厚生労働省労働局長登録教習機関
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日本は地震が頻発するので、ビルなど建築物は地震に備えた作りでなければなりません。
最近のビルなどでは、十分な耐震強度が備えられると同時に、免震設備も施されています。
しかし、そのような設計がされているのは、近年の建築物です。
残念ながら、戦後から行動経済成長、バブルの頃の建物は、震度7といった強い揺れに耐えるまでは、想定していないもの多いようです。
そのため、学校などの有事の際の避難所となる施設は、耐震補強工事が行われたり、建て替えられたりします。
建物は、コンクリート造であったとしても、いつまでも丈夫ではありません。
老朽化すると、あちこちが傷み、くずれ、そして使用するには適さなくなります。
学校などの施設以外でも、戦後から行動経済成長期に建てられた建物は、徐々に使われなくなるのではないでしょうか。
そのような建物を建て替えるにしても、まずは今あるものを取り壊します。
取り壊すことを、解体工事といいます。
今後、解体工事の需要が大きくなるはずです。
しかし解体工事は、コンクリート片やむき出しの鉄筋が溢れた作業場となるため、建築よりも危険が多いとも言えます。
解体工事は、危険要素に囲まれています。
神戸でも解体工事の時に、作業者が重軽傷を負うという事故が起こりました。
今回はこの事故と取り上げ、原因を推測し、対策を検討してみます。
校舎解体現場で4人重軽傷 神戸市中央区
(平成27年3月19日)
19日午後1時半ごろ、神戸市中央区野崎通、市立筒井台中の旧校舎の解体工事現場で、校舎の壁が倒れて足場が傾き、作業員の男性4人が転落して腰を骨折するなどの重軽傷を負った。
市住宅都市局などによると、旧校舎の2階部分の厚さ15センチ、長さ約40メートルの外壁の一部を重機で解体している際に、外壁が倒壊。足場や1階のひさし部分から約3メートル下のがれきの上に転落した。 |
産経新聞
この事故の型は「墜落」で、起因物は「構造物(外壁)」です。
学校の旧校舎を解体している際に、起こった事故です。
建物の2階の壁を取り壊していたところ、崩れ落ち、作業者が乗る足場を傾け、結果として、転落したという事故です。
壁が倒壊したものの、直接作業者に当たったというわけではありません。
もし倒壊した壁の下敷きになっていたならば、さらに大怪我をしていたかもしれません。
解体工事では、壁や天井を重機を使って崩していきます。
当然、破片は散らばりますし、大きな固まりが倒れたりします。
倒れる方向や、大きさなどはある程度は調整していくでしょうが、常に計算通りいくとは限りません。
強い衝撃や振動で、壁を崩していくのですから、不測の事態も考えておく必要があります。
当然ですが、重機の作業範囲や壁が倒れる付近、破片が飛び散る付近に、作業者は立ち入らないでしょう。
壁の一部が、立入禁止範囲を大きく超えたのか、もしくは足場が近接しすぎていたのか、今後の調査によって明らかになっていくと思います。
原因を推測してみます。
1.壁の解体中に、破片の一部が、足場などにあたったこと。
2.開催作業箇所と十分な距離をとっていなかったこと。
3.作業者に破片が飛ばないような、対策をとっていなかったこと。
4.作業主任者が、安全措置をとっていなかったこと。
解体作業中は、不測の事態がつきものです。
どんなことが起こるかを事前に把握してくことは、困難でしょうが、立入禁止とする範囲を余裕を持たせることも大切ではないでしょうか。
もし十分に距離をとることができないのであれば、破片が飛び散らないように、囲いや覆いを設けることも検討できたのではと思われます。
また、5メートル以上のコンクリート構造物の解体作業では、作業主任者を選任し、直接指揮させることになっています。
この現場では、学校の校舎ですから、高さは5メートルは超えていたはず。
作業主任者が、作業場での安全対策などを検討し、指揮することが義務付けられます。
どのような作業計画を立て、作業主任者が、どのような安全対策をとっていたのかが、今後の調査になるでしょう。
対策を検討します。
1.解体作業中は、十分な範囲を立入禁止とする。
2.コンクリート片等が飛び散る場合は、囲いや覆いなどを設ける。
3.作業手順、作業範囲などの作業計画を作り、それに従う。
4.作業主任者は、現場で作業の指揮をとる。
安全に作業を進めるためには、事前の計画と現場での安全対策が重要です。
そのためには、作業主任者の役割が大きくなります。
現場の状況を確認しつつ、安全を確保することが求められます。
解体作業は、今後も増えてくるでしょう。
ビルが立ちならぶ都会でも、頻繁に行われるはず。
都会では十分に作業場が確保できずに作業を行うことも、少なくありません。
そういった条件の中で、安全に作業を進めていくのは、至難の業でしょう。
現場状況を踏まえた作業計画、そして現場での臨機応変な対応。
解体現場で求められることは、決して少なくありません。