厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
リスク・アセスメントをかじると、どうしても疑問に思うことがあります。
それは、リスク・アセスメントとKYKまたはKYTは、何が違うのということです。
同じ疑問は、みなさんも思ったのではないでしょうか。
労働安全コンサルタントの口述試験でも、この違いについて質問されたこともあるそうです。
やり方だけ見ると、かなり似通っています。
今回は、この違いについてまとめてみます。
まずは手法を見てみよう |
リスク・アセスメントについては、よく分からないけれども、KYKまたはKYTは知っているという人は多いと思います。
ちなみにKYKは危険予知活動、KYTは危険予知トレーニングです。 どちらも、作業に先立って危険を予想し、回避するためのものです。
あー、あれかと思い当たるものはあるでしょうか?
一般的に行われているのが、4ラウンドKYというものです。
まずは、4ラウンドKYのやり方を見てみましょう。
このKYは、今から行なう作業を想定します。 よくイラスト等が見せて、どんな危険があるのかを話し合います。
作業を行う全員でやるのが原則ですが、意見が出やすいのは4~5人くらいまでです。
それでは、進め方です。
1R | どんな危険が潜んでいるか |
2R | これが危険のポイントだ |
3R | あなたならどうする |
4R | 私たちはこうする |
1ラウンドは、イラストやこれから行う作業での危険の発見です。
みんなで、意見を出し合い、危険を洗い出します。 出てきた危険ポイントは、書き留めておきます。
2ラウンドは、洗い出された危険ポイントのうち、重要なものに○をつけます。
○を付けた危険の内、最も重要なものを話し合い、◎を付け、アンダーラインをひきます。
3ラウンドは、◎を付けた危険ポイントの対策を話し合います。
4ラウンドは、話し合った対策を絞り込み、※を付けて、重点実施項目とします。
最後に、その重点実施項目を行動目標として、全員で指差呼称をします。
現場から離れて、KYをトレーニングとして行う場合は、チームごとに大きな模造紙に書いたりします。 作業前には、KY用紙に記入して、みんなで指差呼称をする事が多いでしょう。
建設業や製造業にお勤めなら、1度や2度は経験はあるのではないでしょうか?
流れとしては、危険を見つけ、優先順位を付け、対策を決める、ことです。
今から作業の危険を考えるには効果的です。 作業者全員が何が特に危険かも共有できます。
でも、KYはマンネリになりがちなんですよね。
KYについての問題は、長くなるので、あらためて。
さて、一方のリスク・アセスメントの進め方はどんなでしょうか?
ちょっとまとめてみます。
1 | リスクの特定 |
2 | リスクの評価 |
3 | リスク低減措置 |
4 | リスク低減後の評価 |
「リスクの特定」は、リスクになり得る危険源を見つけることです。
危険源とは、人の害になる可能性があるものです。 つまづくかもしれない段差も危険源になります。
「リスクの評価」は、見つけた危険源へ接近する頻度と、事故になった場合の被害の大きさの観点から、リスクが大きい小さいを判断していきます。
この大きい小さいは、対策の優先順位にもなります。 リスクの大きなものから、手を打つ必要があるのです。
「リスクの低減措置」は、リスクを小さくするための対策です。
歯車がむき出しのままで回転している機械に対して、カバーを付けて、触れられないようにするものです。
「リスク低減後の評価」は、リスク対策をした後の、リスクの大きさを再評価します。
こちらも、リスク・危険を見つけ、優先順位を付けて、対策するですね。
やってることがKYと同じようです。
何が違うのでしょうか?
何が違うのか |
リスク・アセスメントとKYでは、そもそも目的が違います。
何が違うのかを、表でまとめてみましょう。
項目 | KY | リスク・アセスメント |
誰がやるの? | 作業者 | 事業者 |
いつやるの? | 作業前 | 建物や設備を新設・変更・解体、作業方法や材料を変更時等 |
どこでやるの? | 作業場 | 事業場全体 |
どんな対策をするの? | 作業管理、保護具 | 設計変更、機械材料の変更、作業方法の変更等 |
コストは? | かからない | かかる |
このようにまとめると、違いははっきりしますね。
大きな違いは、KYは作業者が数人で行なうのに対して、リスク・アセスメントは事業者が主体となって全社的に取り組むことです。
事業者が主体となるのですから、リスク調査をしたり、対策する範囲が広くなります。
つまりリスク・アセスメントは事業の一環という位置づけなのです。
そのため、設備投資や作業方法の変更など、抜本的対策にも踏み込めます。 リスク低減効果としては、大胆にできるので、かなりリスクを小さくすることができます。
一方、KYは作業者が中心です。
対象となるものは、今から行なう作業に対してのみです。
できることも限られます。どんなにリスクの高い作業を行うにしても、対策は注意を促すことと保護具を身につけることくらいです。
根本的なリスクは解消しません。
また、リスク・アセスメントは全てのリスクを洗い出し、対策します。
全てというからには、今は気づかないのリスクも発見します。
しかし、KYは作業者個人の経験と勘、そして感性に頼ります。残念ながら、本人が気づかないリスクは、放置されてしまいます。
そもそも、毎日似たような作業を行なうのですから、KYだと言われても新たな危険を発見することは億劫です。 そのためマンネリ化してしまうのです。
リスク・アセスメントをかじると、最初のほうでぶつかるのが、この疑問ではないでしょうか。
一番のポイントは、KYは作業者がやり、リスク・アセスメントは事業者がやるということですね。
この説明で、整理出来ましたでしょうか?
ああ、なるほどね、と思ってもらえたなら、嬉しいです。
とても納得がつきました。
こんにちは。
コメントありがとうございます。
本当に励みになりますし、嬉しいです。
リスクアセスメントについては、私自身もっと勉強したり、実践して、詳しくお届けできるようにしていきたいと思っています。