○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

犬尾沢、交通事故にニアミスる

entry-348

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第44話「犬尾沢、交通事故にニアミスす」

犬尾沢は、猫井川や保楠田、兎耳長、鼠川を連れて、道路の舗装工事を行なうことになりました。

道路の舗装の一部の破損が大きくなったところがあり、そこは車が通るとタイヤがガタンと落ちてしまうほどでした。
さすがにこれじゃ、通行に支障があるということで、修復を依頼されたのでした。

しかし本格的な舗装やり替え工事ではありません。 応急処置なので、今回は破損した箇所の前後1.5メートルくらいの範囲です。

工事を行う道路は、昼間の交通量は少ない片側1車線の道路でした。
とはいえ、車が全然通らないことはありません。 きちんと片側交互の交通規制を行なうことになっての作業でした。

規制の範囲は、30メートルほどです。 作業者とダンプ、小型のショベルカーが動くので、必要最小限の範囲しかありません。
この規制範囲の両サイドには、交通誘導員が車を誘導します。

規制や作業を始まる前に、犬尾沢はメンバーと交通誘導員を集め、ミーティングを行いました。
今回の作業内容と規制について、説明します。

「今回の工事ですが、舗装のピットホールの補修です。
 そのままアスファルトを埋めるんじゃなくて、切削オーバーレイをやりますので、ちょっと手間がかかります。」

犬尾沢が、メンバーに作業内容を伝えたところで、保楠田が口をはさみました。

「切削オーバーレイというと、表層と基層を取って、打ち替えするの?
 表層だけやり替えとかじゃなくて?」

保楠田の質問に、犬尾沢が答えます。

「そうなんですよ。
 開いてる穴が、少し基層まで削ってしまっているらしいんですよ。
 1.5メートル角で、舗装を2層と路盤まで替えます。
 あんまり時間もかけてられないので、手早くやりましょう。

 規制は片側交互で、誘導員が立ちます。
 誘導員さんは、通行量は少ないですが、事故がないようにお願いします。」

ミーティングが終わると、全員で規制の準備に入りました。

規制する車道の前後に工事案内の看板を立て、中央線に沿って三角コーンを立てていきました。

交通誘導員が、規制範囲の両サイドに立ち、早速通ってきた車を停止させました。 交通規制の開始です。

コーンの内側にショベルカーやアスファルトカッターなどの機械を入れると、いよいよ工事開始です。

まず、保楠田がアスファルトカッターで、打ち替える範囲のアスファルト舗装を切り始めました。

カッターに熱をもたせ過ぎないように、また摩擦を減らすために水を十分な水をかけながら、アスファルトは切り離されていきます。

アスファルトが切り離されると、ショベルカーに乗った犬尾沢がそのアスファルトにバケットの爪を立てます。
爪に砕かれたアスファルトの塊は、どんどんダンプの荷台に載せられていったのでした。

犬尾沢たちが作業しているすぐ側を、たまに車が通過してきます。
さすがに規制されて、道幅も狭くなっているので、ゆっくり走っていきます。

「車はゆっくりに見えますけど、はねられたやばいですよね。」

汗を拭いながら、猫井川が言いました。

「まあ、打ち所が悪ければ、死ぬな。
 わしは昔、路上作業で、車にあたったことがあるぞ。」

さらっと鼠川が衝撃的なこと言ってます。

破損したアスファルトを取り除いた後、砕石が敷き詰められた路盤が現れました。
新たに舗装を打ち替えるためには、この路盤も少し取り替える必要があります。

犬尾沢は、ショベルカーでガリガリと路盤を削り取り、ダンプに乗せていったのでした。

「それじゃ、砕石入れなおしましょか。」

路盤の削り取りが終わると、犬尾沢が言いました。
その合図で、猫井川たちは、新たな砕石を入れ始めました。

砕石を敷き終わると、小型振動機で締め固めていきます。

ズガガガガと振動する機械に体を預けながら、猫井川は丁寧に隙間なく路盤砕石を締め固めたのでした。

「よし、あとはアスファルトの打込みだから、出来形とるよ。
 写真撮るのに、反対車線でなきゃだな。」

現在、車が行き交っている反対車線に出る必要があるので、犬尾沢は近くに立っていた、誘導員に言いました。

「おーい、誘導員さん。ちょっとこっちの車道から出来形写真とるから、しばらくの間通行止めにしておいて。」

それを聞いた誘導員は、OKの合図を出しました。

「猫井川、そこに尺当ててくれ。」

猫井川が尺を持ち、犬尾沢が写真を撮ろうと、カメラの液晶を見つめ、後ろ歩きで反対の車道に出た時でした。

「犬尾沢さん、あぶない!」

突然、猫井川が叫びました。

犬尾沢はその声に、はっとして顔をあげると、1台の車が迫ってきていたのです。

犬尾沢は、タメも予備動作もなく、その場でジャンプし、規制範囲に飛び込みました。

間一髪。 車は犬尾沢のすぐ側をかすめ、クラクションを鳴らして通過して行きました。

ジャンプした勢いで、前のめりになり、手と膝をつく犬尾沢。

「なんで車がくるの?通行止めしてたんじゃないの?」

そう思って、四つん這いのまま車が来たほうを見てみると、誘導員が通行止めをせず、車を通過させていたのでした。

「おーい!通行止めしてくれって言ったでしょ!」

犬尾沢が、そう叫ぶと、きょとんとした顔の誘導員。

どうやら、誘導員の1人には伝わっていたものの、もう1人には伝わっていなかったようでした。
犬尾沢の指示が聞こえておらず、もう1人と指示を共有できていないようでした。

「ちゃんと指示を共有しろー!  危ないだろうが!!」

大声で怒る犬尾沢。 今度は、2人ともに指示が行き渡ったようでした。

今回は路上作業でのヒヤリ・ハットです。

犬尾沢は危うく車にひかれてしまうところでした。
規制外に出ない方がいいですが、場合によっては必要になることもあります。

犬尾沢はなぜ出たんでしょうか? どうしても写真アングル的に、遠くから撮影する必要があったんでしょうかね??

車から逃れるために、慌ててジャンプしましたが、こういうのは下手をするとアキレス腱を痛めるので、危なかったですね。
明日くらいには、犬尾沢の足が痛くなっているかもしれませんけど。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

路上作業の時には、いつも交通事故の危険が隣り合います。

場合によってはほんの1メートル足らずのところを車が通ったりするのです。
作業のためには、交通規制を行い、作業上の安全を確保しなければなりません。
中でも、交通誘導員は何よりも重要です。

路上での作業のためには、作業者と交通誘導員との意思疎通は、欠かせません。
今回は犬尾沢が出した指示が十分に伝わっておらず、車とニアミスしてしまいました。

指示を共有していなかった誘導員にも問題がありますが、きちんと2人に上方が伝わったことを確認していなかった犬尾沢もうかつでしたね。

このようなヒヤリ・ハットは案外少なくないのではと思います。

それでは、今回のヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 路上作業で、規制外に出た時、車にニアミスした。
対策 1.規制外に出ない。出るときは左右の確認を行う。
2.作業者と誘導員のコミュニケーションをしっかり行う。

犬尾沢は、何かに巻き込まれて事故にニアミスすることが多いようです。

自発的に危険を招くことは少ないのですが、仕事は周りの人と共に行うので、全体を見渡しコミュニケーションを行うのが、彼の今後の課題かもしれませんね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA