○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、足をひかれて、出会いを得る

entry-344

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第42話「猫井川、足をひかれて、出会いを得る」

話は、エスパニョール鼠川と保楠田と一緒に飲みに行った日にさかのぼります。

駅で保楠田と別れた、猫井川は1人家路につきました。

猫井川には、恋人はいません。 今は家族から離れ、一人暮らしです。

最近は仕事にも慣れてきて、少しずつ充実してきた毎日になってきました。

2年前。 今の会社に入った時は、建設業の仕事が初めてなのはもちろん、体を動かすのも得意ではありませんでした。 そんな彼に降りかかる仕事は重く、そして辛いものでした。

(明日は仕事を辞めてやろう!)

家で1人そう思うこともありました。 しかし、簡単に辞めることはできません。

(せめて支えになる彼女がいれば・・・)

そう思う日もありました。 この何年か彼女もできず、まともに話をした異性は母親か妹、あとは会社の事務員さんだけ。 家族はもちろんですが、事務員さんも50代の既婚です。
みんな恋愛対象からは、程遠いものでした。

家に到着し、暗い部屋の電気をつけます。

「誰か『おかえりなさい』と言ってくれる人がいればなー」

鼠川の話は、慣れ親しんだ部屋を大きく感じさせるには十分でした。

「彼女ほしー」

「みんなどうやって出会うんだろう?  現場なんて男ばっかりだし。
 紹介か?でもまともに紹介してくれる友達もいないし、わからん。」

「妹に紹介してもらうか。あいつは今工場勤務だったよな。
 催奇なってないなー。」

頭を抱える猫井川でしたが、いくら考えてもアイデアが浮かびません。

「鼠川さんみたいな出会いがないかなー。
 まあ、とりあえず風呂入って、寝よ。」

酒の回る頭では、どうしようもなくなり、その日は眠りについたのでした。

「・・・ん、頭痛え。」

普段の見慣れない酒で二日酔いのようです。

ノソノソと準備をすると、仕事に向かったのでした。

事務所に着くと、すでに隣の席の保楠田は席についていました。

「おはようございます。」

挨拶すると、どうも顔色が悪かったらしく、保楠田に、

「猫ちゃん、二日酔い?」

と聞かれます。

「ええ、ちょっと。飲みなれないものを、飲み過ぎました。」

と答えると、

「仕事までに水でも飲んで、治しといてね。」

と言われたので、自販機に向かいコーヒーで頭をシャキンとさせに行きました。

「しっかりせねば。」

そうつぶやくと、痛む頭を切り替えようとしました。

現場は保楠田たちと向かいました。

コンクリート打設のための型枠作りです。

型枠用のコンパネを運び、何枚か壁に立て掛けた時でした。

突風が現場を吹き抜けていきました。

ビュオウ~

にわかに風の音が聞こえたと思うと、立て掛けていたコンパネがぐらりと傾いたのでした。

バタンと倒れかけた先には、保楠田と猫井川。

2人はとっさに両手を掲げ、倒れてくるコンパネを支えました。

その時、背後から

「大丈夫~?」

という声が。

昨日、鼠川に聞いた話が頭に残っています。

これが出会いのきっかけか!?

