○リスクアセスメント

リスクアセスメントには、メンバーのセットアップが大事

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先日受講した、中災防(中央労働災害防止協会)「現場担当者のためのリスクアセスメント講習」に引き続き、「安全衛生スタッフのためのリスクアセスメント講習」も受講してきました。

この講習は、実際にリスクアセスメントを行なうだけでなく、事業所として労働安全衛生マネジメントシステムを構築するに当たり、安全スタッフはどのような働きをするのかに主眼が置かれていました。

そのため、リスクアセスメントの演習も、現場担当者向けの講習に比べ、控えめでした。 一応、法定で講習や演習時間が決まっているので、文句も言えないのですけども。

今回も、内容については、実際に講習を受けてもらえればよいと思うので、深入りしません。
そのため、続けざまにリスクアセスメント講習を受けて、気づいたことをまとめてみます。

前回受講した「担当者向け」の講習では、1人でリスクを考えるのではなく、話し合うことが大事だと書きました。
同じ作業を見ていても、人によって、危険とするポイントが異なり、危険の見積も異なるのです。

1人でやっていては、個人の経験やカンの域から出ることができません。
演習を行って、なるほどなと思ったことでした。

今回も、演習を行っていて気づいたことがあります。
それが、「セットアップが大事」ということでした。

「セットアップ」とは何でしょうか?
リスクアセスメントをサポートする安全衛生スタッフにとっては、ものすごく大事なことなんです。

リスクアセスメントを行なうのは、現場をよく知る監督や作業者が中心になります。 この人たちに、いきなり「リスクアセスメントをやろう!」と言っても、できませんよね。 何をやるのか、なぜやるのかを、説明をしなければなりません。

実際にやってもらう手順は、次のとおりです。

1.どんなリスクがあるのか?(リスクの特定)
2.そのリスクは、どれほどの頻度で起こり、事故になった時にはどれほどの重大な結果になるのか?(リスクの見積)
3.リスクの見積結果を踏まえて、どのリスクから手をつけるのか、どのような対応をするのか?(優先順位と対策の検討)
4.リスク対策を実際に行う。(対策の実施)

1~3の手順を現場担当者に行ってもらうことになります。

やり方を説明して、実際にやってみると、こんなことに気づくかもしれません。

それは、人によって意見がバラバラ、見積もバラバラということです。
バラバラなのは全然構わないのですが、最終的に意見とまとめることを考えると、あまりにもかけ離れた意見同士だと、困りますよね。

ある程度、前提をはっきりさせた上で、考えてもらう必要があります。
この「前提をはっきりさせる」ことが、「セットアップ」なのです。

何をセットアップする必要がるのでしょうか?

具体的には、みんなが思い描く状況を統一することです。

例えば、「2.リスクの見積」の段階で、リスクは必ず「頻度」と「重大性」の観点から見積もります。
この頻度は、作業を行う頻度ではありません。
危険な状況になる頻度のことです。

さらに具体的に言いましょう。
電動グラインダーを使用する作業があります。
グラインダーの歯が割れ、飛び散り、目に入るリスクが想定されたとします。

この場合の頻度というのは、「グラインダーの歯が割れる」というものです。
グラインダーを使う頻度ではありません。

グラインダーを使う頻度で考えると、「毎日」となり、見積は高くなります。
しかし、歯が割れるとなると、年に1回、半年に1回程度ではないでしょうか。そうなると見積は低くなります。

この何を評価するのかという基準が明確でないと、人によって見積点数が大きく異なります。
だいたい優先順位として、4段階で分けます。
同じリスクをある人は1とし、ある人は4と見積もることがあります。

その後の話し合いで、調整しますが、セットアップで前提と基準を明確にしておくと、より精度の高い話し合いが期待できますね。

もう1点大事なことがあります。
それは、事業場に合わせて配点や優先順位を決めるということです。

リスクの見積方法には、マトリックス方式と得点方式があります。
得点方式の場合、頻度や重大性に点数をつけ、合計した数字で、優先順位を決めます。
優先順位は、先ほど書いたような4段階に限る必要はありませんが、得点の高いものから対応するというルールは変わりません。

仮に4段階評価とした場合、最高位にランク付けされ、即時対応が必要なリスクが50くらいに出てきたら、どうでしょうか?
すぐに50個ものリスク対策をやれと言われても、無理ですよね。 予算も時間もありませんよね。

こんな場合は、最高位のランクになる得点範囲を変えてやればいいのです。
例えば、最高位ランクは、12点~24点までの範囲になったものとしていたら、16点~24点までに狭めてやるのです。

こうすると、50個あった最高位ランクのリスクの数は減ると思います。
事業場の予算や時間などを考えて、できる範囲で、やっていくしかありません。
リスクの見積評価は絶対評価ではないので、ある程度は融通を効かせるのが現実的です。

この配点の調整も、安全衛生スタッフの役割になりそうですね。

実際にリスクアセスメントを行っていくのは大変です。
安全衛生スタッフは、ある意味裏方に回らなければなりません。
現場を知る人達だけが知っている隠されたリスクを見つけるには、安全衛生スタッフや管理者が出しゃばってはいけません。
あくまでもサポートです。

その上で、実際に効果のあるリスク対策を行っていきます。

リスクアセスメントの効果を実感するのは、現場作業者でなければなりません。
この人たちが「よかった、安心して作業ができる」と言ってくれるのが、一番の報酬になります。

リスクアセスメントをただの作業にするか、効果のあるものにするかは、前提づくりが重要です。
そのためには、安全衛生スタッフが行なう「セットアップ」が鍵になるのです。

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