設備等を設けることが作業の
性質上著しく困難なときは、この限りでない。

2 前項の作業に従事する労働者は、同項本文の規定により
  安全に昇降するための設備等が設けられたときは、
  当該設備等を使用しなければならない。

高所作業では、足場を組んだ作業床以外にもあります。

建物の屋根での作業も、高所作業ですね。
ビルなどであれば屋上は平坦ですが、住宅や倉庫は決してよいとはいえません。

特に倉庫などの屋根は、スレートという軽くて薄い石が使われていることが多いです。
灰色の石っぽい波打っている屋根を見たことはないでしょうか?
あれがスレートです。

このスレートは雨風を凌ぐ程度であれば十分なのですが、人が上に乗る程丈夫ではありません。
体重をかけたら、簡単に踏み抜いてしまいます。

しかし、屋根の修理など、このように危ういスレート屋根の上で行う仕事もあるのです。

スレートは一箇所に圧力がかかると割れてしまいます。
靴で踏むのが、これに当たります。
そのまま歩くと、踏み抜いてしまうのです。

踏み抜かないためには、屋根の下の鉄骨はりの上を歩いて、支えるというのがあります。
しかし鉄骨はりがある場所も限られています。

一箇所に圧力をかけられないなら、圧力を分散すればよい。
そうすれば、踏み抜く危険性は和らげることができます。

このためにスレート屋根の上で、仕事する場合は、幅30センチ以上の歩み板というものを置き、屋根の上の移動には、この歩み板の上で行います。

この歩み板は、いわば橋のようなものです。
足を踏み外せば、落下するのですから、イメージがわきますね。

橋は幅広であればある程、動きやすいですが、あまり大きすぎるものを屋根まで上げるのは大変です。
そのためなるべくコンパクトにするほうが扱いやすいでしょうが、幅30センチは確保します。
幅30センチだと、ほとんどの人の足の幅よりは広い面積を確保できるというわけです。

歩み板は、スレート屋根だけではありません。
薄い木材の屋根など、踏み抜くおそれがある場合には、設置する必要があるので、ご注意下さい。

さて、墜落・転落は地上より高い場所のみ以外でもあります。
地表より引く場所、つまり地下のたて坑に落ちることもあります。

鉱山の仕事やトンネル工事は、地下を掘りますね。
作業場が地下何十メートル、何百メートルともなると、その場所に移動するまでが大変です。

垂直移動なのですから、落下の危険は隣り合わせなのです。

普段使用するたて坑は、人が行き交ったり、昇り降りする階段やエレベーターなどがあります。
つまり常に人の目があり、注意しあうことができます。

しかし、昔使っていたけど、今は使っていないたて坑などは、わざわざ埋め戻すころはありません。
人気がない坑なので、もしそこに人が近づき、落ちてしまったも、誰も気づきません。

このような事故は、地下の薄暗い中の通路なのですから、本人の不注意というだけでは片付けられません。

使っていないたて坑に近づいても墜落しないように、柵や囲いを設けて、落ちないための設備をもうけなければなりません。

またたて坑だけでなく、使用していない通路なども、迷いこむことを防ぐため、柵などで立入禁止措置をとるのがよいですね。

地下での作業は、暗く圧迫された空間なのですから、危険に近づかせないという設備が重要なのですね。

さて、地下でも地上でも、上下に移動する場合は、階段やハシゴなどでなければなりません。

足場などで横着をすると、組み立てている短管や手すりを使って登ろうとする人もいますが、足を滑らせれば、落ちてしまいますね。

高所の作業床などに移動するためには、昇降設備を設け、この昇降設備を使わねければなりません。
昇降設備は、高さ1.5メートル以上の場合に必要になります。

昇降設備とは、階段やハシゴです。
2メートル未満であれば、ハシゴでも構いませんが、それ以上の高さだと危険なので、階段を設けましょう。

1.5メートルの高さだと、よじ登ったり、飛び降りたりすることも可能そうですが、着地に失敗して足をくじくこともあるので、止めたほうがいいですね。

また、昇降設備は、作業床などだけではありませんので注意して下さい。
掘削作業で、1.5メートル以上深く掘った場合も、ハシゴなどを使う必要があるのです。

下が土だから、飛び降りても平気と油断していると、思わぬ怪我を招くこともあります。

また土止め支保工を行っている場合、土止め支保工のはりや腹起しを伝って昇り降りするのも目にしますが、これも止めましょう。
昇り降りの際に、はりを崩したりすると、土砂崩れをまねいてしまいかねません。

きちんとハシゴなどで昇り降りしましょう。

作業床などの設備をしっかり整えても、環境によって、墜落や転落する危険は残ります。

不用意な行動が、結果的に事故になることもあります。

墜落や転落は、こんな高さでは大丈夫だろう思っても、大怪我になることがあるのです。

特に昇り降りの時や作業床での移動の時も、油断しないのがいいですね。

【安衛則】

第522条
高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合に、強風、大雨、大雪等の悪天候の時は、作業さぜてはならない。
第523条
高さ2メートル以上の箇所で作業を行なうときは、必要な照度を保持しなければならない。
第524条
スレート等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、幅が30センチメートル以上の歩み板を設ける等の措置を講じなければならない。
第525条
不用のたて坑、坑井又は40度以上の斜坑には、坑口の閉そく等の設備を設けなければならない。
第526条
高さ又は深さが1.5メートルをこえる箇所では、昇降するための設備等を設けなければならない。