厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
犬尾沢たちのチームは、河川工事の現場に応援に行くことになりました。
この川は、昨年大雨で、土砂が大量に流れこみ、底が浅くなっているのでした。 そのため川の中を浚渫、つまりたまった土砂を運び出す工事をやっていたのでした。 とはいえ工事は、後半に突入しています。 工事の後半で、人手が足りなくなったので、応援に行ったのでした。 応援に向かうことになったのは、犬尾沢を始めとして、猫井川と保楠田、そして鼠川でした。 現場に着くと、犬尾沢は早速、現場監督と話し、作業内容などの確認から始めました。 犬尾沢が打合せを行っている間、猫井川たちは、作業場をぼんやり見渡していました。 昨日は雨降りだったので、やや土はぬかるんでいます。 「よーし、今日の作業を確認するぞ。」 打合せを終えた、犬尾沢は全員を集め、作業内容の確認を行います。 「あそこに置かれているショベルカーで、堤防の法面を整形してきます。 「土が湿ってるから、あまり締め固められないかもしれないけど、急ぎということで、進めていきましょう。 犬尾沢が作業内容を指示すると、それぞれ準備に取り掛かりました。 犬尾沢は小型のタンパ、振動で土を締め固める機械を持ち出し、猫井川と鼠川は、ジョレンやスコップを手にします。 「滑り落ちないよになー」 犬尾沢が改めてみんなに言います。 保楠田が乗り込もうとするショベルカーは、堤防の上にあるのですが、車体が半分法面に掛かっており、斜めの状態で停められています。 「よく落ちないもんですね。」 斜めに傾いて停められているショベルカーを見て、猫井川は疑問を口にします。 「意外とタフだよね。」 猫井川と一緒にショベルカーに向かっていた、保楠田が答えました。 「こういうのってタフっていうんですかね?」 軽く笑いながら、それぞれに持ち場に向かって行きました。 「こんなに傾いていると、かなり乗りづらいよ。」 車体が斜めなのですから、保楠田乗り込もうとしている出入口も斜めです。 斜面とは反対側に出入口があるので、扉を開け、中に降りて乗り込まなければなりません。 「扉が開けづらい。」 本来水平に開くはずの扉も、上に持ち上げなければなりません。 フンフンと力を入れて、何とか扉を開け、ようやく乗り込むことができました。 「乗り込むだけで、疲れるよ。」 保楠田がつぶやきます。 「ほんと、そんな感じですね。」 猫井川は、ハハハと軽く笑い、ショベルカーから離れて行きました。 ブォォォンと、エンジンを掛け、しばらく暖気した後、ショベルカーは動き始めました。 堤防の上に登りようやく車体は水平になりました。 少しずつ少しずつショベルカーで法面を押し固めていく一方、斜面の下側では犬尾沢たちが作業を行っていきます。 ショベルカーと手作業の違いはあれども、法面を固めていく作業には違いありません。 少しずつですが、機械と人とで協力し、仕事を進めていきました。 作業を進めていると、少し晴れ間がのぞいてきたので、湿った地面も少しずつ乾いてきました。 12時近くになり、お昼休憩をとることになりました。 昼食は、弁当を持ってきている人もいれば、買い出しに行く人もいます。 ちなみにエスパニョールのお弁当は、愛妻弁当でした。 猫井川たちが、道具をまとめている時、保楠田もショベルカーを停車しました。 「作業中だから、堤防の上に置いててもいいんじゃないですか?」 猫井川は言うのですが、現場監督の意向で念のため、そうしてして欲しいそうです。 「通行止めにしておけばいいのに。」 猫井川の言い分に、犬尾沢も「全くだ」と同意します。 そんな話をしていると、保楠田は停車し終え、車外に出ようとしました。 朝、出入口が上向きになっていて、入るのに苦労したので、今度は斜面側、つまり下向きにしていました。 