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建設現場では、墜落事故の危険が常につきまといます。
特にビル建築や解体は、高所作業が不可欠です。
先日、墜落事故の事例紹介として、ベニヤ板で覆われた開口部を踏抜き、墜落死したという事故を取り上げました。
今回もベニヤ板が関係する事故を事例として取り上げたいと思います。
しかし今回の事故は、ベニヤ板が逆に命を救ってくれたという事例です。
先に書いておきますが、今回のような例は、ほとんどありません。
奇跡的ケースなのだということを覚えておいて下さい。
本来ならば、事故そのものを防がなければなりません。
20m転落、ベニヤ板がクッションに 一命取り留める。名古屋市北区
(平成27年3月11日)
11日午後4時前、名古屋市北区若葉通3丁目のマンションの建設現場で、足場の解体作業をしていた男性作業員(25)が、7階付近の足場から約20メートル下に転落した。愛知県警北署によると、男性は地上に30センチほど積まれたベニヤ板の上に落ち、一命を取り留めた。
同署などによると、マンションは10階建て。男性は足場を外す作業中に、風にあおられて落下したという。男性は命綱をしていなかった。落ちた場所が資材置き場で、ベニヤ板がクッションの役割を果たしたらしい。右腕を骨折するなどしたが、命に別条はないという。 |
この事故の型は「墜落」で、起因物は「構造物」です。
解体工事の現場で、外壁の外にある足場での作業中に起こった事故でした。
20メートルも落下したということなので、10階建のビルの上の方で作業していたのでしょう。
高い場所なので、ビル風も強く、体が容易によろめいてしまうような状態での作業中だったと思われます。
被災者は命綱、つまり安全帯を使用せず作業していたところ、地上に落下してしまいました。
通常ならば、そのまま道路に叩きつけられ、死亡したことでしょう。
この事故で幸いだったのは、落下地点にベニヤ板が積まれていたことでした。
ベニヤ板は、薄い木の板です。
1枚1枚はペラペラで柔らかいものです。
これが何枚も重ねれられていると、多少クッションになります。
被災者はこの上に落ちたのでした。
ベニヤ板はクッションとなり、激突の衝撃を和らげてくれました。
腕の骨折は合ったようですが、命に別状がなかったのは、不幸中の幸いでした。
ただ本人は、生きた心地がしなかったでしょうけど。
ほんとうに奇跡に近い偶然の結果で、命をつないだ事故でした。
しかし、墜落したという原因はしっかり見ておく必要がありますね。
それでは、原因を推測してみます。
1.ビルの屋外の足場で、風にあおられ、墜落したこと。
2.安全帯を着用していなかったこと。
3.安全意識が低かったこと。
そもそも墜落した原因は、高所作業にもかかわらず、安全帯を着用していなかったことです。
足場に手すりや中さんなどがあったかは記事からは伺えませんが、それらを備えていたとしても安全帯を省略しないほうがいいです。
安全帯の着用をしていなかったのは、本人の安全意識の低さもありますが、職場としての安全教育も不十分だったのではと想像されます。
対策を検討します。
1.足場は手すりや中さん、メッシュシートなどの墜落防止対策を行う。
2.高所作業時には安全帯を使用する。
3.作業者の安全意識を向上させるために、教育を行う。
高所作業を日常的に行っていると、どうしても慣れと油断が生まれてしまいます。
事故はそんな時に起こってしまうのです。
今回のケースは非常に稀です。ほとんどはこの時、亡くなってしまう結果になるでしょう。
墜落に備えて下にベニヤ板を置いておこうなどとは、誰も思わないでしょうが、安全帯を使用しようとはなればいいなと思います。
おそらく、この怪我をされた方は、安全帯の大切さを痛感したでしょうし、周りの人にも安全帯の大切さを伝えるのではないでしょうか。
事故は不幸な出来事ですが、それを教訓に、安全意識を高めるきっかけにもなるのです。