○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、顔面を塗装す

entry-367

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第46話「牛黒、顔面を塗装す」
猫井川と兎耳長は、今日も羊井メェの建築現場に応援に来ていました。

引き続き、壁塗装のお手伝いです。

1階部分は何とか終えたのですが、2階も同じように急いで仕上げなければならなかったのです。

「お願いされていることが、どんどん増えてくる。」

猫井川は、ため息とともに、つぶやきました。

2階部分は間仕切り壁が多く、塗る面積も多いので、2人のヘルプだけでは人手が足りなさそうです。

そこで、羊井は、塗装に牛黒カウにもやらせることにしたのでした。

牛黒は、結構豪快なキャラクターです。 言い方を変えると、雑なのですが、塗装作業は大丈夫なのか。

猫井川は、一抹の不安を覚えながら、一緒に2階に向かったのでした。

早速、牛黒が場を仕切ります。

「この部屋は塗装屋に任せるとして、おれはあっちの部屋をバーっと塗っていく。
 兎耳長さんと猫井川は向こうの部屋からやっていこう。
 午前中に終わらせてしまおうぜ!」

結構無茶なことを言っていますが、これは牛黒の口癖のようなものです。
何事も午前中で終わった例はありませんが、牛黒の人柄のせいか、誰からも嫌がられていないのでした。

さて、午前中には終わりそうもない仕事に、牛黒、兎耳長、猫井川は塗料缶を片手に、向かっていきました。

「それにしても、最近蒸し暑いですね。」

作業前から額に汗を浮かべながら、猫井川が言いました。

「うん。年をとると、夏はしんどいよー」

兎耳長もうなずきます。 牛黒の方を見ると、すでに作業服の背中がびっしょりと濡れていました。
両腕の袖で、しきりに顔を吹いています。

「牛黒さん、タオルないんですか?」

そんな様子に猫井川が声をかけましたが、

「へーき、へーき。慣れればなんてことない。」

と、気にしない様子です。

まあ、本人がいいならと、猫井川も自分の仕事に取り掛かりました。

兎耳長と猫井川は、1階の塗装を行ったように、脚立足場の上に兎耳長が乗り、壁の上部を塗り、下部を猫井川が塗って行きます。
前の日、丸一日同じ作業をしていたので、慣れてきたのか、スムーズに進んでいきました。

作業場は、換気のために風が通るようにしていますが、無風状態なのか、風が全然吹き込んできませんでした。

「これじゃ、息がつまりますね。」

猫井川がつぶやくと、兎耳長も

「ほんとうだね。この暑さは結構しんどいね。」

と、返しました。 さすがの兎耳長も辟易としている様子でした。

一方、牛黒を見てみると、もう作業着は汗びっしょりで、変色していました。
壁を塗っては、汗をふきふきし、床も汗で水がまりができていました。

「牛黒さん、大丈夫ですか?
 休憩しませんか?」

さすがにその様子を見かねて、猫井川が声をかけました。

しかし、牛黒は何事も自発的にやりたいタイプなのです。
人から指示されるのはあまり好きではありません。

そのため、猫井川の申し出に、

「へーき、へーき。まだまだ余裕、余裕。  午前中に終わらせないとな!」

と、息も絶え絶えに答えるのでした。

「牛黒さんがああ言ってますけど、どうします?」

猫井川は、兎耳長に聞きました。

「この暑さじゃ、このまま続けてもはかどらないよね。
 こっちは少し休憩しようか。」

2人は作業を中断し、涼みに行こうと1階に降りて行きました。

牛黒も手を止めたかったものの、先ほど続けるといった手前、作業を中断するわけにはいきませんでした。

「まいったな。素直に休憩しておけばよかった。」

そう言いつつ、壁を塗り塗りしていきましたが、汗はとまりません。
しばらくすると限界がきたらしく、その場に塗料缶を置き、階下に降りていきました。

建物の外にでると、風もあり、室内よりも涼しく感じます。

「ふー、涼しい。こっちは天国だぜ。」

そう独り言をこぼすと、猫井川が休憩しているところまで歩いて行きました。

「さすがに暑いから、おれも休むよ。」

そう言って、2人に近づいた時でした。

「牛黒さん、その顔どうしたんですか?」

猫井川が聞きます。

「ん、顔?
 顔がどうした?」

そう言って、顔に手をやると、汗とは違う感触がありました。
顔を拭った手を見てみると、そこには塗料がべったり付いていたのでした。

「顔中、塗料が塗りたくられていますけど。」

「マジか!!」

よく見てみると、顔を拭っていた作業服の袖も、色がべったりです。

どうやら、顔を拭う際に、ローラーが顔についてしまったようです。

「うわー、なんじゃこりゃ。
 顔を洗ってくる。」

そう言うと、牛黒は洗面所がある場所まで、走って行きました。

「顔まで塗っちゃったんですね。」

猫井川はそうつぶやくのでした。

その後、牛黒は顔の塗料を少し残しながらも、帰ってきました。
そして、なぜか汗びっしょりの作業服も着替えています。

「この時期は、汗を大量にかくからな。  予備を持ってきているんだよ。」

こんなことは、しっかり行き届いている牛黒なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回も建物内の塗装の話です。

夏場は屋外作業は熱地獄ですが、屋内も同じくらいの暑さです。
夏の部活で、炎天下の野球やサッカーもきついですが、体育館内のバトミントンやバスケットもきついのに似ています。

暑い中での作業は、熱中症に気をつける必要があります。
熱中症対策のためには、水分や塩分補給とともに、こまめに休憩をとることが大事です。

牛黒は、豪快で、我が道を進む傾向があるため、素直に休憩に行くとか言えなかったようです。
自発的なら、行けたんでしょうけど。

今回は、そんな牛黒が起こしたヒヤリ・ハットです。
壁に塗装するついでに、自分の顔まで塗ってしまったというものです。

皮膚に塗料がつくのは、よくあることです。 内装で使われるものですから、ひどく人体に影響があるものでないものの、化学薬品ですから体に良くはありません。
多少、指先に付くのはともかく、豪快に顔に塗ってしまっては、眼や口に入るかもしれないので、気をつける必要がありますね。

牛黒もわざと顔に塗ったわけではありません。 作業服の袖で汗を拭っている時に、付いてしまったのでしょう。
幸い、飲んだりすることもなかったので、大事にならなかったのですが、これだけ大量に汗をかくなら、タオルくらい準備しておけとは思います。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 汗を拭ったら、ついでに顔も塗装してしまった。
対策 1.作業場は適切な温度管理を行なう。
2.顔をタオルで覆うなどして、汗対策を行なう。

夏はじっとしていたも汗をかきます。 作業をしていたら、その汗は止まることはありません。
タオルで拭うなどして、適切に処理していく必要があります。 袖を使うのは、あまり適切とはいえませんね。

また屋内で、風通しが悪い場所では、扇風機などを使い適切に温度管理したほうがいいです。
特に、塗料が満ちている場所なので、換気は必須です。

牛黒に限らず、汗だくで仕事するのは辛く、効率が悪くなるのですから、少しでも快適に仕事ができる工夫が必要ですね。

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