○安衛法と仲良くなる高所作業・足場

通路と足場 その3。軌道や架設など特殊な場所の通路。

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仕事で使う通路は、倉庫や屋内などだけではありません。
そのような比較的安全な場所での通路ばかりではなく、危険な場所で確保しなければならない通路もあります。

どのような場所かというと、軌道つまり線路や岸壁付近での通路です。

電車に接触したり、海や川に落ちたりと、足元の不安が生命の不安につながるような場所です。

このような場所では、通路いかに安全であるかが、何よりも大切です。

仕事は、仕事を行う行為だけでは成り立ちません。
仕事ができる環境や設備がしっかりしていないと、そもそも仕事どころではなくなるのです。

今回も安衛則の条文を見ていきます。

【安衛則】

(通路と交わる軌道)
第550条
事業者は、通路と交わる軌道で車両を使用するときは、
監視人を配置し、又は警鈴を鳴らす等適当な措置を
講じなければならない。

軌道とは、電車の線路やモノレールなどが走る道です。
仕事の種類によっては、運搬用にトロッコなどの軌道設備を備えることがあります。

軌道と通路が交差する場所では、監視人や警鈴などの、接触防止のための措置が必要になります。

踏切をイメージすると分かりやすいですよね。
電車が近づくと、踏切はカンカンと警鈴を鳴らし、遮断機が下りてきますね。

道路以外でも、踏切と同様の設備を設けなければなりません。

遮断機は今は数が多すぎて、自動になっていますが、昔は人力だったそうです。
仕事上では、自動化は義務付けられていませんが、相応の対応は必要なんですね。

(船舶と岸壁等との通行)
第551条
事業者は、労働者が船舶と岸壁又は船舶とその船舶に横づけと
なっている船舶との間を通行するときは、歩板、はしご等
適当な通行設備を設けなければならない。
ただし、安全な船側階段を備えたときは、この限りでない。

2 労働者は、前項の通行設備又は船側階段を
  使用しなければならない。

軌道の次は、船です。

船は水上にあります。岸壁から船に移動するのには、どんなに船が接岸していても、水の上を通過しなければなりません。

少し足を踏み外すと、そのまま水面に落下します。
船と陸との移動は、それだけリスクがあることなのです。

船舶と岸壁との行き来のためには、歩み板やハシゴなどなど、橋を掛けて通行しなければなりません。
必ずしっかりとした足場を確保しなければならないのです。

特に荷物の揚げ降ろしにおいては、荷物で足元が見えないこともありますので、しっかりとした通路が重要です。

大きな船では、船の横に階段がありますが、この階段を使用する場合は、橋は不要になります。

(架設通路)
第552条
事業者は、架設通路については、次に定めるところに
適合したものでなければ使用してはならない。

  1)丈夫な構造とすること。

  2)勾配は、30度以下とすること。
   ただし、階段を設けたもの又は高さが2メートル未満で
   丈夫な手掛を設けたものはこの限りでない。

  3)勾配が15度を越えるものには、踏桟その他の
   滑止めを設けること。

  4)墜落の危険のある箇所には、次に掲げる設備
  (丈夫な構造の設備であって、たわみが生ずるおそれがなく、
  かつ、著しい損傷、変形又は腐食がないものに限る。)を
  設けること。
  ただし、作業上やむを得ない場合は、必要な部分を限って
  臨時にこれを取りはずすことができる。

   イ 高さ85センチメートル以上の手すり又はこれと同等以上の機能を有する設備
     (以下「手すり等」という。)

   ロ 高さ35センチメートル以上50センチメートル以下の
     桟又はこれと同等以上の機能を有する設備
    (以下「中桟等」という。)

  5)たて坑内の架設通路でその長さが15メートル以上で
    あるものは、10メートル以内ごとに踊場を設けること。

  6)建設工事に使用する高さ8メートル以上の登り桟橋には、
   7メートル以内ごとに踊場を設けること。

2 前項第4号の規定は、作業の必要上臨時に手すり等又は中桟等を
  取り外す場合において、次の措置を講じたときは、適用しない。

  1)要求性墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備等を設け、
   かつ、労働者に要求性墜落制止用器具を使用させる措置
   又はこれと同等以上の効果を有する措置を講ずること。 

