厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第42話「猫井川、足をひかれて、出会いを得る」 |
話は、エスパニョール鼠川と保楠田と一緒に飲みに行った日にさかのぼります。 駅で保楠田と別れた、猫井川は1人家路につきました。 猫井川には、恋人はいません。 今は家族から離れ、一人暮らしです。 最近は仕事にも慣れてきて、少しずつ充実してきた毎日になってきました。 2年前。 今の会社に入った時は、建設業の仕事が初めてなのはもちろん、体を動かすのも得意ではありませんでした。 そんな彼に降りかかる仕事は重く、そして辛いものでした。 (明日は仕事を辞めてやろう!) 家で1人そう思うこともありました。 しかし、簡単に辞めることはできません。 (せめて支えになる彼女がいれば・・・) そう思う日もありました。 この何年か彼女もできず、まともに話をした異性は母親か妹、あとは会社の事務員さんだけ。 家族はもちろんですが、事務員さんも50代の既婚です。 家に到着し、暗い部屋の電気をつけます。 「誰か『おかえりなさい』と言ってくれる人がいればなー」 鼠川の話は、慣れ親しんだ部屋を大きく感じさせるには十分でした。 「彼女ほしー」 「みんなどうやって出会うんだろう? 現場なんて男ばっかりだし。 「妹に紹介してもらうか。あいつは今工場勤務だったよな。 頭を抱える猫井川でしたが、いくら考えてもアイデアが浮かびません。 「鼠川さんみたいな出会いがないかなー。 酒の回る頭では、どうしようもなくなり、その日は眠りについたのでした。 「・・・ん、頭痛え。」 普段の見慣れない酒で二日酔いのようです。 ノソノソと準備をすると、仕事に向かったのでした。 事務所に着くと、すでに隣の席の保楠田は席についていました。 「おはようございます。」 挨拶すると、どうも顔色が悪かったらしく、保楠田に、 「猫ちゃん、二日酔い?」 と聞かれます。 「ええ、ちょっと。飲みなれないものを、飲み過ぎました。」 と答えると、 「仕事までに水でも飲んで、治しといてね。」 と言われたので、自販機に向かいコーヒーで頭をシャキンとさせに行きました。 「しっかりせねば。」 そうつぶやくと、痛む頭を切り替えようとしました。 現場は保楠田たちと向かいました。 コンクリート打設のための型枠作りです。 型枠用のコンパネを運び、何枚か壁に立て掛けた時でした。 突風が現場を吹き抜けていきました。 ビュオウ~ にわかに風の音が聞こえたと思うと、立て掛けていたコンパネがぐらりと傾いたのでした。 バタンと倒れかけた先には、保楠田と猫井川。 2人はとっさに両手を掲げ、倒れてくるコンパネを支えました。 その時、背後から 「大丈夫~?」 という声が。 昨日、鼠川に聞いた話が頭に残っています。 これが出会いのきっかけか!? などと思い、振り返ると、そこには兎耳長がいました。 「あんたかーい!!」 猫井川が心のなかで突っ込みを入れます。 ちらっと保楠田の顔を見ると、どうやら同じことを考えていたよう。 保楠田も猫い側をちらっと見、視線が合うと、どうも照れくさい空気が流れました。 「保楠田さん、もしかして鼠川さんの話に引っ張られています?」 「あ・・うん、猫ちゃんも?」 「まあ、そうです。」 ますます気まずくなる雰囲気の中、2人でコンパネを元通り戻し、今度は風であおられないようにしたのでした。 その翌日。 猫井川、保楠田は同じ現場に来ていました。 午前中の仕事を終え、昼食時になりました。 「コンビニで飯買ってきますけど、何かいります?」 猫井川が言いました。 「猫ちゃん、朝買ってこなかったんだ。 保楠田が答えます。 「兎耳長さんは何かいります?」 「ううん、いいやー。」 兎耳長も答えます。 「それじゃ、ちょっと言ってきます。」 そう言って、ほんの数百メートル先にあるコンビニまで歩いて行きました。 コンビニで弁当を買い、戻る時でした。 背後からチリンチリンと自転車のベルの音が聞こえてきます。 何だと思い、横に避けようとした時でした。 ガクンとつま先に衝撃が走りました。 何と自転車が猫井川の足をひいてしまったです。 勢いづいている自転車は急に止まることもなく、後輪でも足をひきました。 再び衝撃が走ります。 しかし猫井川は安全靴を履いているので、衝撃は感じても、つま先は無事です。 ただただ、衝撃に驚く猫井川。 自転車は数メートル走り、止まりました。 髪の長い女性。 もしや、これが鼠川が言う「降ってきた出会い」では!? 衝撃と期待の眼差しを向けていると、女性は振り向きました。 「大丈夫ですか・・・えっ!」 振り返ったその姿は、ラータのような素敵な女性との出会いではなく、猫井川の妹でした。 「あれ、兄ちゃん。何やっんの?」 妹は、驚いた顔でそう言います。 「いや、お前こそ、人の足を踏んどいて。」 猫井川がそう言います。 「そっか、ごめん。大丈夫だった?」 「ん、まあ安全靴だから大丈夫。」 「ごめんね。じゃ、私行くから。またね。」 さっそうと去っていく妹でした。 (また、出会いじゃないのかよ・・・) 猫井川の心中は、どんよりです。 猫井川ニャンの妹ミュウは、呆然とする兄を残し、人混みに消えていくのでした。 |
今回は、鼠川たちと飲んだ後の猫井川の話でした。
猫井川も保楠田のように、心中穏やかならぬことになったようです。
27歳の猫井川ですから、まだまだ若く、恋人が切実にほしい年代です。
残念ながら、保楠田と同様、出会いが空振りになったようです。
しかも劇的な出会いをしたのが、妹でした。
妹は初登場ですね。 猫井川ミュウ、工場に勤めています。 また出てくるかもしれませんし、主役になるかもしれません。 製造業のヒヤリ・ハットの話は、彼女を主役にしたいな。
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
さて、今回のヒヤリ・ハットは自転車で足を踏まれるでした。
安全靴はつま先に鉄板が入っているので、ある程度の重さのものであれば守ってくれます。
そのため、今回は怪我をすることなかったようです。
実は、この体験は、私の身に起こったことを元にしました。
先日、倉庫の棚を片付けていた時のことです。 一番下の棚に、小型の水中ポンプが2台あり、その内の1つを引っ張りだしました。 引っ張りだした勢いで、もう1台のポンプも引きずられ、足の上に落下したのでした。
この時は安全靴ではありませんでした。 まともに水中ポンプの角が、足の親指の付け根に当たりました。
幸い骨折などはありませんでしたが、赤く腫れ、翌日までじんじんしてました。
横着すると、怪我をしますね。
それでは、今回のヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | 歩いていたら、自転車に足をひかれた。 |
対策 | 1.自転車は歩道を走らない。 2.接触するような場所を走らない。 |
ちなみに、自転車は車道を走らなければなりません。さらに左側通行です。
歩道を走るミュウは、そもそもアウトでしたね。
自転車だからまだしも、建設機械に踏まれてしまうという事故もあります。
その場合、運転者、作業者ともに周囲の確認だけでなく、合図者を配置するなども検討します。
作業に慣れてくると、警戒区域は狭くなり、機械に近づきすぎることがあります。
慣れても、慣れなくても機械の怖さは変わりません。
必要以上の接近は、職長や作業主任者、合図者が止めるようにしなくていけませんね。