○安衛法と仲良くなる製造機械・工作機械

プレス機等の安全。

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製造業、工場での機械の中でも、特に厳密に管理されているものがあります。

それは、プレス機とシャーです。

プレス機は、文字通りプレス、つまり金属の金型などを強い力で押し付けて、特定の型抜きをしたりする機械です。

シャートは、金属の切断機のことです。上下する刃に、材料を押し当てて、バッサリと断ち切ります。ノコ盤などのような切断方法ではなく、はさみで紙を切るように、切断する機械です。

どちらも、作業テーブルと上下する可動部を備えた構造です。
テーブルと可動部の間に、材料を入れ、スイッチを入れると、金型や刃が下りてきて、加工を施します。

とても簡単にまとめると、プレス機やシャーは「はさむ機械」といえます。

はさむ機械なのですから、使用する上で、とても大切な注意点があります。

それは、はさむのは材料だけにすることです。
つまり、手や体の一部をはさまないようにするということです。

プレス機やシャーでは、これが一番怖い事故なのです。

金属の型抜きなどは、多くの製造過程で必須です。
全て別の金型を用い、製品を作っていきます。

機械の数だけ、危険もあります。

プレス機やシャーは、安衛則で多くん規定がありますので、まとめていきます。

【安衛則】

第4節 プレス機械及びシャー

(プレス等による危険の防止)
第131条
事業者は、プレス機械及びシャー(以下「プレス等」という。)に
ついては、安全囲いを設ける等当該プレス等を用いて作業を
行う労働者の身体の一部が危険限界に入らないような措置を
講じなければならない。
ただし、スライド又は刃物による危険を防止するための機構を
有するプレス等については、この限りでない。

2 事業者は、作業の性質上、前項の規定によることが困難なときは、
  当該プレス等を用いて作業を行う労働者の安全を確保するため、
  次に定めるところに適合する安全装置(手払い式安全装置を
  除く。)を取り付ける等必要な措置を講じなければならない。

  1)プレス等の種類、圧力能力、毎分ストローク数及び
   ストローク長さ並びに作業の方法に応じた性能を
   有するものであること。

  2)両手操作式の安全装置及び感応式の安全装置にあっては、
   プレス等の停止性能に応じた性能を有するものであること。

  3)プレスブレーキ用レーザー式安全装置にあっては、
   プレスブレーキのスライドの速度を毎秒10ミリメートル以下と
   することができ、かつ、当該速度でスライドを作動させるときは    スライドを作動させるための操作部を操作している間のみ
   スライドを作動させる性能を有するものであること。

3 前2項の措置は、行程の切替えスイッチ、操作の切替えスイッチ
  若しくは操作ステーションの切替えスイッチ又は安全装置の
  切替えスイッチを備えるプレス等については、
  当該切替えスイッチが切り替えられたいかなる状態においても
  講じられているものでなければならない。

プレス機やシャーなどの機械では、作業者の体がはさまれないように、安全囲い等を設けなければなりません。

作業中に指などが挟まれないようにする安全装置が必要になります。

ただし元々体の一部も隙間に入り込まないような構造の場合は、囲いなどは不要です。

作業場や作業方法の関係上、どうしても囲いなどが設けれない場合は、別の安全対策が必要になります。

安全装置装置には、ガード式、両手操作式、光線式、手払い式などの種類があります。

ガード式とは、プレス時に、隙間を隠すように板が降り、作業隙間に異物が入り込まないようにするものです。

両手操作式は、プレス操作を行うスイッチを両手を使わなければならないものです。
スイッチ同士は少し距離があるため、片手では無理です。
両手をスイッチにおいているので、隙間に手を入れるおそれはなくなります。

ちなみにこのスイッチは、同時に操作するものが多いようです。
時間差にして0.5秒以上だと動きません。
そのため、片手ではどれほどすばやく操作しても、動かないということです。

光線式は、レーザーなどでプレス面を監視して、もし異物が通れば、即動作をストップさせるものです。
レーザーの故障時には、機械がストップできないということもあるため、ガード式などに比べると、信頼性は低いかもしれません。
補助的な安全装置とも言えます。

手払い式とは、プレス面に手などが近づけば、機械的に追い払う装置です。
ちょうどホコリを手で払うような動きをするので、手払い式と呼ばれます。
これも補助的な安全装置になります。