などと思い、振り返ると、そこには兎耳長がいました。

「あんたかーい!!」

猫井川が心のなかで突っ込みを入れます。 ちらっと保楠田の顔を見ると、どうやら同じことを考えていたよう。

保楠田も猫い側をちらっと見、視線が合うと、どうも照れくさい空気が流れました。

「保楠田さん、もしかして鼠川さんの話に引っ張られています?」

「あ・・うん、猫ちゃんも?」

「まあ、そうです。」

ますます気まずくなる雰囲気の中、2人でコンパネを元通り戻し、今度は風であおられないようにしたのでした。

その翌日。

猫井川、保楠田は同じ現場に来ていました。

午前中の仕事を終え、昼食時になりました。

「コンビニで飯買ってきますけど、何かいります?」

猫井川が言いました。

「猫ちゃん、朝買ってこなかったんだ。
 とりあえず、いいや。」

保楠田が答えます。

「兎耳長さんは何かいります?」

「ううん、いいやー。」

兎耳長も答えます。

「それじゃ、ちょっと言ってきます。」

そう言って、ほんの数百メートル先にあるコンビニまで歩いて行きました。

コンビニで弁当を買い、戻る時でした。

背後からチリンチリンと自転車のベルの音が聞こえてきます。

何だと思い、横に避けようとした時でした。

ガクンとつま先に衝撃が走りました。

何と自転車が猫井川の足をひいてしまったです。

勢いづいている自転車は急に止まることもなく、後輪でも足をひきました。

再び衝撃が走ります。

しかし猫井川は安全靴を履いているので、衝撃は感じても、つま先は無事です。

ただただ、衝撃に驚く猫井川。

自転車は数メートル走り、止まりました。

髪の長い女性。

もしや、これが鼠川が言う「降ってきた出会い」では!?

衝撃と期待の眼差しを向けていると、女性は振り向きました。

「大丈夫ですか・・・えっ!」

振り返ったその姿は、ラータのような素敵な女性との出会いではなく、猫井川の妹でした。

「あれ、兄ちゃん。何やっんの?」

妹は、驚いた顔でそう言います。

「いや、お前こそ、人の足を踏んどいて。」

猫井川がそう言います。

「そっか、ごめん。大丈夫だった?」

「ん、まあ安全靴だから大丈夫。」

「ごめんね。じゃ、私行くから。またね。」

さっそうと去っていく妹でした。

(また、出会いじゃないのかよ・・・)

猫井川の心中は、どんよりです。

猫井川ニャンの妹ミュウは、呆然とする兄を残し、人混みに消えていくのでした。

今回は、鼠川たちと飲んだ後の猫井川の話でした。

猫井川も保楠田のように、心中穏やかならぬことになったようです。
27歳の猫井川ですから、まだまだ若く、恋人が切実にほしい年代です。

残念ながら、保楠田と同様、出会いが空振りになったようです。

しかも劇的な出会いをしたのが、妹でした。

妹は初登場ですね。 猫井川ミュウ、工場に勤めています。 また出てくるかもしれませんし、主役になるかもしれません。 製造業のヒヤリ・ハットの話は、彼女を主役にしたいな。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

さて、今回のヒヤリ・ハットは自転車で足を踏まれるでした。
安全靴はつま先に鉄板が入っているので、ある程度の重さのものであれば守ってくれます。

そのため、今回は怪我をすることなかったようです。

実は、この体験は、私の身に起こったことを元にしました。
先日、倉庫の棚を片付けていた時のことです。 一番下の棚に、小型の水中ポンプが2台あり、その内の1つを引っ張りだしました。 引っ張りだした勢いで、もう1台のポンプも引きずられ、足の上に落下したのでした。

この時は安全靴ではありませんでした。 まともに水中ポンプの角が、足の親指の付け根に当たりました。

幸い骨折などはありませんでしたが、赤く腫れ、翌日までじんじんしてました。

横着すると、怪我をしますね。

それでは、今回のヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 歩いていたら、自転車に足をひかれた。
対策 1.自転車は歩道を走らない。
2.接触するような場所を走らない。

ちなみに、自転車は車道を走らなければなりません。さらに左側通行です。
歩道を走るミュウは、そもそもアウトでしたね。

自転車だからまだしも、建設機械に踏まれてしまうという事故もあります。
その場合、運転者、作業者ともに周囲の確認だけでなく、合図者を配置するなども検討します。
作業に慣れてくると、警戒区域は狭くなり、機械に近づきすぎることがあります。

慣れても、慣れなくても機械の怖さは変わりません。
必要以上の接近は、職長や作業主任者、合図者が止めるようにしなくていけませんね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA