○安衛法と仲良くなる感電

感電防止 その8。 電気工事の管理体制と点検。

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感電は静電気や弱い電流で、ビリっと来るくらいなら、さほど体に大きなダメージはありません。
せいぜい、痛みを感じる程度です。

しかし、もっと多大な電流が体に流れると、強い痛みを感じます。
さらに心臓に電流が流れると、死亡してしまいます。

電気と取り扱う時は、十分な注意が必要なのはもちろんのこと、しっかりとした管理体制も必要なのです。

電気を取り扱う時は、1人に任せるのではいけません。
作業する人と全体を見渡せる人が必要になります。

電気工事を行うにあたっての管理体制についても、安衛則で規定されています。

【安衛則】

第5節 管理

(電気工事の作業を行なう場合の作業指揮等)
第350条
事業者は、第339条、第341条第1項、第342条第1項、第344条、
第1項又は第345条第1項の作業を行なうときは、当該作業に
従事する労働者に対し、作業を行なう期間、作業の内容
並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について
周知させ、かつ、作業の指揮者を定めて、その者に
次の事項を行なわせなければならない。

  1)労働者にあらかじめ作業の方法及び順序を周知させ、
   かつ、作業を直接指揮すること。

  2)第345条第1項の作業を同項第2号の措置を講じて
   行なうときは、標識等の設置又は監視人の配置の
   状態を確認した後に作業の着手を指示すること。

  3)電路を開路して作業を行なうときは、当該電路の
   停電の状態及び開路に用いた開閉器の施錠、通電禁止に
   関する所要事項の表示又は監視人の配置の状態並びに
   電路を開路した後における短絡接地器具の取付けの
   状態を確認した後に作業の着手を指示すること。

停電作業や活線を取り扱う電気工事を行う場合には、作業指揮者を指名し、指揮させなければなりません。

作業指揮者を必要とする作業は、停電作業、高圧活線作業、特別高圧で活線作業用器具を用いる作業、特別高圧で活線作業用装置を用いるといったものです。
停電は、低圧でも作業指揮者が必要になります。

作業指揮者は、作業者全員に作業内容や手順、作業期間を伝え、直接指揮をとらなければなりません。

特別高圧の近接作業を行う場合は、標識や監視人の配置などを行った上で、作業を行わせなければなりません。
準備ができていないのに、作業を開始しようとしたら、止めなければならいいのです。

停電作業を行う場合は、停電後、第三者が知らずにスイッチを入れないようにする必要があります。
方法としては、スイッチに鍵を付ける、停電作業中を示す表示をつける、監視人を置くなどの方法です。
また停電後は、確実に短絡接地し、残留電気がないことを確認します。

これらの対応を行ってから、作業を行わせるようにしなければならないのです。

どうしても、1人作業となるので、チェック漏れも起こってしまいます。
作業指揮者は、作業者の安全を守るために、しっかりとチェック、監督を行う必要があります。

さて、電気工事では、対感電のための様々な道具を使います。
これらが破損していたりすると、命に関わります。

そのまえ、道具の点検が大切です。

(絶縁用保護具等の定期自主検査)
第351条
事業者は、第348条第1項各号に掲げる絶縁用保護具等
(同項第5号に掲げるものにあっては、交流で300ボルトを
超える低圧の充電電路に対して用いられるものに限る。
以下この条において同じ。)については、6月以内ごとに1回、
定期に、その絶縁性能について自主検査を行わなければならない。
ただし、6月を超える期間使用しない絶縁用保護具等の
当該使用しない期間においては、この限りでない。

2 事業者は、前項ただし書の絶縁用保護具等については、
  その使用を再び開始する際に、その絶縁性能について
  自主検査を行なわなければならない。

3 事業者は、第1項又は第2項の自主検査の結果、
  当該絶縁用保護具等に異常を認めたときは、補修その他
  必要な措置を講じた後でなければ、これらを使用してはならない。