ちなみに安全装置の内、手払い装置しか設置していないというのは、安全対策として不適合となりますので、ご注意下さい。

安全装置は、使用するプレス機等に適したものでなければなりません。
プレス機の加工スピードや隙間、作業位置などの条件を満たさなければなりません。

もしプレス面に体が近づきすぎるという状態では、必ず停止するようになっていなければなりません。

また、スイッチにより操作モード、点検モードなど切り替えられるものであれば、どのモードであっても、安全装置は働くようにしておく必要があります。

プレス機などで一番重要なことは、プレス面の隙間に、体の一部も入らないようにすること。もし近づいた時は、停止することことといえます。

全ての安全装置は、人を近づけさせないものであると言えます。

(スライドの下降による危険の防止)
第131条の2
事業者は、動力プレスの金型の取付け、取外し又は
調整の作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者の
身体の一部が危険限界に入るときは、スライドが不意に
下降することによる労働者の危険を防止するため、
当該作業に従事する労働者に安全ブロックを使用させる等の
措置を講じさせなければならない。

2 前項の作業に従事する労働者は、同項の安全ブロックを
  使用する等の措置を講じなければならない。

プレス機等は、金型を材料に押し付け、特定の型抜きを行うものです。

製造したい製品ごとに、金型の形は異なります。
別の製品を使いたい場合は、金型を替えてやる必要があります。

金型を取り替えるときの注意です。

プレス機の押し付ける力は、とてつもなく強いものです。
端から見ると、固い金属の板のはずなのに、紙やビニールのように柔らかいのではと、錯覚してしまうほどです。

そのような強い力に耐えるためには、金型も強固なものでなければなりません。
強固な金型は、大きな金属の固まりです。
当然、非常に重いものです。

重さは数百キロから、大きなものでは1トンを越えるものもあります。

このように大きく重い金型を取り替えるのですから、危険もあります。

何より気をつけなければならないのは、取り替えている途中に、金型に押しつぶされることです。
誤って機械が動いてしまったり、固定金具等が外れて落ちてくる場合が考えられます。

車が体の上に乗るようなものです。とてもじゃないですが、支えられません。

体が金型の下に入り込まないのであれば、もし落下しても逃げられますが、どうしても下に入り込む必要がある場合、特に注意が必要です。

金型などの交換作業時に、体がはさまれないように、安全ブロックなどで落下防止対策をとらなければなりません。

安全ブロックとは、つっかえ棒のようなものです。
もし固定が外れて落ちてきても、支えられるものです。

この安全ブロックがあるとないとでは、金型取替え作業時の安全性が、格段に違ってきます。

実際に、金型取り替え時に事故ということもあるので、重要ですね。

(金型の調整)
第131条の3
事業者は、プレス機械の金型の調整のためスライドを
作動させるときは、寸動機構を有するものにあっては
寸動により、寸動機構を有するもの以外のものにあっては
手回しにより行わなければならない。

金型を取り付けても、すぐには使えません。

製品はミリにも満たない精度のものが要求されるのですから、金型の位置は正確でなければなりません。

金型の調整は、しっかり観察が必要です。
観察のためには、作業時よりも近づくこともあります。

近づき観察している時に、通常の作業スピードで、プレス機が上下していたら、確認もできないどころか、危なくて仕方ありません。

金型の調整のため、上下の動きさせる時は、寸動もしくは手回しで行います。

寸動とは、ほんの少しずつ動くというものです。コマ送りするようなものです。
手回しは、手でハンドルを回すと、金型が上下に動くというものです。

調整の時は、ゆっくり少しずつ動かすのです。

(クラッチ等の機能の保持)
第132条
事業者は、プレス等のクラッチ、ブレーキその他制御のために 必要な部分の機能を常に有効な状態に保持しなければならない。

プレス機等は、クラッチやブレーキなどの機能が、常に正常であるようにしなければなりません。

調子が悪いとなると、即危険につながるのです。
車でもブレーキが壊れていたら、恐ろしいですよね。
プレス機などの機械も同様なのです。

ちょっとした故障が、思わぬ事故、危険につながることも少なくありません。

メンテナンスや点検については、この後の条文でも出てきますが、非常に重要です。

プレス機などでは、とにかくはさまれないことが大切です。
そのための安全装置が備わっていますが、それらが常に正常に働いているようにすることが、安全に作業するための、最低限度のことだと言えます。

まとめ。

【安衛則】

第131条
プレス機械及びシャーは、安全囲いを設ける等身体の一部が危険限界に入らないような措置をとらなければならない。
第131条の2
動力プレスの金型の取付け、取外し、調整の作業を行う場合、体の一部が危険限界に入るときは、スライドが不意に下降することによることを防ぐため、安全ブロックなどを接地しなければならない。
第131条の3
プレス機械の金型の調整のためスライドを作動させるときは、寸動機構を有するものにあっては寸動により、寸動機構を有するもの以外のものにあっては手回しにより行わなければならない。
第132条
プレス等のクラッチ、ブレーキその他制御のために必要な部分の機能を常に有効な状態に保持しなければならない。