○事故事例アーカイブ火災・爆発

工場出火、住民避難呼びかけ 名古屋市中川区

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製品を加工し、組み立てるプロセスでは、とても慎重な取り扱いを必要とするものも、少なくありません。

ほんの1滴漏れるだけでも、害になるという薬剤も中にはあります。

可能ならば、人体や環境に害を及ぼさないような薬剤というのが理想でしょうが、現実的なところ、代替品になるものも限られています。

多くの害をもたらしかねない薬剤等なので、管理は厳重に行われています。
SDSの発行や、保管方法、使用時の局所排気設備などは、作業者や工場周辺の住民の生命を守ることになるので、徹底されています。

もし管理がずさんだった場合はどうなるのか。
何十年も前に石綿工場があった大阪の泉南地域では、今も石綿による疾病に苦しむ人がいて、その裁判が継続しています。

当時は管理について、曖昧だったこともありますが、危険物の被害は、何十年も続くものなのです。

工場での製造過程では、有害な薬剤等の危険物の取り扱いは必要です。

そして取り扱い際しては、重大な責任が伴うのです。

特に住宅に囲まれた工場では、周辺住民に対しても重要な責任があることを忘れてはいけません。

名古屋市中区の金属加工工場で、火災がありました。
この火災は単に工場が燃えるだけに留まらず、大きな被害が予想されたので、周辺住民が避難するという騒ぎになったのでした。

大きな被害とは、工場で使用していたエタノールによる爆発です。
幸い爆発にまでは至らなかったようですが、大事故の一歩手前までとなった事故でした。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

工場出火、住民避難呼びかけ 中にメタノールのドラム缶(平成27年5月11日)

11日午前9時ごろ、名古屋市中川区八家町の金属加工業で出火、鉄骨平屋建ての作業場の内部が焼けた。中に可燃性のメタノール入りのドラム缶があり、爆発の危険性があるとして、愛知県警中川署や名古屋市消防局は周辺の住民に一時、避難を呼びかけた。

署によると、この火災で作業場にいた社長の男性(55)がやけどを負い、病院へ搬送された。命に別条はないという。当時、作業場には従業員ら計14人がいたといい、署は出火原因を調べている。

現場は名古屋駅から南へ約2キロの住宅地。住民や近くのスーパーの買い物客らが避難し、騒然となった。作業所の向かいに住む女性(94)は9時20分ごろ、自宅を訪ねてきた消防隊員に促され、外に出た。火や煙は見えなかったが、隊員の案内で離れた場所に避難した。「こんなに大勢が避難する騒ぎになるとは」と驚いた様子だった。

朝日新聞

この事故の型は「火災」で、起因物は、原因が分からないので不明です。

調べてみると、金属加工において、メタノールは雰囲気熱処理という過程で使用するとのことです。

熱処理炉内にメタノールを雰囲気、つまりガス状にして満たしておくと、金属表面の酸化を防いでくれるとのことです。

この工場でも、熱処理過程で使用したのかもしれません。

メタノールは、融点が低く、常温では液体です。
揮発性が高く、引火性も高いため、危険物第4類に指定されます。

要するに、ものすごく燃え広がりやすい物質なのです。
ガソリンのほうが燃えやすいといえますが、実のところ同じくらいの危険性があると言えます。

メタノールといえば、摂取するだけでも危険です。
戦後、アルコールの代わりにメタノールやエタノールを飲み、失明したなんて話も聞いたことがあります。

取り扱いには、慎重さが求められるのには間違いありません。

火災のあった工場では、ドラム缶にて保管していたようです。
ドラム缶近くまで火の手が及び、加熱されると、爆発するところでした。

周辺住民の避難は、万が一を考えての対処でしょうが、念には念をいれた適切な対応だと思います。

工場でも、社長が火傷を負うものの、命に別状がないということなので、人的被害はある程度抑えられたようです。

火災の原因は、その後の調査で明らかになるので、原因という原因を推測できません。
その上で、こんなことが考えられることを推測してみます。

1.金属加工の火花が、周辺の可燃物に引火したこと。
2.熱された機械や材料に、可燃物が接して着火したこと。
3.漏電していたこと。
4.タバコなど、消したと思っていた火が残っていた。失火。

何かしらの作業工程が原因でとなると、想像もつかなく、全て憶測の域を出ないので、原因とは言えないのですが。

旋盤作業や溶接作業では、火花を周辺に飛び散らせてしまいます。
この時、紙や布など燃えやすいものがあると、火事の原因になります。

その場では分からなくとも、火種として潜み、時間が経ってから燃え広がるということもあります。

火気を扱う時は、周辺に注意が必要です。

また加工機械のメンテナンスを行っていると、グリス切れや故障が起こり、それが原因で過負荷、発熱ということがあります。

制御で過負荷防止があると、警報が出ますが、もしついていないと、発熱したままになり、さらなる故障の原因、場合によっては周辺の可燃物も熱して、発火ということも考えられます。

これは電気設備でも同様で、ケーブルが破れて内部の導線が露出したり、結線が外れていたりすると、発熱し、周辺を燃やしてしまいます。
またコンセントなどにホコリが溜まっていると、それが原因で火事になることもあるのです。

失火については、言うまでもありませんね。
家庭の火事でも、タバコが消えていなくてということも少なくありません。

これらの推測を元に、対策を検討してみます。

1.火気を扱う場合は、周辺から可燃物を除く。
2.機械のメンテナンスを行う。
3.電気設備の点検を定期的に行う。
4.残り火などの消火を確実に行う。

日常的な火災防止のためにはを総合すると、整理・整頓・清掃・清潔という4S、またはしつけを加えた5Sが大事なのではないでしょうか。

作業場では燃えそうなものは取り除く、機械や電気設備を常日頃から整備する。タバコなどの火の始末行うなどです。

機械の整備や電気設備については、外部の業者などの手を借りたりすることもあるでしょうが、安全安心に使うためには、それらも必要経費と言えます。

4S、5Sの活動は、作業環境を整えるだけでなく、同時に防火活動ともなります。

そして万が一、危険物が流出するなどの危険がある場合は、今回の火災時の対応のように避難する体制も、日頃から整えておく必要がありますね。

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