○現場の安全

「元請けに迷惑をかけられない」と労災事故報告しない。この事件背景の闇は深いのかも。

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こんな記事があり、気持ちはわからないでもないけどと思った事件です。

2年前に起こった事故ですので、最近のものではありません。
下請けで工事をしていた会社で火災事故があり、作業者が4日以上の休業を伴う火傷を負いました。

休業4日以上の事故の場合、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければなりません。
なぜ休業4日以上というと、労災保険が関係してくるからです。
怪我で休み、病院に行くのに、保険が受けられないと被災者は困ります。

労災保険が受けられるように手続きすることも、事業者が行わなければならない義務なのです。

事業者の労働基準監督署への報告漏れは、厳しく取り締まられます。
この事業者では、怪我を追った作業者が労働基準監督署に相談に行って、発覚しました。
労災隠しは、案外うまくいかないものなのです。

報告しなかった理由についても、記事で触れられていますが、案外根と闇が深そうな問題かもしれません。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

「元請けに迷惑をかけられない」と労災事故を報告しなかった事業所を書類送検
(平成27年8月5日)

舞鶴労働基準監督署は5日、社員が労災事故で休業したにもかかわらず報告書を提出しなかったとして、労働安全衛生法(報告義務)違反容疑で、工業所と同社の元事業所長を、地検舞鶴支部に書類送検した。

同署によると、元事業所長は平成25年11月27日、京都府舞鶴市余部下の同事業所船舶電機艤装工事現場で、当時44歳の男性社員が溶接作業中にやけどを負い4日間休業したにもかかわらず、同労基署に労働者死傷病報告書を提出しなかったとしている。

今年5月初旬、休業した男性社員が同労基署に相談した。元事業所長らは「元請けに迷惑をかけたくなかった」などと、話しているという。

産經新聞

この事故は、溶接作業中に火傷を負ったという事故です。
4日以上の休業を伴うのですから、かなりの深手だったのではないでしょうか。

怪我で病院に行くと、労災かと聞かれます。
仕事中の事故であれば、当然労災扱いしなければなりません。
そのために、事業者は労災保険に加入しているのです。

しかし、中にはここで労災じゃないと隠すこともあるのです。 場合によっては、事業者がそのように指示もあるようです。

労災保険を使いたくない理由は、保険料が上がることや、労働基準監督署の監査が入ることを嫌がってのことが多いと思います。

そして今回のケースのように、下請けをしているのであれば、元請けに迷惑がかかると配慮して隠すこともあるようです。

工事現場で事故があれば、その事故の責任は、当事者だけでなく、元請けにも及びます。 監督不行届とされるのです。

下請けが労災を隠し、元請けに配慮するのは、事故を起こしたことが知れると、次から仕事がもらえないと思うからでしょう。

元請け>下請けの構造は、どの業界でもありますが、事故も大っぴらに出来ないのは辛いものがあります。
元請けは、いくつもの下請け会社から、技術力や値段で比較し、選定します。 選ばれる側は必死です。
ミスしたら次がない。このプレッシャーは労災隠しまで及んだのではないでしょうか。

次の仕事のために、事故を隠す。
このケースでは、たまたま発覚しましたが、実は案外あるのかもしれません。

下請けの労災隠しが発覚した時、おそらく捜査は元請けにも及んだと思われます。
元請けから指示があったのではとの疑いがありますからね。

元請けに配慮して隠ししたのに、結果として、素直に報告するより、もっと大きな迷惑をかけてしまうことになりました。
信用もかなりガタ落ちとなったのでした。

労災隠しがあったのに、工事期間中はゼロ災達成ですと誇っていたことが、実は嘘だったというのは、切ない話です。

元請けと下請けの間に、事故を報告してもよいという信頼があれば、状況は変わったのではと、評論家なら言うのもしれません。
まあ、現実的にはそう簡単ではありません。
何年付き合いがあっても、不祥事1つで、関係なんて解消することもしばしばですし。

元請けとの関係は複雑ですが、個々の事業者としては守らなければならない義務はあります。
これは明確です。 それは、労働者を守ること。

事故があった時は、きちんと報告することは、被災者が保険を受けられるようにするためのことです。 隠してしまっては、本来受けられる治療も受けられなくなります。

会社が負担してやるから、家で怪我をしたことにしろと指示することも違反です。

別の記事でも書きましたが、労災隠しはデメリットがかなり大きいものですよ。

それにしても下請け作業で、値段偏重で業者を選定すると、どうしても安かろう、悪かろうになります。

それなりに大きな会社でも、事故や手直しが多いところも見かけます。 入札の時に叩きすぎて、利益を確保したら、実行予算がかなり少ないという事情があるのでしょう。

安すぎる費用だと、どうしても品質や安全を犠牲にしているのですけどね。 事故が多い現場は、かなり予算をケチっていることが原因かもしれませんよ。

こちらの記事で、届出について書いています。

事故があったら報告する

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