厚生労働省労働局長登録教習機関
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高所からの墜落事故は、跡を絶ちません。
屋外であれば、ビルの外壁工事や橋の作業、屋内であれば、天井付近の作業など、至るところで行われる高所作業は、常に墜落・転落の危険と隣り合わせなのです。
高所作業では、足場を組み、作業床を設けることが義務付けられています。
本来なら期間に関係なく、高所で作業するには、足場は必要です。
しかし、一時的に、ほんの短い時間作業する場合などでは、足場を組むほうが時間がかかることもあります。
また足場を組めるほどスペースが無いという場合もあります。
では、そのような場合は、何の対策もなしでもOKかというと、そうではありません。
やはり墜落・転落防止のための備えはしなければなりません。
対策としては、安全帯の着用などがあります。
墜落・転落による死者は、最も多いので、その対策もあれこれ検討され、勧められていますが、まだまだ事故は多いです。
先日も、高所より墜落し、死亡するという事故がありました。
今回は、この事故を事例として取り上げ、原因の推測と対策を検討してみたいと思います。
ネット取り外し中の作業員が転落死 大阪市住吉区の中学グラウンド
(平成27年1月9日)
9日午前8時15分ごろ、大阪市住吉区の中学グラウンドで、柱に取り付けられたネットを取り外す作業をしていた男性が転落したと119番があった。 50代ぐらいの男性が病院に搬送され、死亡が確認された。 住吉署によると、男性は高さ約8メートルの柱に登って作業をしていた。 |
この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「構造物(ネット用柱)」です。
よくグラウンドにはネットが張られていますね。
ネットは柱と柱の間に張られているのですが、このネットを取替え作業をしているときに起こってしまった事故でした。
8メートルの高さから転落し、そのまま亡くなられました。
8メートルですから、マンションで言うと、4階か5階くらいの高さからでしょうか。
そう考えると、どれほどの高さから落ちたのか、生々しくイメージできますね。
マンションやビルの屋上からなど、高いところから下を見ると、その高さに震えます。
プールで飛び込み台から飛ぶというのも、なかなか勇気のいることです。
人は平素では、高さと体に受けるダメージを我が身に降りかかる恐怖として認識することができます。
しかし、これは仕事などになると、少し変わってしまいます。
どうも落ちたら危ないという思いよりも、仕事を行うことのが優先されるようです。
この亡くなられた被災者が、どのような墜落防止対策を行っていたのかは分かりません。
しかし結果から見ると、十分に対策されていなかったことは明白です。
まず、足場は組まれてなかったのでしょう。
これは1本の柱のネットを取り替える時間は短時間であること、柱は何本もあり移動しなければならなかったことなどから、設置しないことにしたのでしょう。
移動する足場としては、ローリングタワーというものがあるのですが、これも作られていなかったようです。
では次に、安全帯を着用していたかということがあります。
しかし転落事故に至ったのですから、着用していなかった、または着用していたものの、使っていなかったということが考えられます。
もしかしたら掛けるのに適したところがなかったのかもしれません。
しかし安全帯は、墜落防止の最後の砦です。
掛ける場所がなければ、別途掛けられる場所を仮設するなどの対策は必要でした。
何も墜落対策がなく、柱に上り作業する。
どのように上っていたかは不明ですが、ハシゴなどでは、不安定な状態で仕事をしていたと思われます。
さて、これらのことを踏まえて、原因を推測してみます。
1.2メートル以上の高所作業だが、作業床を設けていなかったこと。
2.安全帯を掛けられる設備がなかったこと。
3.安全帯を着用していなかった、もしくはフックをかけていなかったこと。
4.作業方法について、事前に検討されていなかったこと。
柱にハシゴもしくはよじ登って作業していたところ、墜落したのでは推測されるのですが、その場合、重要なのは、繰り返しになりますが、安全帯です。
安全帯は、腰に巻くタイプが一般的です。
最近では、ハーネス型というものも推進されていますね。
この安全帯は、墜落を防止するものではありません。
安全帯を着けたからといって、墜落を防げるかというとはありません。この点は誤解しないでくださいね。
何のために着けるのかというと、もし墜落しても、地面に落下、激突を防ぐ命綱のためです。
落ちるのは落ちるのです。
ただ地面に到達する前に、支えるものなのです。
しかし、安全帯を着用すると、動きが制限される感じがいて、これを嫌う人が多いです。
そのため、腰に巻いているけども、フックは掛けないということも、時々見受けられます。
これは全く意味がありません。
安全帯はアクセサリーではありません。
一応、着けているよとアピールすためのものではありません。
きちんとフックを掛けないと意味が無いのです。
ベテランに多い傾向ですが、慣れている作業だから、平気だという心理も少なからずあったのかもしれません。
もし安全帯を正しく着用していたら、防げたかもしれない事故だったかもしれないのです。
では、対策を検討してみます。
1.作業床が設け等得る場合は、足場を組み作業床を設置する。
2.高所作業車を使用する。
3.安全帯が掛けられる設備を設ける。
4.安全帯の着用を徹底する。
5.安全に作業するよう計画を立て、徹底する。
安全に作業を進めるには、事前に作業方法や手順、安全対策を取り決め、徹底することが重要です。
慣れている作業でも、事故がないとは限りません。
何度も柱に登って、ネット換えはやってるから、安全帯なんて必要がないとは言わせてはならないのです。
事故を起こした人は、まさか自分の身に起こるとはと思うはずです。
そして、きちんと対策しておけばと後悔もあるでしょう。
どんなに慣れている作業でも、危険作業をなめてはいけません。
高所で作業する場合には、足場などの作業床に安全帯。
この徹底だけでも、墜落事故にあう確率は減るはずです。