厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
コンクリート打設を行い、養生期間を経て、固まったコンクリートから、型枠を取外事を、俗に脱型、型バラシといいます。
日常的にコンクリートを扱う猫井川たちは、型枠を組み立てること、バラすこともよく行うのです。 猫井川も、幾度となくこれらの作業を行い、今では一人前とまでとは言いませんが、あるい程度は仕事を任されるようになってきたのでした。 今日の猫井川の仕事は、先週打設したコンクリートの脱型作業です。 「猫井川も段々仕事を任されるようになってきたな。」 現場に到着すると、鼠川が言いました。 「こういった雑用がほとんどですけどね。 「まあ、それは追々だな。 「いや、まだ持ってないです。 「そうか、それまでは現場経験を積むのが大事だな。 「ほんとに。学校出てからのほうが勉強することが多いですよ。」 「全くだ。何をするにしても、講習だー、試験だーというのが必要だから。 「そうですね。」 「それより、今は現場を覚えろ! 資格の話をしていたところ、何故か最後は説教になっていくことに理不尽さを覚えながら、作業に手を付け始めたのでした。 「犬尾沢さんから言われているのは、この型枠をバラして、コンパネとかは持ち帰ってくれということみたいです。 作業内容について、猫井川が簡単に説明をします。 「そうか、それじゃ、始めるか。 「はい。毎回言われるんですけど、そんなに信用ないですかね?」 「まあ、その辺りは仕事で示すしかないな。 ぐむむむと、言葉にならないうめきを出す猫井川でした。 2人はハンマーを手にすると、型枠を内から外へと叩いてきます。 カン、カンと叩くたびに、クギが抜け、型枠が外れていきました。 型枠を固定する桟木もどんどん取り外していきます。 取り外した桟木や木片は、後でまとめて片付けるため、近くに放り出しているのでした。 だいたい半分くらいの型枠外しが終わった時でした。 少し深くクギが刺さっていて、何度叩いても抜け切らないところがありました。 「鼠川さん、全然叩いても外れないんですけど、どうしたらいいですかね?」 困った猫井川は、鼠川に尋ねました。 「あー、そういう時は、バールを使ったほうがいいかもな。 そう言うと猫井川は、ハンマーをその場に置き、車に向かって歩き始めました。 車までの途上には、先ほどからバラしては、放り投げていた木片が散らばっています。 車の中からバールを取り出すと、肩に担ぎながら、元来た道を歩き始めました。 また木片が散らばる箇所を歩いていた時です。 踏み込んだ右足に少し抵抗を感じました。 何だろうと思い足元を見てみると、そこには木片が靴にぴったりと張り付いているのでした。 足を上げてみると、木片も一緒に付いてきます。 あれっと思って、よくよく見てみると、なんと靴のすぐ側にクギが生えているのでした。 幸い貫通したのは靴底のゴムだけなので、足に刺さってはいないようでした。 「鼠川さん、こんなことになってしまいました。」 足を持ち上げ、鼠川に見せました。 「おっ、どうなってんだ? 「ええ、大丈夫そうです。」 「もう1センチずれてたら、足を貫通してたな。」 「1センチですか。ギリギリですね。」 「もうちょっとだったのにな。惜しかったな。」 「洒落になりませんよ。」 クギは根本まで刺さっているので、足をぶらぶらさせただけでは抜けそうにありません。 猫井川は手にしたバールを使い、木片を押して、クギを抜いたのでした。 「バールもこんな使い方をされるとは思わなかったようだな。」 「全くです。」 「まあ、歩くときには足元を注意しろということだ。」 「今さらながら、刺さっていたらと思うとぞっとしますね。」 そう言うと、散らばった型枠材を片付ける、猫井川なのでした。 その後、作業は順調に進み、無事型枠のバラしと出来形の写真撮影は終わりました。 今回の猫井川は、2箇所コンクリートを傷つけ、モルタルで補修となりました。 その様子に、 「やっぱり、次もコンクリート傷つけるなよと言わなきゃならんな。」 少々呆れ気味の鼠川なのでした。 |
今回は、踏抜きのヒヤリハットです。
型枠通しは、クギでつないでいきます。
コンクリートの圧力は非常に強いため、1箇所につき何本ものクギで固定し、さらに桟木で囲うなどして、頑丈にしていきます。
型枠はコンクリートが固まるまでの間は必要ですが、固まったらばらしていきます。
型をばらすときに注意しなければならないのが、取り外した残材による怪我でしょう。
木の切れ端やクギなど、無防備にしていると怪我にするものがたくさんあるのです。
危険とわかっていても、慣れていると気にもとめなくなるもの。
クギが空を向いて放置されていても、現場では放置されることもしばしばではないでしょうか。
建設業では、ほとんどの場合、作業時は安全靴を履きます。
しかし安全靴は、つま先のところに鉄板などで補強されているものがほとんどです。
実は靴底はゴムのままなので、踏抜きには弱いのです。
単純に靴底にも鉄板を入れて補強すればとも思うのですが、そうすると靴が曲がらなくなり、歩きづらいことこの上なしになるので、実用的ではありません。
鉄板のインソールというのもあるのですが、これも歩きづらくなるので、コンクリートから鉄筋が飛び出て撤去できない場所などで、使用するに限られます。
踏抜きは、足元、足の裏を襲う事故なので、注意が行き届かない恐れがあります。
五寸クギなどは容易に足を貫通してしまいます。
実は転倒と同じくらい危険なのが、踏抜き事故と言えます。
猫井川は幸い、靴底を貫通させただけですみました。
鼠川が言うように、もしあと1センチ内側だったら。
無意識の力は加減がないので、クギが足からはえていたことになったでしょう。
想像するだけでも、痛くて怖いですね。
それでは、ヒヤリハットをまとめます。
ヒヤリハット | 型をばらした木片の間をあるいていたら、クギを踏み抜いた。 |
対策 | 1.残材は1箇所にまとめる。 2.残材がある場所はあるかない。 |
不注意による事故を避けるためには、事故の要素を極力減らすことが大事です。
事故の要素を減らすためには、整理整頓など4Sを行うことです。
今回の場合であれば、残材をその辺りに放り投げず、1箇所にまとめておけば、通路が確保できていました。
あちこちに荷物などが散らばっていると、物を置く場所と通路が、一緒になります。
つまり、通路に危険要素がたっぷりということになるのです。
建設現場であろうと、事務所であろうと4Sを徹底し、通路には物を置かない。
これが安全で最も基本的なことと言えますね。