厚生労働省労働局長登録教習機関
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安全な環境を作ることは、事業者の責務です。
同時に、個人個人の義務でもあります。
事業者がやれるだけやっても、最後は個人次第。
本人に安全意識が欠けていれば、どんな対策も糠に釘ですね。
安全は個人の意識に頼っていては、いつまでも変わりません。
今すぐ必要なことなのです。
今すぐに安全行動をとらせること、意識に刷り込むためには、交通安全からというのが、案外有効なのかもしれません。
今回は、そんなお話を安全大会の話題としてみます。
事業者がやること、その限界。 |
事業者は、何よりも安全で、事故が起こらない環境づくりが義務になります。
その環境には、体制、設備、教育といったものです。
これらはただ最初に作ったら、あとは放置してもよいものではありませんね。
体制は状況に応じて変化します。
1つの事業所の従業員数に応じて、安全管理者、衛生管理者、産業医、総括安全衛生管理者などの設置が必要ですし、安全委員会も必要になります。
何より、業務内容により作業主任者や管理者を設置します。
法的に義務がなくとも、特に注意する特命管理者なんてのもあるかもしれません。
設備も安全に使い続けるためには、維持管理が必要です。
壊れたまま使っていると、事故になりかねません。
あまりに老朽化した場合は、買い換えることも事業者の責務といえるでしょう。
特別教育や技能講習などの、業務に応じた教育のほか、社内教育も重要です。
どんな仕事であれ、最初は誰もが初心者。仕事内容だけでなく、危険なこともわからないのです。
初心者はローラー機に引っ張り込まれるということも、想像がつかないのです。
何が危険で、どのように作業するのかを教えるのは、事業者の重大な責任です。
しかし、事業者の安全管理は、経営者や管理者から作業者へのトップダウン管理です。
強制力は抜群ですが、自発性に欠けます。
作業の一部になるので、中には「なぜこんなことを、やらないといけないのか」などと面倒だと思いつつ、行っているケースもあるでしょう。
私はそれでもよいと思っています。
理想は、作業者自身に安全意識が芽生え、高まり、自発的に安全行動することでしょう。
ところが、現実的な話として、そんな意識の芽生えは極めて稀です。
さらに、そんな意識の変化を待っている間に、事故が起こります。
事故防止は意識の問題ではありません。
大切なことは、行動なのです。
しかし、残念ながら、行動の最終決定権は、個人作業者の手にあるのです。
事業者は、実際の行動を実行させることにあります。
習い性になるまで |
事業者が、朝礼などで「安全に行動しろよー」と声掛けするのは大事です。
しかし、声掛けだけをしたところで、スルーされることもしばしばです。
行動をチェックし、是正勧告、場合によってはペナルティといったものが、行動を促進させます。
事業者と作業者の関係にもよりますが、事業者の悩みは、「言っているのにやってくれない」というものではないでしょうか。
この背景には、3つの課題があるのではないでしょうか。
1つ目の課題 「やる意味がわからない」
理由がはっきりせず、やらされることは苦痛です。
例えば、毎日朝礼で、腹筋腕立てをする会社があったとします。
それには、気分を高揚させるなど、会社なりの理由があるのかもしれません。
しかし、新入社員がいきなりそんな光景に出くわすと、訳がわかりません。
訳のわからないことを強制されると、疑問と反発心を持ちかねません。
安全対策には、理由があります。
朝ラジオ体操することにも、体をほぐし怪我を予防するという理由があります。
行動に「なぜ」を付け加えられないものは、ただの強制になります。
そのため、可能な限り行わないこともしばしばあるのではないでしょうか。
2つ目の課題 「今までと違う」
人は基本的に保守的です。
新しいものに踏み出すよりも、現状維持を望みます。
だからダイエットは難しいのですが。
それはともかく、新しいことをやろうとすると、些細な事でも反発する人がいます。
これはベテランに多く見られます。
今までなら、ヘルメットもかぶらなくてよかった。
そんな声も何度も聞いたことがあります。
