○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、飛び石に狙撃さる

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

どんどん気温が上がり、新緑が芽吹き、雑草もたくましく育つ季節になります。

河川敷も手入れをせずに、伸びるがままに任せておくと、うっそうとした茂みになっていきます。

この度、河川の整備工事を担当することになった犬尾沢は、早速現場の下見に来ました。

「だいたいこの辺りが工事現場かな。
 それにしても草が繁ってて、地形がさっぱりわからんな。
 何をするにしても、まずは草刈りをしないと、どうしようない。」

とりあえず、その日は現場状況を何枚かの写真に収め、戻っていきました。

事務所に着くと、ちょうど手の空いている、猫井川と鼠川を呼びました。

「今度から入る河川の現場に行ったたけど、草がぼうぼうだったよ。
 それで、測量するにしても、草を刈らないと、さっぱり地形がわからないから、2人でやって欲しいんだけど、行けます?」

「大丈夫ですよ。鼠川さんも大丈夫ですよね。
 今ちょうど手は空いてるんで。今から行くんですか?」

猫井川がそう答えると、鼠川も軽くうなずき、了解しました。

「いや、今日は準備だけしておいてくれ。
 明日、また俺が現場に案内するから。」

「分かりました。バギーの草刈りは使っていいですか?」

「あれは、確か壊れてるんじゃなかったかな。
 とりあえず、手持ちのでやってもらうしかないかな。
 何日か掛かるかもしれないけど、頼みます。」

「結構広いのか?」

犬尾沢が数日かかると言ってのを受けて、鼠川が尋ねました。

「うーん、まあまあですね。」

「重機入れたほうが早いんじゃないか?」

「そうなんですけど、現場に入る時になりますね。
 とりあえずは、地面が見える程度に刈って、測量からですね。」

「そうか、骨が折れそうだな。」

やれやれと言った感じで鼠川はつぶやきます。

「大変ですけど、お願いします。」

つぶやく鼠川に、犬尾沢はお願いしたのでした。

「猫井川、草刈り機の新しい刃はあったか?
 準備しておいたほうがいいかもな。」

「替刃はないかもしれないので、買っておいたほうがよさそうですね。」

鼠川と猫井川は、早速準備に取り掛かっていきました。

翌日、朝から犬尾沢に案内され、猫井川と鼠川は現場に向かいました。

「おー、聞いてた以上に草がぼうぼうだな。」

現場を見て、鼠川は言いました。

「これ、2人で終わるんですかね。」

猫井川も、同意します。

「範囲は、あの橋から、こっちの橋の間で。
 他に手が空いた人がいれば、応援に寄越しますので。」

「頼みます。多分何日かかかるかもしれないんで。」

「分かった。それじゃ、2人お願いします。」

犬尾沢はそう言うと、事務所に帰って行きました。

「さて、はじめましょうか。
 あっちの橋から刈っていきましょう。」

保護ゴーグルなどを着け、2人は河川敷に降りて行きました。

そして、草刈機のエンジンをかけると、ブイーンと音が響きました。
2人は足元の草から刈り始めたのでした。

草は刈りやすいものばかりではありません。
背の高い者もあれば、茎の太いものもあります。

足元が悪い中、やや苦戦しながら少しずつ刈る範囲を広げていったのでした。

しばらくすると2人も汗をかいてきます。

「かなり暑いですね。」

「ああ、まだ夏ではないのにな。暑いな。」

汗を拭きつつ、進めていきますが、汗は次から次へと流れてきます。

「暑い、脱ごう。」

猫井川はそういうと、作業服の上着を脱ぎました。

猫井川が暑さに音を上げていますが、一方の鼠川はまだ平気そうな顔をしています。

「真夏になったら、もっと大変だからな。暑さに慣れていかないとだ。」

そう言って、ブイーンブイーンと草刈機を右へ左へ動かし、なぎ払っていまいた。

その時です。

