厚生労働省労働局長登録教習機関
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今回は個人的に、ハートが熱くなった話です。
先日、中央労働災害防止協会(中災防)の主催で、「百戦錬磨スタッフに学ぶ安全衛生の勘所とコツセミナー」というものを受講しました。
これは「百戦錬磨のベテランスタッフに学ぶ安全衛生管理の勘所とコツ33選」という書籍のタイアップセミナーで、3人の著者から2人の方が話をされました。
講師は、このお二方。
古澤登先生
元トヨタ自動車で安全推進部担当をされ、現在は「安全と人づくりサポート」の代表をされています。
淀川芳雄先生
元三菱化学で安全衛生等に携わられ、現在は中防災でOSHMS評価などをされています。
お二方とも、長年の経験があり、現在も事業所診断や講習等、安全衛生の第一線で活躍されています。
どのような話だったかは、ご本人の著作や講習等で聞かれるのが一番だと思いますので、中身云々については割愛します。
そのため、以下の内容は私が特に感じ入ったことになります。
具体的にどんなことを話したんだと気になったら、ぜひ本を読んでください。
(古澤先生に、ブログに書いても良いかと聞いたところ、快くOKを頂きました。ただし、講演内容よりも、私が何を感じたかを書くことを希望するということでしたので、従いたいと思います。)
安全衛生って、楽しいもの |
最初に古澤先生がお話をされました。
開口一番「安全衛生に携わっている人を元気にしたい、エールを送りたい」と仰っいました。
そうです。 これなんです!
セミナーに申し込んだのが、1月近く前だったので忘れてました。
上記タイアップ書にあった一発目が、安全衛生に関わる人たちへのエールだったのです。
私はそのエールに押され、たまたま見つけたセミナーに申し込んだのでした。
古澤先生も、トヨタ時代に安全衛生推進部に配属になった時、「安全衛生かー」と言われたそうです。
メインの設計や製造ではない、間接部門はやや引け目を感じる時代。 これが発奮材料になられ、安全衛生の改革を進めていかれたようです。
安全衛生は、多くの会社でもメインではありません。
「安全第一」、「安全は全てに優先する」という言葉が掲げられていてもです。
メインは利益を生む仕事です。
そのため、安全への関心は、二の次です。
会社の規模が小さくなるほど、その重要性は小さくなります。
そりゃそうですよね。
金は産まないのに、安全対策に費用はかかる。
もともと多くない事故なのですから、対策した所で、効果は見えにくい。
しかし、一度事故が起これば、小さな会社は致命傷になりかねません。
法律上、安全衛生推進者など必要だから、役所がうるさいから、元請けがうるさいから、従う。 私の周りでは、まだそんな風潮を感じます。
そんな状況なので、やることに力は入りませんよね。
そもそも何をすべていいのかも、分からないでしょうし。
ある会社で、安全衛生スタッフに成りたての人が、協力会社を集めて安全大会をやった時に、資料として安衛法の系統を出してきました。
安衛法には安衛規則や施工令、クレーン則など関連法があるという資料です。
パワーポイントに書き込むのは大変だったでしょう。
ところが、残念。その資料は誰にも、何にも役に立ちません。微塵もです。
ちなみにこの会社は、上場企業です。
所詮、安全衛生でやることなんて、大同小異こんなものです。
しかし、そんな私たちにエールを送ってくれます。
いかにやりがいがあることであるか。
目に見える成果はないかもしれないけど、どれほどの人を守っているのか。
人が死ぬこと、大怪我をすることが、どれほど悲惨なのかを知り、それを防ぐことの意義を改めさせてくれます。
安全衛生管理者がやる仕事は、目の前の人、今日声を交わした人を死なせない、怪我させない、病気させないこと。
毎日、成果を出し続ける仕事であるとも言えます。
成果が見えると、楽しくなるものです。
今日は死ぬには、もったいない日だ |
古澤先生も淀川先生も、長年の経験から言われます。
「ゼロ災なんてない」
事故はなくならない。
どんなに法整備が進み、安全装置が発達し、KYなどを行っても、手を変え品を変え、事故は起こり、人は傷つきます。
