○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、落ち来るナットにコツンとされる。そしてその後・・・

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

犬尾沢や猫井川たちは、今日は足場を組立にきていました。

出来上がったコンクリートの壁に沿って、作業するための足場を組んでいきます。

作業を行うのは、犬尾沢をリーダーとして、猫井川と保楠田、そしてエスパニョール鼠川です。

作業前には、犬尾沢が全員を集めて、ミーティングを行います。

「コンクリートの壁の沿って、足場を組んでいくけども、高さもそれほどないので、今日中には終わらせていきたいと思う。

 手すりとかは当たり前だけども、中さんとか、幅木も忘れずに取付行って下さい。

 ひとまず、ここに部材別にまとめてから、組んでいきましょう。」

そう言うと、各人は作業を開始しました。

車は壁際まで入り込むことができなかった関係上、少し離れた場所に置かなければならなかったので、部材は手で運んでこなければなりませんでした。

犬尾沢、保楠田、猫井川、鼠川とそれぞれが、鉄パイプや作業床、角材などを肩に載せて、運んでいきます。

組み立てる場所では、鉄パイプを長さごとにまとめ、作業床や角材もそれぞれまとめていきました。

「坂道を運ぶのはきつい。」

鼠川は、何度も往復してると、さすがにふぅふぅと疲れた様子でした。

「わしの分も猫井川、しっかり運んでくれ。」

「いや、がんばってくださいよ。」

そんなやり取りをしながら、どんどん運び、やがて全ての部材を運び終えました。

「それじゃ、組んでいきましょう。」

足元を固め、支柱をたて、水平のパイプを掛けて、組み上げていきます。

猫井川も何度も、同じような仕事をしてきたので、今では軽々とパイプを運び上げ、組んでいけるようになりました。

そのため、1層目の床が組み上がってからは、犬尾沢と猫井川が登り、組作業を行っていくのでした。
保楠田と鼠川は、地上で材料を渡す作業になりました。

「鼠川さん、そのボルトとかナットを下さい。」

猫井川は、ロープの付いた袋を地上に下ろし、鼠川に材料を指示します。

「よし。入れたから上げてくれ。」

鼠川は、猫井川に言われた材料を袋に入れていきます。

「次は、1メートルのパイプをお願いします。」

「おう。ロープを下ろせ。結ぶからな。」

猫井川がロープを下ろすと、鼠川は1メートルのパイプにロープを掛け、落ちないようにしっかり縛り上げます。

「いいぞ。上げてくれ。」

そういうと、猫井川はするすると持ち上げていきました。
しかし猫井川は、ロープを中さんと幅木の間から垂らしていました。
そういう状態なので、いざ持ち上がってから、パイプを引き入れようとしたら、あちこちにぶつかってしまうのでした。

「ああ、失敗したな。とりあえず幅木を外すか。」

左手でパイプを持ちながら、幅木を取り外しました。
少しだけ空いたスペースにパイプを滑りこませます。

「よし、あと1本パイプが必要だな。
 と、その前に工具を取りに行くか。」

足りない工具に気付いた猫井川は、材料をひとまずその場に置き、幅木も元に戻さず、階下に降りて行きました。

「どうした?猫井川。」

「ええ、スパナを取りに。
 少し待ってて下さい。」

そういうと、車の工具箱まで、走って行くのでした。

工具を持ち、足場のところまで戻ってきたところ、猫井川のヘルメットに何かコツンと当たりました。

「ん?何だ?」

周辺を見渡してみると、足元にナットが落ちています。

「あれ?なんでだろう?」

妙に思って、腰を折り、ナットを手にしたところ、

「猫井川!危ない!」

鼠川の大きな声が聞こえました。

その声にビクッとして、体は硬直しました。

すると、

ザク!

腰を曲げた先にある頭から、ほんの1メートル先に、鉄パイプが降ってきて、地上に刺さったのでした。

刺さった鉄パイプを目の前にして、猫井川は思います
。 もしあと1メートル後ろにいたら、きっと。

ゾワッとした汗が吹き出し、急に体温が下がります。

「大丈夫か?猫井川。
 でも、なんでパイプが降ってきたんだ。」

近づいてきた鼠川が、声をかけながら、上を見上げると、そこには幅木が外された作業床がありました。

「猫井川!さっき幅木を外して、そのままにしてたな。
 そんなことしてたら、転がって落ちてくるだろう!」

そう言うと、猫井川のヘルメットにコツンとげんこつを当てるのでした。

「ほんの少しずれててよかったな。手すりとか幅木とか、取り外したらすぐに戻さないとダメだぞ。」

半ば呆れたような、半ばほっとしたような、鼠川の説教はそんな言い方です。

「はい。かなり血の気が引きました。」

命の危険を感じた猫井川が、顔面蒼白になっていました。

「さっきのはやばかった。。。」

そんなことを呟きながら、階上にあがり、何よりもまず行ったのは、幅木の取付なのでした。

今回も頭上注意のヒヤリハットですね。

猫井川は、今回のことについて相当肝を冷やしたようです。
そりゃそうですね。鉄パイプが頭の上に、しかも立って落ちてきたら、下手をすると刺さってしまいます。

命の危険を感じたのも無理はありません。

ほんの少しの油断が、思いもよらぬ命の危機を招くのだなと、痛感させるものだった思われます。

今回の猫井川のヒヤリハットのように、足場作業など上下の場所で仕事を行う時、上から物が落ちてくるということも少なくありません。

ナット程度のものであれば、ヘルメットが頭を守ってくれます。

しかしもっと大きなもの、例えば鉄パイプや数キロの工具などになると、その衝撃は大きく、ヘルメットでは守れないこともあります。
さらに、重いものであれば、首にかかる衝撃も大きくなるでしょう。そうなるとムチ打ちなども引き起こしてしまいます。

ヘルメットは重要ですが、過信してもいけないものと言えます。

足場では、階上から道具や材料が転がり落ちないように、幅木を備えることが義務付けられています。

幅木とは、通路の両脇に板をつけ、床の上の物が落ちないようにするためのものです。

何年か前の法改正で、足場組立の時の義務になりました。

作業を行っていく上で、どうしても手すりや中さん、幅木を取り外さなければならない時もあるでしょう。
そのような場合、取り外すのは一時的なものでなければなりません。

用事が済んだら、すぐに元の状態に戻すようにします。
後からやろうでは、忘れてしまい、取り外されたまま放置ということも少なくありません。

もしかすると、今回の猫井川のようなことも起こってしまうかもしれません。

何か状態を変えたら、すぐに戻す。
これが大事ですね。

それでは、ヒヤリハットをまとめます。

ヒヤリハット 足場の幅木を取り外したままにしていたら、ナットと鉄パイプが落ちてきた。
対策 1.幅木を取り外したら、すぐに元に戻す。
2.転がるものは、固定しておく。

4Sや5Sは、仕事の効率を上げるとともに、事故を防ぐためにも有効です。
乱雑な場所より、整然としている作業場のほうが、つまづいたり、何かが頭上から降ってきたりということが少ないのです。

頭に衝撃を受けると、ダメージは大きいでしょう。
ヘルメットで多く場合カバーしてくれますが、限られているのも確かです。

一番いいことは、原因そのものを取り除くことですね。

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