  2)前号の措置を講ずる箇所には、関係労働者以外の
   労働者を立ち入らせないこと。

3 事業者は、前項の規定により作業の必要上臨時に手すり等
  又は中桟等を取り外したときは、その必要がなくなった後、
  直ちにこれらの設備を原状に復さなければならない。

4 労働者は、第2項の場合において、要求性墜落制止用器具の使用を
  命じられたときは、これを使用しなければならない。

工場などでは、ずっと同じ場所に通路があります。
軌道があっても、固定され、廃止されない限り、ずっと残ります。

建設業などでは、仕事上、一時的な通路を作ることもあります。
特に谷あいだったり、仕事現場まで迂回するには遠回りだったりすると、道を作ってしまうほうが便利になることもあるのです。

一時的な通路には、地に足がついていない、空中に浮いた通路を作ることもあります。
空中に浮くと言っても、地面から足が伸び、地表から離れた位置という意味です。
このような通路を、架設通路といいます。

少し言葉遊びのようですが、「仮設」で「架設」通路を作ることがあるのです。
もちろん、常用する仮設でない、架設通路もあります。

一方で、足場を組んで作業床を設ける場合も同じような設備になります。

足場と架設通路は違うものなのでしょうか?

答えは違います。
なぜなら、目的が異なるからです。

足場、作業床は、仕事をする上で設けるものです。
架設通路は、目的地に移動するための通路です。

同じ材料、構造をしていたとしても、目的が異なるので、扱いも別になっているのです。
実際のところ、どちらも同じくらい、注意しなければなりませんけどね。

架設通路には、色々と基準があり、その基準に適合しなければなりません。

それらの基準は、細かく数字が出ていますので、その基準はクリアしなければなりません。

まず架設通路は、丈夫でなければなりません。

勾配は30度までとする。
ただし、高さ2メートル以内で、手すりがあれば、もっと急でも構いません。

勾配が15度を超える場合は、踏さんや滑り止めを設けます。
踏さんは、通路に横棒を打ち付けて、段差のない階段のようなものです。

架設通路は地表から離れた高い場所に設けられるので、常につきまとう危険は墜落です。

そのため、手すりや中さんなどで、墜落防止しなければならないのです。
手すりは85センチ以上、中さんは35センチ以上、50センチ以下と高さも決められています。

架設通路は、地上だけでなく、地中に設けられることもあります。

たて坑などがその例ですが、地下に垂直に穴を掘るような現場です。

地下のトンネル工事などでは、たて坑が作られ、たて坑内での架設通路も作られるのです。

たて坑では、すべての場所を自由に行き来できるわけではありません。
スペースも十分ではありませんし、機械に接触したり、土砂崩れなどの危険な場所もあります。

そのため、作業者が行き交う通路は制限されます。
作業者が安全に行き交う通路として、架設通路も設けられるのです。

しかし狭い場所で、すれ違う道幅がとれないこともあります。
ましてや材料や道具を持っていたら、さらに圧迫されます。

たて坑などで、安全に通行できるようにするため、長さが15メートル以上ある場合では、10メートル以内ごとに踊りを設けます。

踊り場は多少広いので、前の通路から歩いてきている人がいれば待機したり、踊り場ですれ違えますね。

十分に架設通路を設けるスペースがあり、深さも数百メートルもない場合は、登りさん橋という設備を設けたりします。 これは、段差のない階段のようなもので、滑り止めに踏さんや滑り止めを設けます。
勾配は30度未満ですね。