鼠川の草刈機からカツンという音がして、何か刃に引っかかる感触がありました。

と、同時に猫井川のゴーグルもカキーンという音がして、少し頭がのけぞってしまったのでした。
「何だ???」

衝撃に驚いた猫井川は周りを見渡しました。
そして右目だけがぼんやり霞んでいるのに気づいたのでした。

「えっ、えっ?」

目の霞に驚いた猫井川は、ゴーグルを外しました。
ゴーグルを見てみると、右上にヒビが入っていたのでした。

猫井川は、ゴーグルのヒビを見て、ぞっとするとともに、安堵も感じました。

「ゴーグルがなかったら、危なかった。」

ふと、足元を見ると、矢じりのように尖った石が1つ。

「これか。」

拾い上げて、よくよくその尖りを見つめると、冷たい汗が背中を伝うのでした。

「猫井川、どうした?」

そんな猫井川の様子に、鼠川が尋ねました。

「いや、石が飛んできて、ゴーグルが割れてしまったんですよ。」

「えっ!わしか?」

「多分。」

「そうか、すまん。」

「仕方ないですよ。」

「ゴーグルって大事だな。新しいの買ってやるよ。」

そんなやり取りをして、2人はまた草刈りに戻っていくのでした。

猫井川は、割れたゴーグルをしっかりと着け、改めて飛び石に備えるのでした。

今回は、春から夏にかけてよく行う草刈りのヒヤリハットです。

草刈りをする時は、手持ちの草刈機やバギーのような草刈機などがあります。
河川の工事のように大規模に行う場合は、ショベルカーなどで一気に掘り返してしまうこともあります。

草刈りでは、地面は草で覆われているので、足元は見えません。
とても足場が良いとはいえません。

また地表すれすれで、草刈機をはわせます。
その時に、今回の話のように石を弾き飛ばしてしまうことがあるのです。

実は、草刈機による飛び石の事故というのは、結構あるのです。

猫井川のように人に当たることもありますが、多いのが建物や車に向けて飛ばしてしまい、ガラスが割れてしまうというものです。

以前、安全講習会に参加した時にも、草刈りで、ガラスを割ってしまいクレームがつくことが多いので注意するようにとの指導がありました。

わざわざ講習会で言うのですから、1件や2件ではないようです。

草刈機は、刃が高速回転することで、草を切るというのが一般的です。
この回転で弾き飛ばされた石は、勢いがつき、ほんの小さなものであっても、強い衝撃となるのです。

それはちょっとした隕石の衝突であるともいえます。

大きなものであれば、猫井川のゴーグルのようにヒビ割れを起こしてしまうこともあるでしょう。
もし体に当たるようならば、うずくまるほどの痛みを受けたかもしれません。

足元が見えない状況ですので、弾き飛ばしそうな石を避ける事は、まず無理です。

注意するとしたら、石が飛んでも被害がないようにすることです。

刃は一方向に回転します。
弾き飛ばされそうな方向に方向に、人や建物、車がないことを確認します。
近くに建物などがあるようでしたら、そちらに背を向けて刈るというのも、予防になりますね。

ヒヤリハットをまとめます。

ヒヤリハット 草刈機で、石が弾き飛ばされ、ゴーグルに当たった。
対策 1.刃の回転方向を考え、飛び石の先に当たるものがないことを確認する。
2.人や建物がある場合は、そちらに背を向けて、作業する。

飛び石は方向によっては、自分自身にも向かってきます。
草刈りの時は、暑くとも最低限の保護具を身につけることが大事です。

保護具としては、目を保護するゴーグルや、顔全体を覆うカバーなど、体を覆う前掛けなどがあります。

また足元も見えない状態です。
ぬかるんでいる場所もあるでしょうし、時にはマムシなどの蛇が潜んでいるかもしれません。
長靴で入らないと、何があるかわかりませんね。

草刈りは、工事に限らず、自宅や地域で行うこともあるでしょうが、その場合も飛び石などには注意するのが良さそうです。

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