厚生労働省労働局長登録教習機関
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火災は、全てを失ってしまいます。
家でも事業所でも、いったん火の手が上がってしまうと、もはや致命的な損害になります。
たとえ、小火で収まったとしても、後に残るのは、焦げた臭いと水浸しの建物です。
小火でも、大きな損害になりますが、まだましな方です。
大きな損害ともなると、建物全焼、時として人命も失われてしまいます。
最近はどんどん規模を縮小して生きているようですが、地方だと消防団に所属しているという人もいるでしょう。
私も所属しているのですが、火事の時には駆りだされています。
数年前ですが、近所のリサイクル工場が火事ということがありました。
これは大きな火の手が上がり、鎮火に半日近くかかったものです。
火事の後、しばらくは辺り一帯に焦げ臭い臭いが漂い続け、工場の周りには水浸しになり、行くあてのなくなった残材が、残り続けたものです。
火事は大きな被害をもたらし、損害を与えるのです。
仕事で火気を取り扱う場合は、相当注意が必要になります。
北海道のコンクリート工場で、火災事故が発生しました。
この事故では、2名の方が亡くなり、1名の方が重症を負われるという大きな被害となりました。
記事によると、どうやら原因は、溶接ではないかと推測されます。
今回は、この事故をとりあげ、原因の推測と、対策を検討してみたいと思います。
生コン製造工場で火災、溶接作業の2人死亡(平成27年3月18日)
18日午前10時頃、北海道興部おこっぺ町北興の生コンクリート製造会社の工場で火災があったと、消防に通報があった。
北海道警興部署によると、工場敷地内にある生コンクリート製造プラントの最上階の4階から出火。溶接作業などをしていた男性3人が病院に運ばれ、2人が死亡、1人が顔などにやけどを負った。 興部署などによると、死亡した2人は4階付近で倒れているのを消防が見つけ、発見時は既に意識がなかった。興部生コンによるとプラント内には生コンクリートの材料となる砂利を仕分ける鉄製の大型容器が6台あり、2人は同社から依頼を受け、数日前から砂利で摩耗した容器の補修作業を行っていたという。 プラントは高さ約20メートル。1988年築で、防寒用に内壁にウレタンを貼っていたという。現場には溶接作業に使うバーナーが残されており、同署は火災との関係を調べる。 現場は、興部町役場から南西に約4キロの国道239号沿い。近くの牧場の男性従業員は「消防車のサイレンの音がして外に出ると、建物から黒煙が上がっていて驚いた」と話した。 |
読売新聞(元の記事が削除されているようです。)
この事故の型は「火災」で、起因物は「溶接機」です。
現場の状況から、コンクリート工場の砂利仕分け用鉄製容器を溶接して、補修している最中に、何かに着火し、燃え広がってしまったと思われます。
北海道の冬場は、寒さが厳しいので、凍ったら困る設備には、保温がされています。
火災のあったプラントも、内壁にウレタンを貼り、保温効果を高めていたようです。
記事から推測するに、溶接の火花が、こういった保温材に飛び、火の手が上がったのではないでしょうか。
溶接とは、金属同士を接合するものです。
アーク溶接やガス溶接などの種類があります。
ガス溶接はガスを噴出し高温の炎で、溶接材を溶かし、接合します。
一方アーク溶接は、電気で高熱を発し、溶接材を溶かして、接合します。
金属同士を接合する溶接材は、ちょっとそっとの温度では溶けません。
数百度から千度にも達する高温を発します。
そして溶接作業中は、高熱の火花があちこちに飛び散ってしまうのです。
ナイロン製の服では、すぐに溶けて穴が開きますので、丈夫な綿などの服装で作業していたことでしょう。
作業者自身は、火花に対する備えがあったでしょうが、作業者周辺はそうでもなかったようです。
火花くらいと思われるかもしれません。
しかし、こう考えたら分かりやすいのではないでしょうか。
服の中にタバコの火種が落ちたとしたら、平気でしょうか?
また線香花火をやっている時に、落とさないようにする赤い火の玉が、服の中に入ったら。
もし、それなりに大きな熱い固まりが服の中に入ろうものなら、服は焦げますし、皮膚に着くと火傷になりますよね。
溶接で飛び散る火花は、これよりも高温ですし、熱で赤くなった小さな金属の固まりが飛び散るのです。
そんなものが、燃えやすいものに付着すると、じんわりと周りを燃やし、最終的に大きな火柱へと成長します。
この事故は、溶接するにあたり、周辺への養生が行われていなかったことが原因ではないかと思われます。
1.溶接の火花が、周辺の可燃物に燃え移ったこと。
2.可燃物が周りにあるにも関わらず、養生を行っていなかったこと。
3.消火器等の備えがなかったこと。
4.室内を閉めきっていたこと。
周辺に燃え移りやすそうな物がある場合、火花が燃え移らないように、覆いをかけるなどの養生も必要だったのではないでしょうか。
周辺をベニヤ板などで覆ったり、1人が火花が飛びちらないようにガードするというのも1つの手段と言えます。
また火気を使用するので、消火器等を備えておくと安心です。
もし何かに着火しても、すぐに消化できるような体制作りも、重要です。
さて、これは記事等にはないので、推測になるのですが、この作業は室内で、閉めきった場所で行っていたのではないでしょうか。
3月の北海道という環境を考えると、窓を開け放して行うには、寒すぎるため、換気をするというのはなかったのではと想像されます。
なぜ、閉めきっていたことが、原因になるかというと、換気が悪い場所での火災は、すぐに酸素が不足し、一酸化炭素中毒になってしまうからです。
火の手が上がってから、避難が遅れたのは、一酸化炭素中毒で意識を失ったというのも、原因でないかと思われます。
対策を検討します。
1.可燃物が回りにある場合での溶接作業は、周辺の養生を行う。
2.消火器等を備えておく。
3.適度な換気を行う。
4.緊急時の避難方法を決めておく。
工場の中など、決まった場所で溶接を行うのでなければ、事前に燃えやすいものはないかなどを確認します。
もしダンボールが積まれているなど、移動できそうなものは、あらかじめ移動させておくとよいでしょう。
しかし、この事故現場のように、壁に保温材が貼り付けられているのであれば、動かすことはできません。
その場合は、火花が飛び散らないようにするなどの養生が必要です。
火を扱うのですから、小さな消火器は準備しておくとよいですね。
また、閉めきった空間で作業をすると、空気も澱みますので、多少は換気しておくのがよさそうですね。
また火災や事故が起こった時の、対応をあらかじめ決めておくのは大切です。
緊急時の避難経路を知っておくだけでも、少し冷静に対応ができるようになります。
溶接を長年やっていると、火花に対する恐れも薄くなってきます。
私の会社でも、手の皮も分厚くなり、火花を浴びても全然平気という人もいます。
しかし、飛び散る火花は、きっかけさえあれば、燃え上がってしまうのです。
火への備えは、どんなに慣れても、十分に対応しておく必要があります。