4 事業者は、第1項又は第2項の自主検査を行ったときは、
  次の事項を記録し、これを3年間保存しなければならない。

  1)検査年月日

  2)検査方法

  3)検査箇所

  4)検査の結果

  5)検査を実施した者の氏名

  6)検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容

絶縁用保護具は、身につけて感電を防ぐものです。

電気はほんの小さな穴、針の穴程度であっても、その穴から電気が流れてきます。
ヒビや破れなどがあると、もはや保護具の意味をなさなくなるのです。

常に万全の状態で電気を遮断させるためには、傷ひとつない状態を保つことです。

絶縁用保護具は、6ヶ月に1度は点検を行い、もし破損箇所などがあれば補修や取替を行わなければなりません。

わずかな傷が、文字通り命取りになります。
点検は必ず行いましょう。

点検を行ったら、結果を3年間は保管しなければなりません。

(電気機械器具等の使用前点検等)
第352条
事業者は、次の表の上欄に掲げる電気機械器具等を使用するときは、
その日の使用を開始する前に当該電気機械器具等の種別に応じ、
それぞれ同表の下欄に掲げる点検事項について点検し、
異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り換えなければならない。

電気機械器具等の種別 点検事項
第331条の溶接棒等ホルダー 絶縁防護部分及びホルダー用ケーブルの接続部の
損傷の有無
第332条の交流アーク溶接機用自動電撃防止装置 作動状態
第333条第1項の感電防止用漏電しや断装置 作動状態
第333条の電動機械器具で、同条第2項に定める
方法により接地をしたもの
接地線の切断、接地極の浮上がり等の異常の有無
第337条の移動電線及びこれに附属する接続器具 被覆又は外装の損傷の有無
第339条第1項第3号の検電器具 検電性能
第339条第1項第3号の短絡接地器具 取付金具及び接地導線の損傷の有無
第341条から第343条までの絶縁用保護具 ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態
第341条及び第342条の絶縁用防具 ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態
第341条及び第343条から第345条までの活線作業用装置 ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態
第341条、第343条及び第344条の活線作業用器具 ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態
第346条及び第347条の絶縁用保護具及び活線作業用器具
並びに第347条の絶縁用防具
ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態
第349条第3号及び第570条第1項第6号の絶縁用防護具 ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態

絶縁用保護具などを定期的に点検していても、いつ破損するかは分かりません。

つい先日点検したばかりなのに、破損しているということもあり得ます。
これは電気機器についても同様ですね。

電気機器や絶縁用保護具、活線作業用器具などの電気工事に使用する道具は、作業前に異常がないかを点検します。
もし異常箇所があれば、使用しないか、補修してから使用します。

ケーブルなどであれば絶縁被覆の状態、絶縁用保護具であれば破損の状態などをチェックします。

もし破損状態をそのままにして使用すると、そこから電気が漏れだし、感電します。

機械と同様、作業前の点検が、作業時の安全を保つことになるのです。

(電気機械器具の囲い等の点検等)
第353条
事業者は、第329条の囲い及び絶縁覆いについて、
毎月1回以上、その損傷の有無を点検し、異常を
認めたときは、直ちに補修しなければならない。

電気機器の充電部分には、作業中に接触しないよう、覆いや囲いを設けなけばなりません。
この覆いなどは、作業期間中はずっと置いておき、外してはいけません。

囲いや覆いは月に1回以上は、取り外されていないかや破損状態などの点検を行います。

点検の結果、異常があれば、すぐに補修を行います。

点検や補修は、感電事故から身を守るために大切なことなので、必ず行いましょう。

第6節 雑則

(適用除外)
第354条
この章の規定は、電気機械器具、配線又は移動電線で、
対地電圧が50ボルト以下であるものについては、適用しない。

さて、最後に電気に関しての規則は様々ありますが、適用されるのは50ボルトを越える電圧になります。
つまり50ボルト以下の電圧のものでは、絶縁用保護具などの対策は適用されません。

しかし、50ボルトを侮ってはいけません。
42ボルトは「死に」ボルトという言葉があるそうです。
心臓を直撃してしまうと、50ボルト以下であっても、死に至ることはあります。

条文の適用はありませんが、電圧の大小に関わりなく、十分な対策をとることが重要ですね。

まとめ。

【安衛則】

第350条
停電作業を行う場合、作業を行なう期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めなければならない。
第351条
絶縁用保護具等は、6月以内ごとに1回自主検査を行わなければならない。
第352条
電気機械器具等を使用するときはその日の使用を開始する前に点検し、異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り換えなければならない。
第353条
電気部の囲い及び絶縁覆いについて、毎月1回以上、その損傷の有無を点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。
第354条
電気機械器具、配線又は移動電線で、対地電圧が50ボルト以下であるものについては、全ての条文は適用しない。