厚生労働省労働局長登録教習機関
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格言や名言は、便利なもので、いかようにも解釈ができます。
その解釈の自由さを、安全衛生分野にも及ぼしたらどうなるかとうのが、格言でこじつける安全衛生活動です。
Twitterで、一時期投稿していたネタは、まだあと30ほどあり、ストックはまだ十分です。
さて、今回も3人の格言を取り上げてみたいと思います。
松下幸之助の格言 |
たとえ平凡で小さなことでも、それを自分なりに深く噛みしめ味わえば大きな体験に匹敵します。 |
【解釈】
安全対策は地味で平凡です。効果があるのかもよく分かりません。 |
姫路城の改修やスカイツリー建設などの巨大プロジェクトは、携わる人のモチベーションを高めてくれます。
「あの姫路城は、自分たちが作ったものなんだ!」
後々こんな自慢ができる、誇らしく大きな体験といえます。
言うなれば、昔NHKで放送していたプロジェクトXのようなものです。 映画にもなった「陽はまた昇る」を見て、泣いた人も多いのでは。
しかし世の中には、プロジェクトXになりそうでもない仕事の方が多いです。
毎日当たり前のようにやっていること。 平凡で地味、そして誰でもやれそうなことは、特別なこととは感じにくいです。 特別なモチベーションを持つことも、あまりないでしょう。
安全衛生活動も平凡で、地味な活動です。 誰でもKY活動はできます。規則を守り、保護具を身につけることもできます。 整理整頓も難しい技術が必要ではありません。
ただ日々繰り返し、繰り返し行われることです。
安全活動を向上は、直接的に生産性に関わりません。 職場環境を改善し、効率アップ、品質向上に貢献はするものの、補足的なものです。
それなのに、事故が起こった場合には、とてつもないマイナスを出してしまいます。
会社にとってもですが、被害を受けた人本人や家族にとっても大損害です。 傷1つなく帰宅する。事故は当たり前の日常を壊してしまう可能性があるのです。
そう考えると、毎日家族が欠けることも、怪我もなく顔を合わせることは、どれほど大きなことでしょうか。 変わらない毎日を作り出しているのが、安全活動であるとも言えます。
何も特別ではない安全活動。 これが作り出している価値、失わずにすむ価値を噛みしめると、毎日の保護具着用も意味のあることと言えるでしょう。
「陽はまた昇る」でも松下幸之助さんが登場されていましたが、平凡で地味な仕事の大切さを説かれているいい言葉だと思います。
ドラッガーの格言 |
最も重要なことから始めよ。 |
【解釈】
仕事の成果を上げる、目標を達成するためには、最も重要なことから行います。 |
「もしも野球部マネージャーがドラッガーを学んだら」のドラッガーの言葉です。
全ての仕事は平等ではありません。 とはいえ、仕事に貴賎があると言いたいわけではないので、誤解はないように。
目的を達成するのに重要な仕事と、あまり重要ではない仕事があるということです。
もしあなたがフランクリン・プランナー手帳を使ったり、タイム・マネジメントについて学ばれているならば、仕事には4つの領域があると知っているのではないでしょうか。
4つの領域とは、縦軸に重要度、横軸に緊急度をとった図で表され、仕事の優先順位を把握するものです。
(参考 第三の習慣 重要事項を優先する )
つまり、仕事には「重要で緊急性を要する」ものもあれば、「重要でなく緊急性も要しない」ものもあるということです。
時間は限られているのですから、優先順位をつけなければなりません。 目的を達成するためには、重要なものからやっていく必要があります。
安全確保や健康を守ることは、直接的な目的達成に役に立つようには見えません。
しかし、こうも考えてみてください。
事故や病気で目的は達成されるでしょうか。
そう考えると、かなり重要な事だとわかるはず。
緊急性は小さいかもしれませんが、安全を確保すること健康をまもることは、かなり重要度の高いことなので、忘れず行っていきましょう。
ヘレン・ケラーの格言 |
もしも、この世が喜びばかりなら、人は決して勇気と忍耐を学ばないでしょう。 |
【解釈】
仕事も達成する喜びだけを見ていると、時に足元をすくわれます。 |
ヘレン・ケラーは好きで、格言として取り上げるのもこれ3つ目です。 この言葉も、何とも考えさせられます。
生きていくなら嬉しく喜びにあふれ、楽しいことばかりがいいですよね。
でも、喜びだけ続いていたら、それが当たり前になってしまいそうです。
お金持ちは、お金があることが当たり前になってしまうのに似てるかも。
喜びは、辛いことと比較して感じるものではないでしょうか。
ピンチになった時、踏ん張れるのは辛い体験があれば、耐える力になります。
安全衛生活動も、事故がないのが当たり前になってしまうと、その損失の大きさ、辛さに無頓着になります。
確かに事故は、そんなに身近にあふれているものではありません。 一度も事故にあったことがない人も、少なくないのでは。 無災害記録は良いことですが、一方では危機感を小さくします。
あなたの事業場は無災害でも、休業事故は年間約11万件、死亡者は1000人を超えています。 どこかで、事故は起こっているのです。 事故を起こした事業場は、特別ではありません。日々繰り返される仕事で、ほんの少し何かがくるっただけです。
大きな痛みと悲しみを伴う事故は、他人事ではありません。
目的を達成する、売上を上げるといったことは、目に見えた成果です。
成果が上がると嬉しいものですよね。
安全活動や設備、健康確保のための対策などは、ガンガン成果に向かって進みたいところに、ちょっと水を差す存在です。
時には、ブレーキをかけてしまうこともすくなくありません。
しかし、少し何かきっかけがあれば、事故になります。
過去にそんな事例は、山ほどあります。
過去の事故で多大な犠牲が払われたからこそ、今の安全衛生対策になっています。
仕事は成果だけを見てていいものではない。
犠牲があったから、その対応策も考えだされました。
被災し苦しむ人とその家族がいたことが、安全対策の重要性を考えさせるのです。
過去の犠牲者から、私たちが学ばなければならないことと言えます。