コラム

厚生労働省労働局長登録教習機関
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土木作業は、土を掘るという作業が欠かせません。
土を掘り、掘った穴の中に、擁壁や水槽などの構造物を作ったりします。また土の中に水道や下水道用の配管を埋設したりするときにも、土を掘る作業を行います。
土を掘る、これを掘削とも呼びますが、掘削の時には注意が必要です。
掘削はショベルカーなどで行うことがほとんどですが、穴の中で構造物を作ったり、配管を置いたりするのは、人が行います。
そうなると、人が穴の中に降りて行き、作業することになります。
左右が土に囲まれた場所での作業です。
地上では考えられないようなことも起こってしまいます。
福岡県の行橋市の土木作業の現場で、掘削作業時の事故が起こりました。
掘削した穴の中で、作業している時に起こってしまった事故です。
今回は、この事故について、原因の推測と対策を検討してみます。
建設現場の配管溝で土砂に埋まる 男性1人が死亡 行橋市
(平成27年4月4日)
4日午前10時40分ごろ、福岡県行橋市内の建設現場で、男性が深さ約1.8メートル、幅約1メートルの配管用溝の中で作業中、土砂が崩れ、埋もれる事故があった。男性は同市内の病院に搬送されたが、同日午後0時6分、死亡が確認された。 福岡県警行橋署で原因などを調べている。 |
西日本新聞(←記事が削除されたらしく、リンクが切れているみたいです)
この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「地山・岩石」です。
幅1メートル、深さ1.8メートルに掘られた溝の中で、配管を置く作業をしていたところ、側面の土壁が崩れ落ち、被災者を飲み込んでしまいました。
掘削した穴や溝の底に降りて作業をするばあい、地上にはない危険があります。
それは、土壁が崩れ落ちてくるということです。
地面を掘ると、掘削面はほんの少し刺激を与えるだけで、ボロボロと崩れることがあります。
掘削作業時の衝撃で、き裂ができていたならば、なおのこと崩れ落ちやすくなります。
土質にもよりますが、土の固まりは、非常に重いものです。
体の上に降ってきたら、打撲どころでは済まない衝撃となります。
また足首程度埋まるだけで、もはや身動きは不可能となります。
穴の中での作業というのは、このような危険と隣り合わせなのです。
当然、土壁の崩れへの対策もあります。
こういった場合の対策として、最も行われているのが、土止め支保工でしょう。
土止め支保工は、土壁の前に壁を1枚作り、土砂が落ちてこないようにするものです。
この事故では、どうやら土止め支保工は使われていないようでした。
もう1つの対策としては、掘削壁を垂直ではなく、角度をつけてやることです。
断面が底が狭く、地表を広くという台形を逆さまにしたような形になるようにするのです。
角度をつけることによって、土の塊がごそっと崩れ落ちることを防げます。
法的には、手掘りの場合の対策として、適切な傾斜をつけるようにとありますが、土止め支保工を設けられないのであれば、そういった手段もあります。
それでは、原因を推測してみます。
1.掘削溝の土壁が崩落してきたこと。
2.掘削面が崩れやすい状態だったこと。
3.土止め支保工のなどの土砂崩れ対策を行っていなかったこと。
深さが2メートル以上になると、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者を選任する必要はありますが、この事故現場では深さが1.8メートルということもあり、不要でした。
しかし、掘削作業を行う際には、地山の土質などは知っておく必要があります。
また掘削後、作業者が穴に入る前には、き裂や浮石、地下水の状態などを点検しておく必要があります。
仮にき裂などがあれば、あらかじめ崩しておくと、作業中に落ちてくるということが防げます。
幅1メートル、深さ1.8メートルという掘削断面であり、おそらく垂直に近い掘り方だったのではと思われます。
土壁は垂直に近いほど、崩れやすくなります。
2メートルまでであれば、砂質土などでなければ、垂直に掘り下げることはできます。
しかし、たとえ1メートル程度の深さであっても、土壁は崩れる時は崩れてしまいます。
膝程度の深さしかない場合はともかく、体がすっぽりと穴に入ってしまうのであれば、土止め支保工を行うのが、安全です。
では、なぜ土止め支保工を行わなかったのか?
はっきりとは分かりませんが、経験上こんな理由がありそうです。
今まで、土壁が崩れることはなかったから、大丈夫だと思った。
1日で掘削から埋め戻しまで行うので、土止め支保工を行うと、作業が遅れる。
今回の事故も、こういう理由で土止め支保工を行わなかったというわけではありません。
あくまでも経験上の推測です。
配管を埋設するのであれば、1箇所あたりの作業時間は、1日もかかりません。
その日の内に埋め戻しまで行えます。
掘削して開口している時間は短時間だから、わざわざ土止め支保工を行うまでもないという気持ちは、分からなくもありません。
しかし、どんな短時間であっても、土壁が崩れる時は崩れてしまいます。
安全を期するならば、深さや作業時間に関わりなく、土止め支保工などの安全対策は検討してくことが大事です。
対策を検討します。
1.作業前、掘削溝に入る前には、土質やき裂、地下水の状態などを点検する。
2.土止め支保工を行う。
3.作業手順、安全教育などで、安全意識を高める。
いつも大丈夫だから、今回も大丈夫と思うのではなく、毎回きちんと対処することが大切です。
その対処とは、点検を行い、土止め支保工を行うことです。
きちんと対処するためには、何よりも作業者の安全意識を高めることが欠かせません。
なぜ点検が必要なのか、なぜ土止め支保工が必要なのか、なぜ作業手順を守らなければならないのか。
作業が優先になると、安全対策などが後回しになります。
しかし、危険は作業の都合など考えてくれません。
事故はいつでも起こり得るのです。
土木工事では必須といえる、土を掘る作業にも、危険が潜んでいます。
年中やっている作業だからこそ、きちんと安全を確保するということが、大事なのです。