厚生労働省労働局長登録教習機関
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製造業では、機械による作業が欠かせません。
いやむしろ、機械無しでは仕事にならないと言っても過言ではないでしょう。
機械による作業は、人の力では到底及ばないほど力強く、早く、そして正確です。
とても便利です。
一方、とても力強いものであるので、何かの拍子で体の一部などが巻き込まれた場合、深刻な被害になってしまいます。
製造業では、機械のはさまれ・巻き込まれ事故はベスト3に入るほど、毎年件数が多いのです。
機械の側で仕事を行う以上、ある程度接近することはあります。
多くの場合は、接触したり、挟まったり、巻き込まれたりする程までは近づくことはないでしょう。
程よい距離感で付き合っているはずです。
しかし、何かのきっかけで、例えば機械の調子が悪い時に調査する時などでは、程よい距離感が崩れてしまいます。
機械に触れているとき、動作したら。
事故は、日常業務の、ほんの些細なことをきっかけに起こってしまます。
安衛則では、機械による危険の防止のための規則が数多く定められています。
今回より、機械の取り扱い条文をまとめていきます。
安衛則で定められている内容は、必要最低限のものです。
実際には、各メーカーがより安全性の高い対策を取っています。
しかしそれは出荷したり、設置した段階でのこと。
実際に動かし始めていくと、作業性を考慮し、安全装置を取り外すなどの改造も少なくありません。
必要最低限の基準ではありますが、守り続けなければならないことだということです。
機械には様々な種類がありますが、まずは全ての機械に共通する内容をまとめます。
【安衛則】
機械の安全対策の多くは、危険源に振れないようにする、適当な距離を保つことにあります。
触らねければ、巻き込まれません。機械の間に入り込まなければ、挟まれることはありません。
これが原則です。
そのため、距離を保つことを規定した、条文がたくさんあります。
最初の条文も、距離を保つことですね。
機械の多くは電気を受けると、原動機(モーター)が回転し、それが力を伝え、動きます。
これがとてもシンプルな構造です。
モーターは回転することで力を伝えます。そして歯車やベルトなどで力を伝えるのです。
回転は、1分間に何千回転という、すさまじいスピードになります。
高速回転しているところに手を触れると、どうなるかは分かりますね。
大原則。
機械のモーターや、歯車やベルトなどの回転している箇所には、覆いや囲いなどを設けて、接触しないようにします。
動く場所には、覆いや囲いを設けることが、一番基本になります。
通路の関係上、どうしても回転体を越えていかなければならい場合は、安全に渡れるように踏切橋という、橋を作りましょう。
この踏切橋を設ける時は、90センチ以上の手すりが必要です。
ただの床だけだと、バランスを崩した時、落ちてしまいますからね。
またスリーブというものも例としてあげられていますが、これは服の袖のような筒のことです。細長いベルトが回転しているときなどは、筒を被せてしまうこともあります。
ベルトや歯車など回転体の留め具は、埋頭型にします。
埋頭型とは、外に出っ張らない構造のことです。
留め具の部分だけ、少し凹み、ネジの頭がすっぽり収まるものを言います。
なぜ埋頭型でなければならないのでしょうか。
それは、少しでも出っ張りがあると、回転時その部分が引っかかってしまうからです。
もし体の一部が触れた場合、出っ張りで切れてしまいます。
そういった危険を防ぐために、埋頭型の留め具を使うのです。
埋頭型出ない場合は、覆いを被せて、接触できないようにします。
長い距離を回転させるため、長いベルトが必要になる場合、時として2本以上を継いだすることもあります。
この継ぎ目にも出っ張りがあってはいけません。
理由は、ネジなどと同じですね。
機械の安全基準の原則は、距離を保つこと、回転する部分で事故が起こらないようにすることです。
