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建設作業での墜落事故は、屋外の足場作業だけで起こるとは限りません。
屋内でも起こります。
屋内の墜落事故で多いのが、床の開口部や、端からの墜落事故です。
完成時には、開口部などは塞がれ、そこから落ちる心配はなくなります。
しかし作業中は、開口部は開きっぱなしのままで、注意しながら作業すること言うことも少なくありません。
もちろん、そのような開口部があれば、作業時の危険になるので、鉄板やコンパネで穴を覆う、囲いをして、入り込まないようにするなどの安全対策をとります。
安全対策をしていることで、危険の多くは防ぐことはできますが、残念ながら時々事故に至ってしまうこともあります。
今回は、屋内工事で起こった墜落事故を取り上げ、原因の推測と対策を検討します。
床の穴から作業員転落、死亡…9メートル下へ。東京都千代田区
(平成27年3月9日)
9日午前7時40分頃、東京都千代田区内幸町2の新生銀行旧本店ビルの解体工事現場から、「作業員が転落した」と119番があった。 救急隊員が駆け付け、30歳代の男性作業員が病院に搬送されたが、全身を強打しており、まもなく死亡が確認された。
警視庁丸の内署の幹部によると、男性はビル2階の床に開いていた穴から、穴を塞いでいたベニヤ板ごと約9メートル下の1階に転落したとみられる。同署で現場の安全管理に問題がなかったかどうか調べている。 |
読売新聞(元の記事が削除されたようです。)
この事故の型は「墜落」で、起因物は「構造物」です。
解体工事現場で起こった事故でした。
解体工事は、文字通り壊していく作業なので、作る作業より、雑然としています。
コンクリート片が散らばり、鉄筋などがむき出しになっているということも少なくありません。
当然、内装も取られていますし、階段なども取り壊されていることも少なくありません。
床の開口部なども、取り壊す前であれば塞がれていたものが、取り壊しとなると、除かれます。
頭上も足元も、危険要素が多いのが解体工事と言えます。
とはいえ、開口部があれば、危険なので、板を載せるなどして養生をします。
ぽっかり開いた穴は塞ぐことができますが、端部であれば、塞ぐことはできないので、手すりなどをつけて、立入禁止にします。
今回の事故は、その開口部の養生方法に問題があったようです。
この事故現場でも、床に開いた開口部に、覆いをかけ養生していました。
ただし、覆っていたのがベニヤ板だったのです。
ベニヤ板というのは、とても薄い木の板ですね。
せいぜい厚さ5ミリ程度のペラペラなものです。
もしこの上に人が乗ったとすると、とてもじゃないですが、体重を支えることは不可能です。
とりあえずベニヤ板で塞いでいたところ、事故が起こってしまったのでしょう。
しかし、ベニヤ板程度では、体重は支えられないと分かっていたでしょうに、なぜ被災者は、乗ってしまったのでしょうか。
2つの理由が考えらます。
1つは、コンパネのように乗っても平気だと思っていたこと。
もう1つは、覆いがあったので、開口部があると気づかなかったこと。
このいずれかが原因ではないでしょうか。
もし覆っていたのが、コンパネであれば、厚さは数センチあるので、人が乗っても大丈夫だったでしょう。
もしかするとベニヤ板は、応急処置で塞いでいたのかもしれません。
覆いがあることで、開口部に気づかないということも、よくあります。
見えないものには気づきません。
下手な養生が、錯覚を招いてしまったとも言えます。
それでは、原因を推測してみます。
1.2階の開口部から、墜落したこと。
2.開口部のベニヤ板が、覆いとしての強度が不十分だったこと。
3.開口部があることを、明示していなかったこと。
4.作業者に、危険箇所などの周知を行っていなかったこと。
開口部を多い、人が通ることを想定するならば、鉄板やコンパネなど、十分な強度を持ったもので、覆う必要があります。
ベニヤ板でとりあえず覆うという養生をしていならば、その上に人が通らないように、カラーコーンで囲い、立入りを禁止するなども、あわせて行わなければなりません。
同時に、作業前には、全員がどこに危険箇所があるのかを知らせておく必要があります。
危険箇所には近づかない、もしくは必要な養生をとるひつようがあるのです。
作業者が勘違いしてしまうような、中途半端な安全対策や養生は、逆に危険を招くことがあるのです。
対策を検討してみます。
1.開口部には、上部なもので塞ぐ。
2.開口部付近は、手すりやバリケードなどで、立入禁止とする。
3.作業前には、作業者に危険箇所を周知する。
開口部養生などは、とりあえずこれでというのは避けたほうがよさそうです。
開口部が目に見えていたら、注意しますが、下手に養生して塞いでしまうと、目に入らなくなります。
やるならしっかり行いましょう。
後からやり直すは、やり直しまでのタイムラグが生じ、危険を招くこともあります。
ほんの2階から1階へ落ちるだけでも、致命傷になります。
屋内の開口部は、まさに落とし穴トラップといえます。
このトラップは、目に見えなくするのは不十分で、しっかりなくしてしまうことが大切なことですね。