○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

犬尾沢、ベニヤ板をズボンする

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

犬尾沢のチームは、コンクリート工事です。

基礎土工として、少し地盤を掘り下げ、そこにコンクリートの基礎を作っています。

今日から、ここに配筋を組立、型枠を組むのです。

いつも通り、犬尾沢がみんなを集めて、作業手順を話します。

「とりあえず、今日から型枠をしていく。
 手順としては、まず全員で鉄筋をこちらに運んできて、俺と保楠田さんで組んでいく。

 鼠川さんは、猫井川と型枠の準備をしていってください。

 あと、別作業で埋設配管工事をしている関係で、掘削している溝もあちこちあるから、足元には注意するように。」

そう言いうと、全員作業にとりかかりました。

まずは、近くに停めてあるダンプから、鉄筋を運びます。

ダンプは作業場所に横付けすれば、運ぶ手間はないのですが、この現場は、あちこち掘られているので、少し離れた場所にしか停められなかったのでした。

そのため、最後の運搬は人力になったのです。

「年をとると、鉄筋を運ぶのも辛い。」

肩に鉄筋の束を載せ、鼠川が言います。

「長いのだと、結構運ぶの辛いですよね。」

猫井川も、鼠川に同意します。

「お前は若いんだから、わしの倍は運ばんとな。」

「勘弁して下さいよー」

そんなやり取りをしながら、鉄筋を運び終えました。

「やっぱり、あちこち穴が開いてると危ないな。
 ここはそんなに深く掘られてないけど、通路になるところだし、覆っておこうか。」

鉄筋を下ろすと、犬尾沢がそう言いました。

「猫井川、コンパネでここを覆っておいてくれ。」

「はい。分かりました。」

犬尾沢は、猫井川にコンパネで深さ20センチほどの掘削溝を覆うことを指示すると、自分の作業準備に向かいました。

「あれ、でもコンパネを使っちゃうと、型枠ができないな。」

これから型枠を作るのですが、コンパネは予備を持ってきていません。

「鼠川さん、ここを覆っておけと言われたんですけど、どうしましょうか?
 コンパネ予備がないんですけど。」

「そうだな、とりあえずすぐに全部は使わないから、何枚かコンパネで覆っておけ。
 あとで必要になったら、何かで取り替えよう。
 明日以降は、別のを持ってこないとな。」

「そうですね。 とりあえず、ここは覆っておきます。」

そんなやり取りをして、コンパネを2枚使って開口部を塞いだのでした。

犬尾沢と保楠田は、鉄筋を組み立てていきます。
鼠川と猫井川は、協力して型枠を組み立てていきます。

「おい、猫井川ちゃんとスケールを持っておけ。少し動いたぞ。
 
 いいかー?3500!ちゃんと書いとけよ!」

協力というより、鼠川が主導して、猫井川を使っているようです。

「よし、これで全部測れたな。
 それじゃ、型枠を作っていくか。」

鼠川が主導して、型枠の加工作業に入ります。

先ほど測定した結果をもとに、コンパネに線を引き、それに従って切っていきます。
パーツごとに切りそろえた所で、型枠へと組み立てていきます。

鼠川と猫井川は、コンパネに線を引き、電動ノコギリで切断していきます。

「あら、猫井川、コンパネがなくなったぞ。」

「そんなはずはないと思うんですけど。
 あ、覆いにしてるのがありますね。
 これが抜けてた。」

「そうだったな。それを使わないと。」

「ここのコンパネの代わりはどうしましょうか?」

「そうだな。明日は新しいのを持ってくるとして、今日はとりあえずベニヤで覆っておくか。厚めのだったら、大丈夫だろう。」

「じゃあ、そうしましょうか。」

そういうと、猫井川は掘削溝を覆っていた、コンパネを取り外し、鼠川に渡しました。
そして、作業場で材料の敷物に使っているベニヤ板を持ってくると、それで溝を覆ったのでした。

「とりあえず、少しの間はこれで大丈夫だろう。」

そう言うと、型枠作りに戻っていったのでした。

しばらく黙々と作業を進めていった時でした。

犬尾沢のもとに、電話がかかってきました。

「はい。犬尾沢です。お世話になっています。」

犬尾沢は、作業の手を止め、電話にでました。

「あ、その日ですか。ちょっと待って下さい。」

スケジュールの確認でしょうか、手帳を胸ポケットから出そうとしますが、ありません。
どうやら車に置いているようです。

犬尾沢が車に向かって歩き出し、ベニヤ板で覆われた掘削溝に足を掛けた時です。

ズボン!

「うわッ!」

薄いベニヤ板は体重を支えられず、足は貫通してしまったのです。

「なんだこれ!?あ、いや大丈夫です。ちょっと足がつまづいただけです。はい。」

電話で話しながら、必死に足を引き抜こうとしますが、なかなか抜けません。

「んっ、んっ!」

何度か足を上げた所で、ようやくベニヤから開放されました。

「ええ、大丈夫です。ちょっと待っててくださいね。今手帳を取りに行っていますので。」

そんな様子を見ていた、保楠田、猫井川、鼠川。

電話が切られた後に起こることをが想像され、やや戦々恐々です。

その後・・・

果たして、みんなの想像通りの犬尾沢の雷が炸裂したのでした。

仕事上にある落とし穴の話ですね。

土木作業の現場や建築の現場であれば、地面に穴が空いているということがよくあります。
最終的には、塞がれるとはいえ、作業中は開いたままということも少なくありません。

多くの場合は、手すりや囲い、覆いなどをして、開口部から転落しないようにされています。

今回は、中途半端な対応が、事を招いてしまったようです。

開口部の覆いとしてコンパネであれば、人が乗っても十分な強度があります。
しかしベニヤ板では、人が乗ると、割れてしまいます。

見た目は似ていますが、厚さが違うのです。

犬尾沢は開口部の覆いはコンパネであると信じ、疑いもしていなかったのですから、そのまま足を突っ込んでしまったようですね。

もしコンパネを取り外して、ベニヤ板で覆わず、開口部が目に見えていたら、こんなことは怒らなかったのではないでしょうか。

中途半端な対応が、事故を招くということもあるんですね。

ヒヤリハットをまとめます。

ヒヤリハット 開口部をベニヤ板で覆っていたら、足を突っ込んでしまった。
対策 1.強度の弱いもので、開口部は覆わない。
2.中途半端な対応は、行わないほうが良い場合もある。

下手に中途半端な対応をすると、危険を認識できません。
逆に危ないことになるのです。

開口部を覆っているものが、強度が十分化など、普通はしっかり確認しません。

対応は必要です。
ただしやる場合は、しっかりやらなければなりません。

中途半端にしか対応できない場合は、いっその事開口部をそのままにしておく方が安全だったりします。

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