厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第49話「保楠田、鉄パイプにヨロヨロす」 |
犬尾沢たちは、小さな作業場で複数の会社と工事をすることになっていました。 犬尾沢たちは建物の基礎工事を行い、もう1社は配管工事を行うのでした。 犬尾沢たちが、基礎の掘削を終えて、次の仕事に取り掛かろうとした時でした。 配管工事をやっている会社の責任者が、犬尾沢に話しかけてきました。 「犬尾沢さん、お願いがあるんだけど。」 「はい、何ですか?」 犬尾沢も準備の手を止め、聞き返しました。 「実は、これから土止め支保工しなきゃいけないんだけど、材料が届かなくてさ。 どうやら、土止め支保工をやるのに、材料がないようです。 犬尾沢のHHCは、土止め用の矢板や腹起し、ハリなどを持っています。 「倉庫にはあるんですが、別の現場で使ってないかを確かめます。」 犬尾沢はそう言うと、事務所に電話しましました。 「あー、犬尾沢です。お疲れさまです。 ・・・そう、やってない。材料をしばらく借りてもいい? ・・・わかった。じゃあ、ちょっと使いますんで。」 電話を切ると、犬尾沢は言いました。 「今のところ大丈夫みたいですけど、すぐ要ります?」 すると、配管工事の監督は、 「できたら今日借りたいんだけど、大丈夫?」 と聞いてきました。 「材料はあるんで、大丈夫ですよ。 「ありがとうー。ほんと助かるよ。」 配管工事の監督はそう感謝の言葉を言うと、自分の作業場に戻って行きました。 犬尾沢は、誰に行かせようかと考え、 「おーい、猫井川今何かやってる?」 と呼びました。 猫井川は、それに答えました。 「型枠とかの準備ですけど、何ですか?」 犬尾沢は、準備にはまだ余裕がありそうだなと、確かめると、猫井川に土止め支保工の材料を取りに行かせることにしました。 「ちょっと悪いんだけど、あっちの会社が土止め支保工の材料を貸してくれといってるから、取りに行ってほしんだ。」 「材料ないんですか?うちが準備するんですか?」 猫井川が聞きます。 「いや、もともと自分のところで材料を揃えるはずだったんだけど、手違いで届かないみたいだからさ。 「はあ、わかりました。保楠田さんと行ってきます。」 なんだか、面倒だなと思いつつ、犬尾沢の命令なら仕方ありません。 のろのろと保楠田を誘いにいきました。 「保楠田さーん、ちょっと別の用事が入ったんで、一緒に行って欲しいんですけど。」 「なにー?」 「実はですね・・・」 猫井川が、保楠田に事情を話すと、2人してダンプに乗り込み、会社の倉庫に出かけました。 「猫ちゃん、矢板とかはダンプじゃ載せるの大変だから、ユニックに乗り換えようか。 「そうですね。車変えましょう。」 そんな話をしながら、2人で倉庫に向かったのでした。 倉庫に着くと、まず保楠田が車を降り、矢板置き場に向かいます。 猫井川は、ダンプを所定の位置に納めると、ユニック車を出してきました。 「猫ちゃん、オーライ、オーライ。 保楠田の誘導でユニック車を停めると、アウトリガーを伸ばし、クレーンを使う準備にとりかかりました。 「矢板とかはどれだけ持ってけばいいんだろうか? そこで、猫井川は犬尾沢に電話し、必要な材料と数量を聞きました。 「矢板はとりあえず、20枚くらいあればいいそうです。 「そうか、じゃ載せていこうか。」 保楠田はそう言うと、矢板を引っ張り出しました。 20枚引っ張りだすと、それらをまとめて玉掛けし、荷台に載せました。 この時点ですでに保楠田は汗だくになっていました。 「保楠田さん、ものすごい汗ですよ。 大丈夫ですか?」 「さすがに、この暑さだと、体にきついね。 「エアコンがないと寝れないですね。 「うーん、あと少しだからやってしまおう。 「じゃあ、ささっとやりましょうか。」 早く積込みを終わらせようと、2人して腹起しとハリになるパイプを積み込んでいきました。 両手に数本のパイプを抱え、直接荷台に載せました。 何往復かすると、保楠田はますます多くの汗を流していきました。 「はぁ、はぁ。」 息遣いも少し荒くなってきました。 そんな時でした。 両手にパイプを抱えた保楠田は、パイプの重さに体を持っていかれる心持ちがしたのでした。 ヨロヨロっと体を傾きました。 「保楠田さん、あぶない!」 後ろから猫井川の声が響きました。 「保楠田さん、体がふらついてますよ。 後は、オレがやりますんで、車に乗っててください。」 はぁはぁと、肩で息をしながら、保楠田はぼんやり猫井川を見ます。 「そうか、じゃあ頼んでもいいかな。 「気にしないで、休んでください。 保楠田は、手にしたパイプを荷台に載せると、そのまま助手席に乗り込みました。 エンジンを掛け、エアコンを全開にして、室内を涼しくしていきます。 「あー、天国だー」 そんなことを呟きながら、お茶を飲みました。 しばらくすると、猫井川も作業を終え、運転席に乗り込んできました。 「寒!めちゃくちゃ冷えてますね。 「さっきよりかなり楽になったよ。 「いえいえ、気にしないでください。 「ああ、そこまで必要ないとおもうんだけど。 「はい。ちょっと連絡しておきます。」 猫井川は、犬尾沢に連絡すると、一度現場に荷物を運んだ後、すぐに病院に連れて行くことになったのでした。 「まさか、オレも暑さでやられるとはね。」 病院に向かいながら、保楠田はつぶやいたのでした。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
今回は、保楠田が鉄パイプの重さにヨロヨロしたというより、体調不良になったという話ですね。 夏の暑い盛りですから、熱中症の疑いがありますね。
さすが犬尾沢。
中症の症状が出たら、病院に行くように指導しています。
多くの場合、休んでたら治ると言って、行かないことが多いんですけど。
熱中症の場合、後から症状が悪化することがあります。 症状が出た場合は、一度は診断を受けることをおすすめします。
熱中症で体調不良になるのは、普段の生活が大事です。
食欲不振や暴飲暴食、深酒、睡眠不足などは、症状を悪化させます。
暑さでどうしても、不摂生は体を弱らせるのです。
保楠田も寝不足がたたり、足がヨロヨロしてしまったようですね。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめましょう。
ヒヤリハット | 暑さにやられて、足がふらついた。 |
対策 | 1.普段からの体調管理に注意する。 2.体調に韋編を感じたら、すぐに休憩を取る。 |
猫井川がいち早く異変に気づいてくれたからよかったものの、もし1人だったら、より症状が悪化していたかもしれません。
熱中症は、みんながお互いに注意していくことが大事です。