登りさん橋を設ける場合も、途中で踊り場を設けます。
高さが8メートル以上の場合、7メートル以内ごとに踊り場を設けます。

踊り場で、通路の向きを折り返すことで、つづら折りの道ができるわけですね。

架設通路は、作業場までの導線ですから、安全に通行できるものでなければならないのです。

平成27年7月法改正部分について、追記です。

条文中の赤字が、追加部分です。また取り消し線がある箇所が、今回削除された箇所です。
まず1項では、作業場やむを得ず、臨時に墜落防止設備を取り外すのも禁止となりました。
一時的に取り外している時に、墜落するという事故が多かったということが背景にあります。
これにともないイの85センチ以上の手すりに加え、同等の機能を有するものの設置も認められるようになりました。
どうしても手すりが邪魔で作業にならない場合、取り外す代わりに別の設備を置きなさいということですね。
はてさて、別の設備とはいえ、具体的にどんなものがあるのでしょうか?
仮設材屋さんのホームページなど調べてみたのですが、これといったものが、なさそうです。(本当はあるのかもしれませんけど)
おそらく、親綱、三角枠などでしょうか。
確実に重視されるのは、体がもたれ掛かっても大丈夫なように、強い構造のものでなければなりません。
2項から4項が、新たに追加された条文です。
原則として、臨時でも墜落防止設備を取り外していけません。
しかし、作業上外さねばならず、他の措置も難しい場合の対応についてです。
臨時に手すり等を外す場合は、安全帯(要求性墜落制止用器具)が掛けられる設備を設けます。
さらに、関係者以外は手すり等が外されている場所に、立ち入らせません。
そして取り外して作業する要件が終わったら、すぐに復旧しなければなりません。
これらの徹底が新しく追加されている内容です。
当然、作業者は安全帯を使用しなければなりませんよ。
安全帯を掛ける設備とは、主に親綱などになります。
これは1項のイにも通じるかもしれませんね。
高所では、守られていない状態が危ないのです。
一時的にとはいえ、実際に手すりを外した少しの時間に墜落したという事故が多発したことを受けてのことです。
どうしても、手すりを外すことが必要な作業もあるでしょう。
その場合は、親綱設置などの手順を確認し、徹底しましょう。

(軌道を設けた坑道等の回避所)
第553条
事業者は、軌道を設けた坑道、ずい道、橋梁等を労働者が
通行するときは、適当な間隔ごとに回避所を
設けなければならない。
ただし、軌道のそばに相当の余地があって、当該軌道を
運行する車両に接触する危険のないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、建設中のずい道等については、適用しない。

軌道と接する通路の場合の注意です。

トンネルや橋の上などで、資材は人の運搬のために軌道を敷き、貨物車を走らせたりすることがあります。

人が歩く通路や作業場から離れていればいいのですが、場所によっては、すぐ近くを貨物車が走り、共存しなければならないこともあるのです。

そのような場合は、回避所を設けて、接触しないようなスペースを作らなければなりません。

(軌道内等の作業における監視の措置)
第554条
事業者は、軌道上又は軌道に近接した場所で作業を行なうときは、
労働者と当該軌道を運行する車両とが接触する危険を防止するため、
監視装置を設置し又は監視人を配置しなければならない。

これも軌道近くで、接触防止のための措置ですね。

軌道近くで仕事をしていたら、本人は作業に気を取られて、貨物車などが近づくのに気づかないこともあります。
もし気づかないままだと、接触して危ないですよね。

軌道に近接した場所で作業を行う場合は、接触防止のため、監視人や監視装置を設けなければならないのです。

作業者も貨物車が近づいた時には、手を止め、通過するのを待つなどが必要ですね。

(保線作業等における照度の保持)
第555条
事業者は、軌道の保線の作業又は軌道を運行する車両の入れ換え、
連結若しくは解放の作業を行なうときは、当該作業を安全に
行なうため必要な照度を保持しなければならない。

この3条は、軌道についての規定ですね。
軌道で貨物車などを走らせる場合、必要に応じて、保守メンテが必要になります。

軌道自体の保守もありますが、走らせる貨物車などを連結して増やしたり、車両を入替えたりすることもあります。

軌道設備の保守などを行う場合は、十分な照度、つまり明るさを確保しなければなりません。

手元が明るくなければならない作業なのですから、照明などが必要になりますね。

軌道や船舶、架設通路など、必ずしも安全ではない場所での通路は、十分な対策が必要になります。

そのための設備はただ作るだけでなく、日常的な保守も大切ですね。

まとめ。

【安衛則】

第550条
通路と交わる軌道で車両を使用するときは、監視人、警鈴等の講じなければならない。
第551条
労働者が船舶と岸壁、船舶の横を通行する等の時は、通行設備を設けなければならない。
第552条
架設通路に構造、勾配、手すり等の適切な措置をとらなければならない。
第553条
軌道を設けた坑道、ずい道、橋梁等を通行するときは、適当な間隔ごとに回避所を設けなければならない。
第554条
軌道上又は軌道に近接した場所で作業を行なうときは、監視装置を設置し又は監視人を配置しなければならない。
第555条
軌道の保線の作業又は軌道を運行する車両の入れ換え等の作業を行なうときは、必要な照度を保持しなければならない。