厚生労働省労働局長登録教習機関
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高い電圧は、身近な機械には使えません。
電圧が高いほど、たくさんの電気が流れ、機械が故障してしまいます。
家庭や仕事で使う場合には、高くとも100ボルトや200ボルトまでが多いでしょう。
手元で取り扱うには、それくらいの電圧でも十分です。
電圧は水圧に例えられます。
水圧が高ければ、高いほど遠くまで水を運ぶことができます。
ポンプで圧力をかけてやると、ちょっとした山の上まで水を運ぶこともできるのです。
電気も圧力を高くすると、遠くまで運ぶことができます。
発電所から、何十キロも遠くの家庭や会社まで、電気を届けるとなると、相当の電圧が必要になります。
電圧の区分で、直流・交流ともに7000ボルトを越えるものは、特別高圧といいます。
7000ボルトを越えるのですから、中には1万ボルト、2万ボルトといった電圧もあります。
これほど高い電圧ですから、人の手に触れるところにはありません。
主に通っている場所は、鉄塔と鉄塔の間に張られた電線です。
特別高圧は、数字を見るだけでも、とてつもなく大きな電圧です。
当然、触れたら一瞬で死に至ります。
そもそも触れるところか、接近するだけでも感電します。
特別高圧の電線や設備や、電気を遠くまで届けるために必要です。
しかし同時に、とてつもなく危険でもあるのです。
特別高圧を直接取り扱うのは、電力会社など限られているでしょうが、時として鉄塔側で作業を行うということもあります。
特別高圧を取り扱いは、安衛則で取り決められています。
【安衛則】
特別高圧が通る電線などは、まず直接触ることはできません。
手の触れる距離に近づくことも、危険です。
電線や設備の取替や修理などは、電気を止めて行うことが原則です。
しかし電気の流れを止めてしまっては、需要している家庭や事業所に影響が出ます。
時として、電気が通った状態で点検や整備を行う必要もあります。
特別高圧の電線やがいしの点検や修理、清掃を電気が通った状態で行う場合は、活線作業用器具を使い、一定の距離を保って、作業を行います。
活線作業用器具は、カーボンや竹など絶縁性のものなので、電気を通しません。
これで該当部に触れたりするのです。
活線作業用器具には、幾つもの種類があります。
先端に鏡がついているものや、フックになって引っ掛けたりするもの、中にはマジックハンドになっているようなものもあります。
これらを駆使して、作業を行います。
高い電圧になると、直接触れていなくとも、近づくだけで、人体に電気が流れます。
これを誘電といいます。
誘電を防ぐためには、電圧ごとに一定の距離を保つ必要があります。
安衛則では、電圧区分ごとに距離が定められていますが、電力会社ではこれよりも離れた距離を推奨しています。
電力会社では、高圧の6600ボルト以下では、2メートル以上離れ、特別高圧の3万ボルト以下は、3メートル以上離れることを推奨しています。
これよりも高い電圧になると、さらに離れる必要があります。
距離が離れると、作業がしづらくなるのは確かです。
しかしより安全に作業を行うためには、電力会社の推奨に従う方がよさそうです。
作業中に、目測だけで距離を保つのは困難です。
そのため、電線から3メートルの位置にロープを張るなどして、接近限界が分かるようにすると、作業者も分かりやすくなりますね。
さて、活線作業用器具を使用しない場合は、活線作業用装置を使います。
活線作業用装置とは、遠隔で操作する機械などです。
人は直接近づかないので、安全距離は保てますが、場合によっては装置に電気が通り、人体に達することもあるので、取り扱いには注意が必要です。
特別高圧の作業では、絶縁用防具や保護具は、全く役に立ちません。
必ず活線作業用器具などを使用しましょう。
(特別高圧活線近接作業) 第345条 事業者は、電路又はその支持物(特別高圧の充電電路の支持がいしを 除く。)の点検、修理、塗装、清掃等の電気工事の作業を行なう 場合において、当該作業に従事する労働者が特別高圧の充電電路に 接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、 次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。 1)労働者に活線作業用装置を使用させること。 2)身体等について、前条第1項第1号に定める充電電路に 2 労働者は、前項の作業において、活線作業用装置の使用を |
特別高圧の電線に対して作業を行わなくとも、鉄塔などの点検や補修作業を行う場合についてです。
電線に直接触らないものの、近づく可能性はあります。
しかも可能性は、非常に高いのです。
特別高圧の近接作業を行う場合は、活線作業装置を使用するか、必要な距離を保って作業を行います。
必要な距離は、前の条文の距離になります。
必要な距離、つまり近接限界距離は、作業者にわかりやすくするため、ロープを張ったり、標識をつけたり、また監視者を付けるなどの対策を取ります。
電線の近接作業としては、電線の近くでクレーン作業を行うなども考えられます。
その場合も、必要な距離を保たなければなりません。
電線付近のクレーン作業については、別の記事でも書いていますので、ご参考にして頂ければと思います。
特別高圧の電線や設備は、触らない、近づかないが最も重要な事です。
近づくだけで、感電してしまいます。
近づくだけで、ビリっと来るのは恋だけでよいのです。
普通の生活で、特別高圧に触れることはないでしょう。
とはいえ今後、発電と送電が分社化、自由化に向けた動きがあります。
電力会社の社員以外でも、特別高圧を取り扱う、近づく機会も増えるかもしれません。
もしそうなった時、最も大事なことは、直接触れない、近づき過ぎないということを覚えておくといいですね。
まとめ。
【安衛則】
第344条 特別高圧の充電電路又はその支持がいしの点検、修理、清掃等の電気工事の作業を行なう場合においては、必要な離隔を取り、活線用器具等を使用しなければならない。 |
第345条 特別高圧の電路又はその支持物の点検、修理、塗装、清掃等の作業を行なう場合において、活線用装置の使用、離隔を取るなどの措置をとらなければならない。 |