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建設業、特に土木工事ではショベルカーの用途は広く、掘削するだけではありません。
用途外の使い方にはなりますが、クレーン車が入ってこれないような、ゆるい地盤の場所であっても、吊り荷作業ができます。
もちろん、制限は多いのですが、このショベルカーで吊り荷するのは、非常に重宝しているのも事実です。
しかし、本来ショベルカーは掘るための機械で、吊リ作業を行うようにはできません。 吊る作業においては、クレーン車に及びません。
ショベルカーで吊る作業時は、守るべきことを守らないと、事故を招いてしまいます。
今回は、ショベルカーでの吊り作業中に起こった事故を取り上げ、原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
4トンの「鉄管」直撃、ショベルカー作業中の男性死亡
(平成27年7月22日)
22日午後2時15分ごろ、大阪府茨木市の土木工事会社の資材置き場で、トラックに積まれた掘削用の鉄管(長さ12メートル、直径30~40センチ、重さ4トン)をショベルカーで降ろす作業を行っていた社員に鉄管が直撃。腹などを強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
大阪府警茨木署によると、被災者は、ショベルカーの先端に取り付けられたワイヤに鉄管をくくり、トラックの荷台から降ろそうとしていた。いったん持ち上げたものの、バランスが崩れ、運転席の被災者に当たったという。同署で詳しい事故原因を調べる。 |
この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「ショベルカー」です。
工事現場ではなく、会社の資材置き場で整理をしていた時に起こった事故です。
トラックに積まれた鉄管を、ショベルカーで吊り上げ、下ろす作業をしていた時、鉄管が落下し、運転していた被災者に直撃したのです。
鉄管の直撃を受けた運転者は、亡くなってしまったのでした。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
クレーン車と違い、ショベルカーは吊り荷作業には向いていません。
本来の用途から外れた使い方ですので、おすすめできない作業方法なのです。
ショベルカーで吊り荷作業をするのは、準備を整えなければなりません。
立入禁止範囲を定め、合図者を決めます。
資格も、車両系建設機械だけでなく、移動式クレーンと玉掛けの特別教育を修了していなければなりません。
また吊り荷の荷重制限もあります。
車体サイズによりますが、どんなに大きな車体であっても、上限は1トンまでです。
そもそも、どうしてもクレーン車が使えない場合以外の使用は控えなければなりません。
今回の事故は、これらの多くが適当ではなかったようです。
そもそもの話、クレーン車を使わなかったことが根本的な問題です。
どれほどのサイズのショベルカーを使っていたかは分かりませんが、4トンは荷重オーバーです。
鉄管のように長細いものを吊るときには、滑り落ちないような玉掛けを行わなければなりません。 1人で作業することも禁止されています。
資格を持っていたのかも、記事からはわかりません。
おそらく、日常的に同様の作業を行っていたのではないでしょうか。
事故の原因は常にあったものの、今回たまたま事故に至ってしまったようです。
法的には、いろいろアウトな状態だったと思われます。
それでは、原因を推測してみます。
1 | クレーン車を使っていなかったこと。 |
2 | 吊り荷がショベルカーの荷重制限を超えていたこと。 |
3 | 安全教育などが十分でなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
クレーン車が使える場所では、クレーン車を使うことが原則です。
もし使う場合であっても、あくまでも用途外のなので、それ相応の対応が必要です。
クレーン機能付ショベルカーであれば、クレーンモードに切り替えなければなりません。 多くの場合、クレーンモードになると、付属のパトライトが点灯しますね。
今回の事故の場合は、クレーン車が使えない状況ではなかったと思われます。
日常的に、ショベルカーで荷降ろしをしていたのでしょう。
土木工事の会社は、トラックやショベルカーは持っていても、クレーン付トラック(ユニック車)は持っていないこともあるので、レンタルしないと使えなかったという事情があったのかもしれません。
事情はあったにせよ、多大なリスクがある作業であることには違いありません。
対策をまとめてみます。
1 | 吊り荷作業は、クレーン車を使う。 |
2 | ショベルカーで吊り荷作業を行う場合は、作業規制を守る。 |
3 | 社内でも危険作業を行わないように、日頃から教育する。 |
工事現場であれば、元請会社などの目があるため、法的にかなう方法で作業を行おうとします。
ところが、自社の資材置き場や倉庫だと、監視の目がないので、無茶な方法で作業することもあります。
事業者自身が監視の目になればいいのですが、完全には目は行き届きません。
作業者への教育と意識付けにより、監視の目がなくとも安全に作業を行えるのが理想ですね。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第164条 車両系建設機械を、荷のつり上げ等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。 ただし、やむを得ず使用する場合は、相応の措置をとること。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。