厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
先日、法面整備に入っていたのですが、その仕事も無事に終わりました。
とは言うものの、まだ仕事は猫の手も借りたいほどの人手不足のため、今日も犬尾沢たちは、手伝いに入ることになりました。 仕事は、終盤に差し掛かっています。 「よし、今日はダンプで土を運び込んで、ショベルカーで均して行きます。 犬尾沢の指示の下、それぞれの作業にかかりました。 「犬尾沢くん、土はどこから持ってくればいいの?」 ダンプに向かう保楠田が、尋ねました。 「あー、元請けさんがいつも買っているところがあるらしくて、そこを使ってくれということらしいです。場所はですね、ここからそう遠くないんですけど。」 「うちの会社が普段使っているところじゃ、ダメなんだね。 「ダメなんですよ。今回は指定されてて。 「まあ、行って元請けさんの名前を出したら分かるのかな?」 「ええ、あとは現場名を言ってくれれば、積むのはやってくれるそうですよ。」 「そうか。じゃ、ひとっ走り行ってくるよ。」 そう言うと、保楠田は4トンダンプに乗り込み、走りだしました。 堤防の道幅の関係上、今回は少し小さめの4トンで、何往復もしなければならないのでした。 保楠田を見送ると、犬尾沢はショベルカーに乗り込みました。 鼠川と猫井川は、均した土を締め固める役割を行います。 猫井川は、ハンドガイドが付いた振動ローラーを使います。鼠川は、ジョレンでショベルカーで均しきれない場所を整えていくのでした。 ハンドガイドローラーは、大きな鉄の筒状のローラーが2つ付いた機械です。ローラーが振動して、土を締め固めていくのです。 「振動が腰に悪くてな。」 鼠川は、そう言って猫井川にローラーを使わせたのでした。 「土はどんどん運び込まれてくるから、こっちはできるところから締め固めていこうか。」 鼠川と猫井川は、ショベルカーが大体平坦にしていった場所を、しっかり締め固めていきました。 しばらく作業を続けていくと、保楠田が運転するダンプの第1便が到着しました。 「それじゃ、降ろすよ。」 犬尾沢と土を降ろす場所を確認して、荷台を傾けます。 ドサーと大きな音を立てて、降ろされた土はこんもりとした山になりました。 「オッケーです。次もお願いします。」 土が全て降ろされたことを確認し、犬尾沢は保楠田に合図しました。 プッとクラクションを鳴らし、保楠田はまた土を受け取りに出かけました。 土の山をショベルカーで崩し、敷き均す。 この作業を繰り返しました。 何度目かの土の持ち込みの時、鼠川がジョレンを置き、ダンプに近づきました。 「おーい、保楠田。ちょっと待ってくれ。」 「はい、何ですか?」 ダンプはバックしている途中でしたが、保楠田は一旦停車し、尋ねます。 「いや、ちょっとな。」 そう言うと鼠川は、助手席側のドアを開け、上半身だけ潜り込ませました。 「・・・そういうことだから、頼むよ。」 話し終えると、上半身を車外に出して、作業に戻ろうとしました。 助手席のドアは開いたままです。 5歩、10歩とダンプ荷台の脇を歩いている時でした。 どうやら、助手席のドアが開いていることに気づいていないようです。 鼠川の後方から迫る、開かれたままのドア。 このままでは跳ね飛ばされれる。 ビーーーーーと、大きなクラクションが鳴り響きました。 その音にビクッとして、ダンプは停車し、鼠川も足を止めます。 「ダンプ!ドア開いてる!鼠川さんに当たる!」 クラクションの主は、犬尾沢でした。 その叫びにハッと気付き、保楠田と鼠川は助手席を見ます。 ドアは全開になっており、鼠川まであと1メートルまで迫っていたのでした。 「危ないとこだった。」 2人のつぶやきは、ほぼ同時にこぼれたのでした。 その後、ドアをしっかり閉め、地均し作業に戻ってきた鼠川は、 「ワシもモウロクしてきたのかな。あんなドアを閉め忘れるなんてなかったのに。」 とこぼしたのでした。 「いや、忘れてしまうことはよくありますよ。 猫井川が、励まそうと、そう言ったところ、 「いや、お前はもう少ししっかりしないといけないな。」 と、なぜか理不尽にも、返り討ちをくらってしまったのでした。 |
今回のヒヤリハットは、開いた車のドアに接触してしまうかもしれないというものでした。
ドアを閉め忘れまま、車が動き、ドアに激突される。
この手の事故は意外と少なくないのです。
車はゆっくり走っていても、激突されると、かなりの衝撃になります。
それは車体本体でなく、ドアであっても同じことなのです。
もし開いたドアに当てられたりすると、体は耐え切れる簡単に転倒してしまいます。
打ちどころが悪ければ、大怪我になります。
さらに柱や壁などの構造物や他の機械があって、これらとの間にはさまれてしまうと、大怪我になってしまいます。
たかがドアの閉め忘れですが、そのドアに激突されたり、はさまれたりする事故は、死亡や重症の原因になるのです。
幸い、今回は当たる直前で防ぐことができました。
あのまま気付かず、当たっていれば、鼠川は弾き飛ばされ、堤防の下まで転がり落ちていたことでしょう。
事故まで、間一髪だったと言えます。
ついウッカリで起こりがちな事故でもあります。
理想は、自分できちんとチェックすること、そして別の誰かによるダブルチェックできればよいのですが、常にそういうことができるわけではありません。
ミスをなくせと、言うだけなら簡単です。
実際は、そう簡単ではありません。
うっかり、ぼんやり、何となく、ミスを引き起こす原因は、いくらでもあります。
誰もミスをしたいなんて思っていないでしょう。
しかし、ほんの少しのミスが、大きな事故を招くこともあることは覚えておく必要があります。
ヒヤリハットをまとめます。
ヒヤリハット | 開きっぱなしのドアが、背後から迫ってきた。 |
対策 | 1.ドアは開けた人が確実に閉める。 2.運転手や周りの人も、ドアの状態を確認。 |
ついウッカリや、チェックミスによる事故は、この例に限らず少なくありません。
少し転ぶ程度ならともかく、高所作業車のゴンドラに乗ったまま移動した時に、建物の入口の高さを見誤り、ゴンドラ手すりと建物との間にはさまれて、亡くなるという事故もあります。
構造的には、今回のヒヤリハットと同じですが、致命的な事故になった例と言えます。
1人ではチェック漏れも起こりやすくなります。
できるならば、複数でチェックしたいものです。
さらに誰かがやっているから自分はやらなくてもいいだろうと思わず徹底することが、確認ミスを減らす手立てかもしれません。