○コラム

事故の責任は誰のもの?

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交通事故は、多くの場合、悲惨な結果になります。

車と衝突して、少々の怪我であれば、運がいい方。
障害が残ったり、意識が戻らなくなったり、死亡することもあります。

免許の更新時講習や、テレビ番組などで、交通事故でどんなことが起こるのかということを目にしたこともあるのではないでしょうか。

交通事故が一度起こると、事故の当事者だけでなく、非常に非常に大きな影響を及ぼします。
被害者には、家族がいます。親戚、友人、会社、同僚がいます。
事故を起こした人にも同様に、家族や会社の同僚がいます。

業務中であれば、事故を起こした本人だけでなく、使用者責任ということで、会社も深く関係があります。

この人たち全員に重くのしかかるのです。

これは交通事故に限らず、労災事故も同様なのです。

 事故の責任

交通事故を起こしてしまった場合、どのような責任があるでしょうか。

免許取得や更新時講習などでは、次の4つの責任があると言われています。

1. 刑事責任
2. 行政責任
3. 民事責任
4. 社会的責任

これらの責任は、交通事故だけではなく、業務上の事故の場合でも変わりません。

それぞれはどんな責任を果たさなければならないのでしょうか。

刑事上とは、警察による捜査とその後の裁判です。
労災事故であれば、労働基準監督署が捜査、送検を行います。

行政処分とは、免許であれば免許停止や取り消しなどの処分になります。
事故が起これば、労働局から事故の再発防止の計画を出す必要があります。建設業であれば、自治体から指名停止処分となり、公共工事の入札ができなくなります。

民事とは、被害者への賠償や慰謝料、治療費などです。
近年は自転車事故などでも、約1億の支払いなどが命じられることがあります。

社会的責任は、目には見えない影響と言えます。
近所や世間から白い目で見られること、取引が停止されること、商品が売れなくなるなど風評被害があります。
事故の当人であれば、仕事をやりづらくなり、会社を退社することもあるでしょう。
何よりも、失った信頼を回復するのは、相当の時間と誠意が必要になります。

会社も同様の責任があります。
売上の激減、出費の激増、取引の停止、銀行への返済など。
余程の体力がないと、1つの事故が致命傷となります。

会社がなくなると、他の社員にも影響が及びます。
当然、それぞれの社員の家族にも影響が出てきます。

生活費はどうするのか、教育資金は、ローンの返済はどうするのかなど。
人事では済みません。

いずれも、多大な影響になるのは、想像に固くありませんね。

しかし、それに気づくのはいつも、事が起こってから、後悔とともになのです。

 事故を防ぐのは誰の責任?

事故が起こったら、関係者全員に影響が及ぶのは、わかると思います。

それなのに、事故は跡を絶ちません。
やはり毎年、約10万件以上の休業を伴う事故が起こり、約1000人の方が労災でなくなっています。

どうすることもできないのでしょうか?

いえ、実は耳寄りな情報があります。

事故は防止策をしっかり行えば、ゼロとは言いませんが、減らすことができるのです。

事故調査を見てみると、どうしても不可避の事故もありますが、あの時防げたかもしれないという事故も少なくないのです。

そして、これも耳寄りの情報なのですが、もうすでに多くの人は事故防止の方法を知っているのです。

例えば、労災事故で最も多くの死亡者があるのは、墜落事故です。
これは高いところからの落ちるという事故です。

建設業であれば足場や屋根などからが多いですが、倉庫の2階からなど業種を問わず、起こる事故でもあります。

墜落事故はなぜ起こるのか。
それは、床のない場所に足を踏み出す、高い場所でバランスを崩すということが考えられます。

安衛法などでは、墜落事故対策として、作業場所や作業内容により、様々な対策を規定してます。

一例を上げると、2階以上の建物で、床の開口部や端部には、手すりや柵をつけなけばなりません。
マンションのベランダには、床から大体胸の高さくらいまで、コンクリートの壁がありますね。これが柵です。もしベランダに、壁がなかったらどうでしょう。怖くて、ベランダに出れないのではないでしょうか。

これと同じで、開口部などの怖い場所には柵をつけなければならないことになっています。

しかし、仕事となると、平気で柵なしの所でウロウロする人が多いのです。
仕事の時だから、アドレナリンでも分泌されているのでしょうか。
怖さが麻痺してしまっているようです。

もちろん、最初は注意深かったでしょう。
しかし仕事に慣れてきて、作業を進める上で、柵などが邪魔になってくると、これが取り払われてしまうのです。

似たような例は、他にもあります。

このような場合、事故が起これば、誰の責任でしょうか?

安全対策を意図的に行わなかったとしたら、本人の責任があるでしょう。
開口部の例で言うと、柵や手すりを取り外していたや、安全帯を使用していなかったというものです。
自分に起こったことは、自分自身に責任があります。

ただし、どうしようもないことは仕方ありません。
ボイラーの調子がずっと悪かったのに、たまたま爆発の時に居合わせただけというケースでは、本人の責任とも言い切れません。
施設の状態確認や作業の進め方などは、管理者の責任を負うことです。
施設機械などの故障に対処しない、危険な作業手順をとらせていたとなると、事故の原因になったとも言えます。

しかしそもそも機械や施設が正常に稼働させるためには、事業者が適切に対応しておく必要があります。
予算や安全計画を定め、全ての作業者について責任があります。

どうやら、安全に対して責任を追うのは、次のとおりになりそうです。

○ 本人
○ 管理者
○ 事業者

これらの人は、労災事故の時に、警察や労働基準監督署から調査を受け、送検される可能性があります。
自己の責任を問われる立場と言えます。

しかし、これ以外のも、事故を起こした人と一緒に作業を進めていた作業者も、不安全な行動を直させるなどができたのではと思います。

また不安全な行動を許してしまう社内の雰囲にも問題があるのではと思います。

そう考えると、1つの事故には、ありとあらゆる背景があるのではないでしょうか。

 事業者の態度が事故を防ぐ

特に事業者の態度は大きな影響を与えます。

事業者が何を考え、どのような方針なのかが、安全対策にも影響があります。

安全に対する事業者の方針としては、大雑把に3種類分類できそうです。

1. 安全対策に否定的である
2. 安全対策は頭では分かっているが、徹底していない
3. 安全対策に積極的である

安全対策に否定的というのは、端から考えていないというものです。
作業者から、安全対策を提案されているのに無視するというもので、論外な態度です。

機械が故障しているから直して欲しい、過労なので休ませて欲しい、保護具を揃えて欲しいなどの意見があるのに、却下していると、事故を招きます。

長距離運転手に過酷なスケジュールを組み、疲労困憊して事故になるというのも、ニュースで見ますね。

こういった完全なる事業者の責任と言えます。

これらの原因は経営状態にあるでしょう。
新しい人を雇ったり、機械を修理したりする費用がない。
なんとか会社を回しているのでしょうが、1つの事故は全てを失わせるということは頭から飛んでしまっていると言えます。

頭では分かっているけれども、徹底していないのは、中小企業に多いのではないでしょうか。
社長や専務も現場作業を行っている場合です。

安全の大切さは、十分わかっています。
中には、同僚が事故にあったという経験を持っていたりします。
しかし、徹底的に安全対策をしているかというと、そうでもないのです。

理由の1つは、費用面があります。工面したくても、工面できないというものです。
もう1つの理由は、自身も現場作業をしているので、作業効率や作業の負担を考えてしまうからです。また自身も逐一やるのは面倒だというのもあるでしょうけど。

みんなに注意や指示では伝えます。「安全帯着けろよー」とは言います。
とはいえ、現場で安全帯を着けていなくとも、黙認してしまう。

実は、このタイプが一番多いのではと思います。

安全対策に積極的なのは、大企業など大きな組織でしょう。
専門のスタッフがいたり、トップダウンによる指示系統があるので、作業員の気分によらず徹底させることができます。

1の安全対策に否定的なところに対しては、大手術が必要になります。
行政の力も必要になるかもしれません。
徹底的な是正が必要です。

最も事故を減らすことに、効果があるのは、2の頭で分かっているけどタイプです。
ここに強く働きかけることとが、事故激減に効果的です。

なんといっても中小企業が一番多いのです。
こういった事業者が変われば、安全に関して、大変革です。

と言うものの、簡単ではありません。
課題は費用と、意識改革ですね。

費用も意識改革で、予算配分が変わる可能性があるので、大事なのは意識改革でしょうか。
自分も現場で率先して安全対策を行い、作業者にも行わせる意識です。

私があれこれ発信ししているのも、事故を減らすことが目的ですが、一番届けたいのは、こういった層の人だったりします。

最後に、まとめていみます。

事故の責任は、「本人」、「管理者」、「事業者」にあります。

事故を減らすには、中小企業の事業者、「安全対策について頭で分かっているけど、徹底できていない」人が「頭でわかっていて、徹底する」人に変わることです。

先人が、少しずつ安全の文化を創ってきました。
私たちは、これから受け継いだ安全文化を、より浸透させることにあるのではないでしょうか。

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