そんな状態ですので、扉を開けると、ドーンと勢いよく開いてしまいます。 つるぅ! 足を置いた場所は、まだ生乾きの斜面です。 ザザザと音を立てて、3メートルくらい滑り落ちた所で、ようやくストップしました。 保楠田の作業着は上も下も泥がべったりです。 「大丈夫ですか!?」 その様子を見ていた、犬尾沢や猫井川が声をかけます。 「だ、大丈夫。足が滑っただけ。」 ゆっくり立ち上がりながら、保楠田が答えます。 「怪我はないですか?」 「大丈夫。どこも怪我はないよ。でもドロドロだ。。」 パンパンと作業服の泥を払おうとしますが、水気を含んだ土はべったりついてしまっていました。 「猫ちゃん、悪いけど、俺の弁当も買ってきてくれる。」 このままではコンビニにも行けないなと思ったのでしょう。 「あ、はい。分かりました。 「そうなんだよね。参ったよ。」 2人のそんな会話を聞いていた、鼠川がポツリ。 「扉を斜面に対して上とか下ではなくて、横にしたらいいんじゃないか。」 ハッ! それなら、もう少し早く言って欲しかったと思う保楠田なのでした。 |
今回は、ショベルカーの乗り降りの時のヒヤリハットです。
小型のショベルカーを除き、ショベルカーの運転席はガラスで覆われた部屋になっていることが多いです。
これは、飛び石や落石などから運転手を守ると同時に、雨や風もしのげるようになっているのです。
とはいえ、冷暖房がついていなければ、夏は暑くて、冬は寒いのはかわりありません。
運転席の扉は、車体の側面にあります。
扉を開けて、出入りします。
通常は車体は水平な場所で停車しますから、何の支障もありませんが、今回のように時として、通常ではない場所で停車していることもあるのです。
私も先日、近くの堤防の斜面で、斜めになりながら停まっているショベルカーを見ました。
ちょっと押したら転がり落ちるんじゃないかと思うほどです。
ショベルカーの足回りは、クローラー(キャタピラ)なので、タイヤに比べ安定度はあります。
しかし見ているだけで危うさを感じてしまうのですから、実際は本当に危険ではあります。
ほんの少しバランスを崩したら、機体ごと落ちてしまうことでしょう。
保楠田は、機体ごと落ちるのではなく、降りる際に本人だけ滑り落ちました。
これも幸いというわけではありませんが、怪我がなくて何よりです。
もし法面に石があれば、それにぶつかり大怪我になったことも考えられます。
作中では、現場監督の意向でとしていましたが、よい停車方法ではありませんね。
私が斜めになったショベルカーを見たのは日曜だったので、作業停止中の通行者を配慮してかなと思われます。
作業を再開する時に、なるべく重機は作業場付近においておきたいというのは、十分に理解できますが、工事関係者以外も行き交う場所なのですから、もうちょっと置く場所は考えてもいいんじゃないかと思いました。
最後に、鼠川が「扉を法面に対して横にしてもよいのでは」と言っていましたが、アームの向きを考えると、いい停め方ではないです。
保楠田たちは、ニュートンの卵!の如く、驚いていましたけどね。
さて、今回の話をまとめます。
ヒヤリハット | 堤防の斜面でショベルカーを停車したら、降りる時に、斜面を転げ落ちた。 |
対策 | 1.ショベルカーなどの重機は、平で安定した場所に置く。 2.乗り降りする時に、危険がないような位置に扉を向ける。 |
ショベルカーなどの重機は、作業中にも危険がないようにしなければなりません。
しかし、停める、動かし始めるといった動作の時にも注意が必要です。
ショベルカーは、悪路でも安定して動きます。
その分無理をきいてくれる機械です。
しかし、それに安心して無理をさせすぎると、一気に崩れ落ちることもあります。
少々法面で、斜めに停車しても大丈夫でしょうが、それが当たり前と思うのは避けたほうがいいです。
自分が安心だなと思える範囲での、運用が機械にとってもよいのではないでしょうか。