○安衛法と仲良くなる労働者の救護

事故が起こった時、作業者の救護を安全に行なうための備え

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仕事によっては、どうしても危険な場所での作業が避けられない場合もあります。

製造業であれば、安全装置などで隔離されていても、動く機械の近くで作業するので、巻きこまる危険と隣り合わせです。

建設業は決まった場所で作業しないので、もっと過酷かもしれません。
何もない場所に、建物や橋、ダム、トンネルなどを作ります。
作業する場所は、街中、河川内、山奥、地中、時には海の中に至ります。
100年後には、宇宙で作業ということもあるかもしれませんね。

安定した場所ではないので、いつ事故が起こるかわかりません。
事故を起こさないようにするのが、最も大事です。
それでもなお、事故が起こったしまったら、何よりも優先するのは、怪我人を助けることです。

怪我人の救護については、事故が起こったら臨機応変に対処する・・・なんて考えていると、救える命も救えません。 これは歴然たる事実です。

事故はパニックを引き起こします。
ほとんどの人は冷静さを失います。

事故が起こった時、迅速かつ確実に怪我人を救護するには、事前の備えが大切です。

安衛法で、救護について定められています。

index_arrow 救護に備える

【安衛法】

第25条の2
建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者は、
爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における
労働災害の発生を防止するため、次の措置を講じなければならない。

  1)労働者の救護に関し必要な機械等の備付け及び管理を行うこと。

  2)労働者の救護に関し必要な事項についての訓練を行うこと。

  3)前2号に掲げるもののほか、爆発、火災等に備えて、
   労働者の救護に関し必要な事項を行うこと。

2 前項に規定する事業者は、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、
  厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の措置のうち技術的事項を
  管理する者を選任し、その者に当該技術的事項を管理させなければならない。

建設業などでは、爆発や火災、酸欠、有毒ガスの充満などの危険があります。
もしこれらの事故が発生した場合、安全に救護を行なうための対策が必要です。

安全に救護が行えるように、機械の準備や訓練などの措置をとらせなければなりません。 また救護時に安全にいち早く指揮をとれる技術事項の管理者を配置しなければなりません。

技術者は、厚生労働省が定めた資格が必要になります。
この資格については、後ほど詳しく書きます。

いざ、事故が起こることを想定した、準備を整えて置かなければならないということです。

さらに、安衛則では、より細かに規定されています。

index_arrow 救護に必要な機械の備え

【安衛則】

第2章の2 労働者の救護に関する措置

(救護に関し必要な機械等)

第24条の3
法第25条の2第1項 に規定する事業者(以下この章において「事業者」という。)は、
次の各号に掲げる機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)を
備え付けなければならない。
ただし、メタン又は硫化水素が発生するおそれのないときは、
第2号に掲げるメタン又は硫化水素に係る測定器具については、この限りでない。

  1)空気呼吸器又は酸素呼吸器(第3項において「空気呼吸器等」という。)

  2)メタン、硫化水素、一酸化炭素及び酸素の濃度を測定するため必要な測定器具

  3)懐中電灯等の携帯用照明器具

  4)前3号に掲げるもののほか、労働者の救護に関し必要な機械等

2 事業者は、前項の機械等については、次の各号の区分に応じ、
  当該各号に掲げる時までに備え付けなければならない。

  1)令第9条の2第1号 に掲げる仕事 出入口からの距離が1000メートルの
   場所において作業を行うこととなる時
   又はたて坑(通路として用いられるものに限る。)の深さが50メートルとなる時

  2)令第9条の2第2号 に掲げる仕事 ゲージ圧力が0.1メガパスカルの
   圧気工法による作業を行うこととなる時

3 事業者は、第1項の機械等については、常時有効に保持するとともに、
  空気呼吸器等については、常時清潔に保持しなければならない。

救護に向かった人も、事故に巻き込まれることもよくあります。
特に二次被害に巻きこまれやすいのが、酸欠場所や有毒ガスが満ちた場所です。
ガスが目に見えないので、無防備に突入し、倒れてしまうことが非常に多いのです。

二次被害を防ぐため、救護に必要な機械を準備して置かなければなりません。

酸欠や有毒ガスへの備えのため、呼吸器や検出器は必ず備えておきます。

特に、必要な場所は、出口から1000メートル以上掘られたトンネル、たて杭が50メートル以上の穴、0.1メガパスカル以上の圧力のある場所です。

トンネルなどは、通気が悪いので、有毒ガスがたまりやすく、酸素も欠乏しがちです。 圧気工法は、内部から強い圧力をかけ、海水などを押し出しているので、簡単に換気ができないのです。

このような場所では、作業のための安全設備とともに、救護のための安全設備も準備しておきます。

index_arrow 救護の訓練
(救護に関する訓練)
第24条の4
事業者は、次に掲げる事項についての訓練を行わなければならない。

  1)前条第1項の機械等の使用方法に関すること。

  2)救急そ生の方法その他の救急処置に関すること。

  3)前2号に掲げるもののほか、安全な救護の方法に関すること。

2 事業者は、前項の訓練については、前条第2項各号の区分に応じ、
  当該各号に掲げる時までに1回、及び
  その後1年以内ごとに1回行わなければならない。

3 事業者は、第1項の訓練を行ったときは、次の事項を記録し、
  これを3年間保存しなければならない。

  1)実施年月日

  2)訓練を受けた者の氏名

  3)訓練の内容

機械などの安全設備を備えていても、いざという時に使えなければ意味がありません。
事故は冷静さを失わせます。 焦ってしまって、備えはあるのに、無防備に酸欠場所に突入して、二次被害ということもあります。

事故の時、適切に行動するためには、日頃からの訓練が大切です。

救護に関する訓練を1年に1回以上行わなければなりません。

訓練では、機械の使い方や救護手順、応急処置の仕方などを学びます。
経験し、頭に残っていれば、いざという時にも行動ができるようになるのです。

避難訓練と同じですね。

訓練を実施したら、記録を3年間は残します。

index_arrow 救護の安全のきまり
(救護の安全に関する規程)
第24条の5
事業者は、第24条の3第2項各号の区分に応じ、当該各号に掲げる時までに、
労働者の救護の安全に関し次の事項を定めなければならない。

  1)救護に関する組織に関すること。

  2)救護に関し必要な機械等の点検及び整備に関すること。

  3)救護に関する訓練の実施に関すること。

  4)前3号に掲げるもののほか、救護の安全に関すること。

救護の安全に関して、規定を作らなければなりません。
全ての作業場ではなく、特に注意が必要な場所で必要です。

出口から1000メートル以上掘られたトンネル、たて杭が50メートル以上の穴、0.1メガパスカル以上の圧気工法の場所では、救護の安全規定を作らなければなりません。

規定はは、次の項目について行います。

1.救護に関する組織
2.機械の点検や整備
3.訓練
4.その他の事項

誰が責任者で、事故の時には、どのように対応するのかを事前に決めておく必要があります。

どうしても危険な場所では、事故のリスクが高くなります。
事故を起こさないようにすることが最善ですが、もし起こった時には、いかに怪我人を救出するかが大事です。

そのためには、救護についてのしっかり備えを行なうことが大事です。

まとめ。

【安衛法】

第25条の2
建設業などでは、救護の体制や訓練などを行わなければならない。

【安衛則】

第24条の3
事業者は、救護に関し必要な機械、器具その他の設備備え付けなければならない。
第24条の4
救護に関する訓練を行わなければならない。
(救護の安全に関する規程) 第24条の5
、労働者の救護の安全に関し組織や機械の点検等の事項を定めなければならない。