しかし「昔」も必要でした。ただ、「今」は徹底されるようになったのです。
いかに、ベテランを理解させるかが重要な事です。
3つ目の課題 「やることが多すぎる」
急に色々なことを変えたり、一度にあれこれやらせすぎようとすると、指示を受けた方は混乱します。
混乱してきたら、何もかもどうでもいいやということになりかねません。
徐々に確実にです。
安全対策は、本来ならば、あらゆることを網羅したいです。
しかし、一度に全ては難しいのも現実です。
できることから、じっくり確実に、そして範囲を広げていくしかありません。
時間はかかります。
そのため、重大事故につながることは、最優先させます。
意識付けがなくとも、でき得る対策をとることも大事です。
一方で、長い目で見ると、確実に安全に行動するという習慣作りが大事です。
朝起きたら、顔を洗い歯を磨く用に、安全対策が無意識のレベルになるまでになると、この上なしです。
「習い性になる」という言葉がありますが、最初は意識して行動していたことが、習慣になると、事故を起こさない行動が身につくのではないでしょうか。
最初は身近なことの徹底から。例えば交通安全 |
何かしらの習慣を作るためには、とにかく繰り返す必要があります。
一説には、習慣形成には3週間続けることがよいとか。
安全もとにかくまず1つのことを徹底し、身になるんだということを理解するところから始めてもよいかもしれません。 些細な事でも、意図して達成したことは、自信になり、次の一歩につながります。
何から始めるか?
それは、仕事上の安全対策でもよいでしょう。
しかし、ここはあえて、どんな仕事でも関係している交通安全、交通ルールの徹底も有効ではないでしょうか。
特に日常的に車を運転する人であれば、毎日行う習慣になります。
交通ルールの中でも、まずはシートベルトの徹底から。
今やほとんどの人がシートベルトは着用しています。着用しないのは一部だけかもしれません。
もちろん、他のことでも構いません。乗車の前に、タイヤを足で踏んで空気圧を点検するといったことでも構わないと思います。
もし、着けていない人もいるなというのであれば、「エンジンを掛ける前に、シートべっルトを着ける」ことから徹底させるのもよいのではないでしょうか。
一時停止を必ず守るも徹底させたいのですが、出発時にチェックができて、すぐさま是正させられるということができないのが難点かもしれません。
些細な事を徹底させ、当たり前にまで刷り込む。
安全行動が持つ、面倒だ、作業の邪魔だ、違和感などの感情を取り除くのは、慣れるしかありません。
服を着ることに違和感を覚える人は少ないでしょう。ですが生まれた時は裸です。本来なら異物を身につけています。よくよく考えたら、不自然とも言えます。
しかし苦にはなりません。服を着慣れて、当たり前の習慣だからです。
保護具や安全対策を、その次元まで持っていければ、とても理想的です。
実は、交通ルールから守らせると考えたのは、私の会社で一部の作業者がシートベルトを着用していないことを見つけたからです。
すぐに注意したのですが、その日の夕方に、また未着用を発見したのでした。
非常にがっかりしました。
ほんの短い距離だから、不要と思ったのかもしれません。しかしそんなルールはありません。
よくよく振り返ると、その作業者はヘルメット未着用だったりと、度々注意することが多いのです。
シートベルトなどは、本人の意識が表す一例にすぎないと思ったのです。
事故を防ぐためには、まず行動を徹底させ、意識を作ること。
そのために、シートベルト着用の徹底から、行うことにしたのです。
そんな小さなことでと思われるかもしれません。
しかし、思うのです。
小さなことをないがしろにする者が、重要な事ができるはずがない。
まずは、日常的な小さなことを徹底させることがスタートなのです。
本人の意識変化など、後からついてくればよいのです。
もし自発的に変わるとしたら、本人が大怪我するか、周りの誰かが事故で死ぬかです。
それくらい大きなインパクトがないと、人の意識は激変しません。
当然、そんな状況は望んでいません。
西川きよし師匠がよく言われています。
「小さなことからコツコツと」
まずは、コツコツとシートベルトを確実に付ける習慣作りが、安全帯の標準装備にしたいものです。