厚生労働省労働局長登録教習機関
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建築工事で、建物はコンクリート打ちっぱなしではありません。
打ちっぱなしの状態では、雨水が染み込みます。 そのため、建物の外側には防水加工を行います。
特に、屋根は雨をダイレクトに受けるので、防水シートなどで入念に水の侵入を防ぎます。
屋根の上での作業ですから、墜落の危険と隣合わせの作業と言えます。
建物は2階建ての建物であっても、その高さは3メートル以上になります。
この高さから落ちると、打ち所が悪いと死んでしまいます。
さらに高さが5メートル、10メートルともなると、死ぬ確率が高くなります。
埼玉県加須市の幼稚園での工事で、防水作業中の作業者が、屋根から墜落し、意識不明となる事故がありました。
今回は、この事故の事例の原因を推測し、対策を検討してみます。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
屋上から作業員男性が転落、意識不明 頭など強打(埼玉県加須市)
(平成27年8月5日)
5日午後1時15分ごろ、加須市立加須幼稚園で、建設作業員男性(62)が鉄筋コンクリート2階建て園舎の屋上で作業中に約8メートル下のコンクリートの地面に落下し、頭などを強く打った。ドクターヘリで川越市内の病院に搬送されたが、意識不明の重傷。
加須署によると、男性は園舎の屋上で断熱材の上に防水シートを設置していたところ、何らかの原因で転落したとみられる。一緒に作業をしていた男性が119番した。同署で事故原因を調べている。 |
この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「構造物」です。
この事故は、鉄筋コンクリート製の建物で、屋根に防水シートを貼り付ける作業の時に起きました。
屋根は地上から約8メートルの高さでした。 この高さからの墜落は、十分命を落としかねません。
この作業で、墜落対策があったかについては、記事からは伺い知ることができません。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
被災者は墜落に至ったのですから、おそらく屋根の端で作業していたことでしょう。
そこで足を滑らせたか、バランスを崩したのか、原因はわかりませんが、墜落してしまいました。
屋根の上での作業ですから、墜落の危険があったことは知っていたはずです。
知った上で、どのような対策が取られていたかが、重要なのですけども。
墜落対策としては、屋根をグルッと囲む仮設の手すりを設けることです。
足場と同じような墜落防止設備を作るのです。
もしこれができない場合は、安全帯を取り付けられる設備を設けます。 いわゆる親綱を張るのです。
これらいずれかの設備は必要だったのですが、設けられていなかったか、うまく機能しなかったのか。
または、手すりや親綱はあったけれども、作業者が安全帯を使用していなかった可能性もあります。
せっかくの設備があっても、作業者本人が安全帯などを正しく使わないと、設備も機能しません。
それでは、原因を推測してみます。
1 | 手すりや親綱などの墜落防止設備がなかったこと。 |
2 | 作業者が安全帯を使用していなかったこと。 |
3 | KYなどで作業の危険を予測していなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
屋根の上での作業に限らず、高所作業では墜落防止設備が必要です。 それは手すりや中さんなど足場と同等の物が必要です。
具体的には、屋根の端に一定間隔で支柱を立て、鋼管などを取り付けます。
手すりが困難な場合は、親綱を設けます。 親綱も支柱を立て、丈夫なロープを張ります。鋼管がロープになったといえますが、設置は鋼管より容易です。
親綱には安全帯を掛けます。 親綱には、1スパンに1人しか掛けられないので、注意です。
作業者は手すりであろうが、親綱であろうが、原則として安全帯を使用します。 安全帯を着けていても、正しく使用しなければ、墜落を防止できません。
作業前のKYでは、墜落防止の危険と対策について話し合う必要があります。 何度も繰り返した慣れた仕事かもしれません。
しかし、作業の度に墜落の危険はあるのですから、油断を許してはいけないのです。
対策をまとめてみます。
1 | 墜落防止設備を設ける。 |
2 | 作業者には安全帯を使用させる。 |
3 | KYなど墜落防止の教育を行う。 |
建物の工事は、とにかく墜落事故の危険を防ぐことが大事です。
墜落・転落事故は、建設業の事故で最も多く3割近くを占めます。 墜落対策を徹底的にすると、かなりの事故を防ぐことが出来るでしょう。
慣れた仕事では、ついつい油断します。
しかし油断が命取りになることは、事業者も現場監督も、作業者本人も忘れてはいけませんね。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第518条 高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合は、足場などの作業床を設けなければならない。 |
第519条 高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。 |
第520条 労働者は、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。 |
第521条 高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合で、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。