厚生労働省労働局長登録教習機関
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仕事によっては、とても危険なものを取り扱ったりします。
化学工場であれば、様々な化学物質を扱います。
中には、ほんの少量で人の命を奪うものも少なくありません。
製造業においても、製造や加工の過程で、薬品を使います。
人体に触れる前には、残らないようにしていますが、もし流出しようものなら、多大な影響をあたえるものもあるのです。
とても、身近にある危険物取扱所としては、ガソリンスタンドではないでしょうか。
車を扱う限り、ガソリンまたは軽油は欠かせません。
ガソリンは実はとても危険なものなのです。
どう危険かというと、分かりますよね。
とにかく、着火しやすいのです。
低い温度でも気化しますし、少しの火花で燃え上がります。
燃え上がる勢いは凄まじく、爆発することも少なくありません。
ガソリンの保管、取り扱いには、危険物取扱乙4の資格が必要になります。
それだけ、専門的な管理を必要とするものといえます。
昨今のガソリン価格の、乱高下はガソリンスタンドの経営に大きな影響を与えました。
また地下の保管タンクが老朽化し、やり替える必要があるものの、費用はかなりかかるようです。
そういった理由もあり、地方のガソリンスタンドでは、閉めてしまうところもあるようです。
私の会社の近くのガソリンスタンドも、昨年店じまいをされました。
こういった光景は、今後増えてくるのかもしれません。
店じまいしたガソリンスタンドでは、地下にタンクを抱えることになります。
そのまま放置ということもあるでしょうが、跡地に別の建物を作ろうとすると、タンクをそのままにしておけません。
解体し、撤去することがあります。
ところが、今は使っていないとはいえ、ガソリンを保管していたタンクです。
取り扱いを誤ると、大きな事故になってしまいます。
静岡県の西伊豆町で、まさにガソリンスタンドのタンク解体中に爆発するという事故がありました。
今回は、この事故を取り上げ、原因の推測と、対策を検討してみます。
タンク解体中、爆発 1人負傷 西伊豆
(平成27年4月15日)
15日午後3時半ごろ、西伊豆町仁科のガソリンスタンド跡地で、埋設されていたガソリンタンクの解体中に爆発が起こった。作業員の男性がやけどをして病院に運ばれた。命に別条はないという。
また、爆発の衝撃で直径1・4メートルのタンクのふたが飛ばされ、約27メートル離れた会社事務所の2階の窓を突き破って室内に入った。部屋は無人だった。 下田署と下田消防本部によると、男性は同僚2人とタンクの水を抜くためにガスバーナーで穴を開けていた。内部に残っていたガソリンに引火した可能性が高いという。 会社事務所の1階にいた女性は「『ドン』と大きな音がして建物が揺れた。2階に人がいなくて本当に良かった」と話した。 |
この事故の型は「爆発」で、起因物は「爆発性の物等(可燃性ガス)」です。
今は使われていないものの、以前はガソリンを満たしていたタンクを取り壊す時に、起こった爆発事故です。
原因は、タンク内部に溜まったガソリンです。
タンクの内部のガソリンは空になっていたようですが、蒸発したガスは残ったままでした。
ガソリンが怖いのは、0℃よりも低い温度でも、蒸発することなのです。
実は油などの可燃性のものでも、液体に火がつくわけではありません。
液体から気体になって、初めて火が着くのです。
タンクの中に溜まっていた、ガソリンの蒸気は、着火する準備が整っていたのです。
ガソリンが燃え上がった時のエネルギーは凄まじいものです。
この事故では、1.4メートルもの蓋が約27メートルも飛んだとか。
飛んだ蓋は、木やプラスチックではありません。鉄製のものだったでしょう。
それが吹き飛ぶのですから、相当な勢いだったと思います。
近くにいたら爆弾が落ちてきたと勘違いしたことでしょう。
作業者も怪我をしましたが、命に別状がないのは幸いでした。
事故の原因は、ガソリンが充満しているのに、近くで火を使った。
これに尽きます。
事前に残留物がないかを、調査をしなかったということも、事故を招いた原因といえるでしょう。
それでは、原因を推測してみます。
1.ガソリンが充満しているにも関わらず、近くでガスバーナーを使用したこと。
2.事前にガソリンが残留しているか、調査していなかったこと。
3.換気などにより、残ったガソリンを排出しなかったこと。
作業者はもうガソリンスタンドは使っていないから、何も残っていないだろうと思ったのかもしれません。
しかし一度でも使っている場所なのですから、残留ガスが残っている可能性は考えておくべきでした。
きっと、ガソリンの臭いもしたのではないでしょうか。
もしガソリンが液体で残っていなくとも、ガスは排出する必要があります。
排出のためには、タンクの中の空気を追い出し、換気しなければなりません。
引火物のある近くで、火を使う前には、準備を万全にしなければなりません。
対策を検討します。
1.作業前には、タンク内部のガス濃度について測定する。
2.換気して、空気を入れ替える。
3.作業者に、作業手順などを徹底させる。
タンクなど、閉鎖されているところでは、いつまでもガスが残ることがあります。
特に空気よりも重いガスの場合、底にたまっています。
残念ながら、ガスは目に見えません。
そのため、閉鎖された場所に入る前には、酸欠やガス濃度の調査が必須です。
その上で、換気を行いましょう。
ガソリンスタンドは、閉鎖されたとしても、わずかながらのガソリンは残り続けます。
単なる解体作業ではありません。
引火物に対する、備えも大切な解体作業になるのです。