厚生労働省労働局長登録教習機関
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道路は交通インフラですが、その地下にはライフラインが通っています。
上下水道、ガス、電気ケーブル、通信線なども道路を伝い、会社や家庭に届きます。
これらライフラインは、一度作ったら放置していいものではありません。
鋼管であれ、塩ビ管であれ、時間が経過すると腐食し、劣化します。
メンテナンスが必要ですし、取り替えることも必要になります。
また水道管の一部でも破損すれば、そこから漏水し、道路陥没させるので、早急に修繕が必要になります。
配管の取替えやメンテンナス、修繕のためは、道路を掘らなければなりません。
掘削作業では、常に土壁が崩落する危険と隣り合わせなのです。
東京台東区の下水道工事で、掘削作業時の事故が起こりました。
今回はこの事故を取り上げ、原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
土砂の下敷きに…作業員の男性死亡 台東区
(平成27年7月18日)
東京・台東区の工事現場で18日朝、作業員の男性が土砂の下敷きになり、病院に搬送されたが、死亡が確認された。 警視庁などによると、18日午前10時頃、台東区北上野の工事現場で、深さ約2.5メートルの穴の中で下水道管の交換作業をしていた40代の男性が、崩れてきた土砂の下敷きになった。警察官や消防隊員が駆けつけたところ、男性は腰のあたりまで土砂に埋まり、土砂を固定していた金属パイプに首を挟まれていたという。男性は病院に搬送されたが、死亡が確認された。 警視庁は、業務上過失致死の疑いも視野に、事故の詳しい経緯を調べている |
この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「地山」です。
下水道管を設置する工事のため、道路を2.5メートルの深さまで掘削していた時に事故が起こりました。
道路工事のため長時間の交通規制がとれないため、最小限の掘削範囲で作業していました。 土砂崩れを防ぐため、土止め支保工はあったものの、土砂崩れを防ぐことができなかったようです。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
掘削作業を行う場合は、掘削面が崩れることを防がなければなりません。
土砂崩れは、掘削面が垂直であればあるほど、危険性が高くなります。 広い場所であれば、掘削面にスロープをつけるて、防ぐことができます。
しかし都会の道路では、幅広く掘るわけにはいきません。
必要最小限、垂直に掘ります。
垂直の掘削面での土砂崩れを防ぐために、土止め支保工を行います。
土止め支保工とは、土壁の前に壁を作るものです。 この壁は、内側から押さえつけ、固定します。
この事故現場の映像を見たところ、矢板で土止め支保工が行われていました。
しかし、壁を押さえつける力が弱かったのか、もしくは完成していなかったのかもしれません。
土止め支保工を行うにあたっては、土止め支保工作業主任者を選任し、作業を指揮させます。
作業主任者が十分に安全を確保した作業を行っていなかったことも考えらます。
さらに、被害を拡大したのが、掘削溝のすぐ側にあった資材も、土砂崩れと一緒に崩れ落ちたことです。 資材が被災者の首を押さえつけてしまったのでした。
それでは、原因をまとめます。
1 | 土止め支保工が完成していない状態で、作業者が穴にはいっていた。 |
2 | 作業主任者が、安全な作業を指揮していなかった。 |
3 | 掘削溝のすぐ側に資材を置き、整理整頓されていなかった。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
土止め支保工を行うときは、土止め支保工作業主任者を選任し、作業者の安全を監視させます。
この時、土止めの材料も適切なものを選ばなければなりません。
この事故現場では、矢板が打ち込まれていましたが、腹起しや切りばりは、土砂に埋もれたのか、映像には見えませんでした。
土止め支保工は、完成するとしっかり土砂崩れを防いでくれますが、作業途中は危険があるのです。 作業中に土砂崩れに巻き込まれないようにするため、土止め先行工法というものがあります。
これは作業者が掘削溝に入る前に、土止め支保工をやってしまうので、土砂崩れに巻き込まれる危険が格段に減ります。
このような作業方法も積極的にとるのがよさそうです。
さらに、掘削面に土砂以外の者が落ちてくるのも防ぐために、穴の周りに材料や工具を行いことも大事です。
狭い作業場であっても、いや狭い場所だからこそ、資材の置き場所を定め、整理整頓が大事です。
対策をまとめてみます。
1 | 作業指揮者が安全作業を指揮すること。 |
2 | 土止め先行工法を取り入れる。 |
3 | 資材や工具の整理整頓を行う。 |
掘削作業中の土砂崩れの事故のニュースはよく見かけます。 それだけ多い事故なのです。
土止め支保工は重要な土砂崩れ防止対策ですが、正しく行わなければ効果を発揮しません。
狭く、時間が限らている場所での工事だからこそ、土止め先行工法などで、早く確実に、安全に作業していく必要があります。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第369条 土止め支保工の構造については、設ける箇所の地山に係る形状、地質、地層等の状態に応じた堅固なものとしなければならない。 |
第374条 事業者は、土止め支保工の組立を行う場合は、土止め支保工作業主任者を選任しなければならない。 |
第375条 土止め支保工作業主任者は、必要な措置をとらなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。