(ベルトの切断による危険の防止) 第102条 事業者は、通路又は作業箇所の上にあるベルトで、プーリー間の 距離が3メートル以上、幅が15センチメートル以上及び 速度が毎秒10メートル以上であるものには、 その下方に囲いを設けなければならない。 |
ベルトは、プーリーと呼ばれる2つの回転体の間をぐるぐる周ります。
ベルトがグルグル回ることで、力を別の機械に伝えるのです。
ベルトの多くはゴム製です。
ゴムですので、長年使っていると劣化し、切れてしまいます。
大体はベルトが劣化してきたら、切れる前に、取替などを行います。
しかし最初からき裂があるようなものでしたら、劣化していなくても切れたりもします。
もしベルトが切れたら。
恐るべき回転力がかかっているので、ベルトは飛び跳ね、周りの作業者に危険をお呼びしかねません。
周囲に人がいる状況では危ないですよね。
通路や作業箇所の上にあるベルトは、下方に囲いを設けて、切断による危険を防止します。
ただどんな時でも囲いが必要というわけではありません。
プーリーの間の距離が3メートル以上、幅が15センチ以上、速度が秒速10メートル以上という場合です。
どちらかというと、頭上で回っている設備の時を想定している規則ですね。
機械を取り扱う上でのもう一つの原則です。
それは、危なくなったらストップさせることです。
機械ごとに動力を遮断させる装置を設けなければなりません。
危険を感じたら、機械を止める。
これが大事です。
材料を投入、加工、運搬など、製造ラインによっては、機械が連なるときもありますが、それぞれの機械ごとに、遮断装置が必要になります。
ただし連続していて、途中の工程で一切人の手がかからない場合は、機械ごとではなく、まとめての遮断装置でも構いません。
機械の遮断装置が備わっていたとしても、それが緊急時にすぐに使えなければ、意味がありません。
特に切断、引抜、圧縮、打抜き、曲げ、絞りなどの加工機械の場合、操作する人が危険を感じたらすぐに使えなければなりません。
少し歩いて停止スイッチを押すなどという悠長なことは言ってられません。
操作している位置から、手の届く範囲に遮断用のスイッチがなければなりません。
動力の遮断装置、スイッチはすぐに使えなければなりません。
しかし、機械の振動や少し触れただけで反応していたら、それはそれで困ります。
確実にスイッチを入れた時だけ動くようにしておく必要があります。
(運転開始の合図) 第104条 事業者は、機械の運転を開始する場合において、労働者に 危険を及ぼすおそれのあるときは、一定の合図を定め、 合図をする者を指名して、関係労働者に対し合図を 行なわせなければならない。 2 労働者は、前項の合図に従わなければならない。 |
機械を動かすときの注意です。
機械のすぐ側で作業している時、急に機械が動き出したら怖いですよね。
もし点検のために、機械の中に入り込んでいた時に動き出したら。
とても恐ろしいです。
機械を動かすときには、合図と合図をする人を決めて、この人に従い機械を動かします。
合図者は、当然機械の周辺に人がいないことを確認して、スイッチを入れるように合図します。
機械のスイッチが、機械の側になく、離れた場所にある場合などは、こういった合図は需要ですね。
機械の取り扱いにおいて重要な事は、危険箇所から距離を取ることと、緊急時には止めることです。
他の機械についても、これらのことがたくさん出てきます。
人と機械とは、どんどん近くなってきています。
しかし工場での加工用機械とは、程よい距離感が安全上、よさそうですね。
まとめ。
【安衛則】
第101条 機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等には、囲いや覆いをつけなければならない。 |
第102条 通路又は作業箇所の上にあるベルトの、ベルトの切断による危険の防止のため、下方に囲いを設けなければならない。 |
第103条 機械ごとにスイッチ、クラッチ、ベルトシフター等の動力しや断装置を設けなければならない。 |
第104条 機械の運転を開始する場合、労働者に危険が及ぶ恐れがる時は、一定の合図を定め、合図をする者を指名して、行わせなければならない。 |