崩壊・倒壊○事故事例アーカイブ

解体工事現場で、足場が宙吊りになる事故

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足場の作業は、墜落・転落の危険と隣り合わせです。

しかし、危険はそれだけではありません。
足場という設備そのものの危険とも隣り合っているのです。

足場の設備としての危険。
それは一体何でしょうか?

設備とは人が利用する建物や機械です。
足場設備は簡易な建物ともいえます。

建物の宿命は、一度作られたものは、いつか壊れることです。
当然、建てられた足場は、用が終わると、取り壊されます。

作業計画に則って、取り壊されるのは、危険ではありません。
作業者は、そのことを分かっているのですから。

しかし、意図せず、壊れるとなると、これは危険ですし、怖いです。

設備の宿命上、絶対にということはありません。

様々な条件によっては、意図せず、壊れてしまうこともあるのです。

今回は、そのような事故事例を取り上げ、原因と対策を検討してみたいと思います。

この事故は、年末大晦日に、足場が崩れてしまったという事故です。

解体工事現場で足場が宙づりに 北九州市
(平成26年12月31日)

31日午前、福岡県北九州市の建物の解体工事現場で足場が崩れかかっているのが見つかり、付近の道路が通行止めとなった。

31日午前10時過ぎ、北九州市八幡東区平野にある7階建ての社宅の解体工事現場で、金属製の足場が幅10メートルにわたって崩れかかり、宙づりとなっているのが見つかった。強風にあおられたものとみられている。

足場が近くの道路に落下する恐れがあり、付近を通行止めにして撤去作業が行われた。

日テレ24

この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「仮設物」です。

幸いなことに、年末年始の休暇中で、作業は行っておらず、この事故で巻き込まれた作業者はおらず、歩行者などにも怪我人はいませんでした。

最初この記事を読んで、足場が宙吊りにというのは、どういう状況なのか想像がつきませんでした。

この事故現場の写真を見たところ、足場の途中でボッキリと折れてしまい、上部が外側に倒れこんでいる状態でした。

なるほど、確かに宙吊りになっています。

付近にいた人は、いつ落ちてくるのかとヒヤヒヤされたことでしょう。

この事故は、強風にあおられたことが原因のようです。

足場の外側、つまり道路側は、メッシュシートで覆われています。
このメッシュシートは、材料や工具を落として、歩行者などに当たらないようにするためのものです。

また防風性もあります。
外からの風を防ぐことができるのです。

高いところほど風が強いのは、何となく分かるかもしれませんね。
高所作業中に風にあおられるというのは、墜落を招きかねないので、防風は重要なのです。

作業中、メッシュシートは作業者を守ります。

しかし、風の向きが変わり、内部に吹き込んできたら、その力は内から外に押し出すものになるのです。

おそらく、建物とメッシュシートと隙間、もしくは解体している建物側から、風が吹き込んできたものと思われます。

足場を組み立てる際は、倒れないように建物と接続するために、「壁つなぎ」を付けます。

壁つなぎは、建物の壁にアンカーボルトを打ち込み、ネジ止めでがっちり固めます。
これをいくつもつなげて、固定するのです。
しっかり固定していれば、ちょっとやそっとの風で外れることはありません。

もしかすると、この崩壊した足場では、建物の解体作業ということもあり、壁つなぎが緩んでいたのかもしれません。

これらのことを踏まえて、原因を推測してみます。

1.足場の内部に強風が吹き込んだこと。
2.壁つなぎの接続が緩んでいたこと。
3.年末の休暇前の点検が入念に行われていなかったこと。

この工事は建物の解体工事であり、建物は足場がない側が取り壊され、吹きさらしになっていました。
解体作業のため、風通しがよくなり、足場の中に風が吹き込みやすくなっていたのではないでしょうか。

また解体により、壁にもヒビが入り、壁に接続しているボルトの穴が大きくなっていたのかもしれません。

いずれも記事からの推測ですが、上部が折れ曲がるほどですので、風の力も侮れません。

対策を検討してみます。

1.休暇前は、接続や壁つなぎなどを、入念に確認する。
2.解体し、もろくなることを想定して、壁つなぎの数を増やす。

街中で足場は珍しくありません。
歩いていると、気にもとめないかもしれませんが、あちこちにあります。

いつの間にか作られていて、取り壊されているものです。

しかし、このように折れ曲がって、吊り下がっている状態であれば、道を歩く人にとって怖いこと、この上なしです。

足場を組む業者は、このような事故が起こらないように、十分な対応をしなければなりません。
もし崩れ落ち、人を巻き込んでしまうようならば、大事故になることは間違いありません。

日常点検もですが、長期休暇になる前は、作業場の安全確保を確実にしましょう。

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