ゼロにすることは、不可能です。 これは厳然たる事実。
全ての事故を防ぐことは不可能でしょう。しかし出来ることもあります。
事故を減らすこと。
何より、致命傷だけはゼロにしたい。
これが安全衛生管理の根幹と言えます。
古澤先生は、事業所診断に行ったら、「死ぬところを教えて」と言われるそうです。
ショッキングな問いかけです。
しかし、作業者はどこが一番危険か実はよく知っています。
どこで死亡事故が起こるかを知っています。
とにかくはこの死亡する危険をどうにかする。
暫定的な措置でもなんでもいい。とにかく死なせない。
これが最も優先されることです。
この話は、私の中でモヤモヤしてたものを明るくしてくれました。
最近、リスクアセスメントとはを考えるようになっていました。
危険源を見つけるだとか、評価するだとかの、プロセスは知っています。
でも、どうやればいいのかが分かりません。
まずは「死ぬところ」に対処する。
なんとも明快なのか。
確かに、リスクアセスメントは重大災害から対処するとあります。
しかし、小難しい書き方で、腑に落ちていなかったんですね。
それが「死ぬところを教えて」という言葉が、明確にしてくれた。
これが大きな気づきでした。
アメリカのネイティブ・アメリカンの言葉だったでしょうか「今日は死ぬにはいい日だ」というのがあったと記憶しています。
安全衛生管理では、毎日が「今日は死ぬにはもったいない日だ」にしていくことなんだなと思ったのでした。
理と情を混ぜ合わせて |
古澤先生は、ご本人の明るいキャラクターもあり、気持ちを上向きにさせてくれるお話でした。
一方、淀川先生は、OSHMS評価や様々な教育指導をされている関係か、とても理路整然としたお話です。
パワーポイントも非常に細かく、情報盛り沢山でした。
私が質問したことも、すでに分析されて、資料になっているのは驚きました。
社員がルールを守ってくれないなんてのが、スライドで出てくるとは。。
とても理に沿って話は進めていかれますが、時折なんとも強い情熱がこもります。
事業者、管理者が、いかにコントロールするのかを大切に考えておられるように感じました。 本当にたくさんの事業場を見て来られたからなんだなと感じます。
情報量が多かったのですが、時折声に熱がこもるのが印象的でした。
病は気から、安全も気から。 |
このセミナーでは、私が質問したことにも答えて頂いたのですが、これはまた別の機会に。
先に言われたことを試してから、書こうかなと思います。
安全衛生管理者にエールを送るセミナーとのことでしたが、その意図通りハートを熱くし、元気を頂きました。
第2次安倍内閣で麻生副総理兼財務大臣でしょうか、「景気の『気』」について話されていたのを記憶しています。 (多分インタビューか何かで仰ったのでしょうが、ちょっと出処が分かりません。)
これは、景気は市場や消費者の気分や雰囲気で変わる、ということでしょう。
景気が良くなると思い、投資や消費が加速すれば、上向きになる。
景気を不安視し、貯金ばかりに精を出すと、消費は冷え込み、景気は停滞し、減退するということです。
職場の安全もこれと同じものではないかと感じました。
明るく元気な職場は、事故が少ない。
一見関係がなさそうですが、実は重要なことのようです。
元気な職場は、社員同士のコミュニケーションが快活です。
社員同士が関心をもち合い、その結果危険なことをさせません。
安全管理は、それを大切にする文化作り。 文化は人が作ります。
安全管理者に限りませんが、1つ元気の源が生まれれば、周囲に広がります。
時間はかかるでしょう。
しかし一旦根付くと、少々のことでは揺るぎません。
病は気からと言います。
安全も気から、つまり元気や勇気とも言えそうですね。
もし安全管理に携わっているならば、機会あればお二方の話を聞くことをお勧めします。
アイデアを学ぶだけでなく、勇気がわき、モチベーションが変わるかもしれません。
そんな高いモチベーションをもらった私は、帰りの電車の中で、古澤先生の著作を読みきったのでした。
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